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【読書】三浦綾子『ひつじが丘』

北海道に住む叔母が、三浦綾子さんと同じ教会に通っていたらしく、ぼくが小中学生くらいのときにサイン入りの本を贈ってくれました。

『塩狩峠』と『ひつじが丘』

30年くらい前のことです。当時、前者だけ読んで、後者は放りっぱなしになっていたのですが、先日、実家の本棚で見つけて、後者もちゃんと読もうと思った次第。

以前はぼくもまだ子どもで、『塩狩峠』を読んで、(生意気にも)ちょっと押し付けがましい倫理観が鼻につくという印象しか持ちませんでしたが、今回、『ひつじが丘』を読んでみて、著者、三浦綾子さんの「人間」を見つめる目の確かさに敬服しました。

「自我の主張が芸術である限り、自我の強い生活をしなければならないと思っていたんだ」
── 『ひつじが丘』P240

一見、自分本位でいい加減に見えた登場人物の男からこういうセリフを引き出すというのは、いったい書き手のどんな能力なのだろう。たくさんの人の生き方を見てきたか、それともご自身の中での葛藤を丁寧に見据えてきたのか。いずれにしても人間というものと真摯に向き合わなければできない人物造形だと思います。

読んだ感想のひと言くらい、叔母へのお礼に添えればよかった。少し後悔しています。

(2012/7/24 記、2023/12/30 改稿)


三浦綾子『ひつじが丘』主婦の友社(1966/12/1)
ISBN-10 407909762X
ISBN-13 978-4079097628


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