MLB Column 2007: 8. Slot Money
【こちらのコラムは筆者がMLB選手エージェント事務所にてインターンをしていた2007年当時のブログからの抜粋です。当時の記憶を保存することを目的としているため、修正なしで掲載しています。現在とは異なることもありますので予めご了承下さい。】
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MLBのドラフトについては、1ヶ月ほど前のブログで簡単に解説しました。さて今日はそのつづき、ドラフト後の契約に関してです。
全50ラウンドでおよそ1500人の選手が毎年ドラフトにかかります。そのうちのトップ10 ラウンド、およそ300人の選手の契約金が公表されます。そんなわけで過去の契約金の統計から「Slot Money」というものが割り出されます。つまり「全体の○○位で指名された選手は$×××分の価値がある」という指標です。
基本的にはこの「Slot Money」から±5%程度はもらえると思うのですが、選手によってはエージェントを使わず球団の提示額に即答し、損をするケースもあるようです。しかしアメリカの大学ではBo JacksonとDion Sandersに代表されるように「秋はアメフト、春は野球」と二足のわらじを履いた選手もいます。また高卒選手の場合、大学進学を既に宣言している選手もいます。こういった2競技共に秀でた才能を持つ選手や大学進学を宣言している選手を指名する場合(事前交渉をしていれば別ですが)、契約してもらえないリスクも高いので、低い順位で様子を見ることもあります。こういう場合、交渉によってはドラフト上位の選手よりも高額の契約金になることがあります。とはいえ、これはごく例外です。
この他、逆の例外として、上位で指名されたものの、故障が見つかって契約金が大幅にダウンするケースなんかもあるようです。というわけで、一概に「Slot Money」通りの契約金がもらえるわけではないようです。しかしトップ300人の平均を出せば、ほぼ±5%以内には入ります。
そんな中、今年の契約金を見てみると、全体平均で10%以上ダウンしています。今年のドラフトで最初に契約した選手の契約金が前年度より約50%もダウンしたというのも、今年の市場に少なからず影響したとは思いますが、それでも球団間の裏合わせもあったように思います。選手会でもこのことは危惧しているようです。
もちろんトップではかなり高額の契約金になるので、ある程度抑制する必要はあるかと思いますが、ルーキーの選手は基本的にマイナー契約でスタートします。一番下のリーグでは、月収$800程度とか。それを考えると、少しでも多く契約金が欲しいのは当たり前です。
また高卒の選手の場合には、契約金のほかに怪我をして引退した場合の「大学への奨学金」なんかも含まれていたりします。この奨学金を利用して、「第二の人生」を築いていくことが出来るのです。
というわけで、ドラフト契約の裏側をちょっと解説してみました。
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