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iPad誕生秘話。Appleの大失敗プロジェクトから20年越しに生まれた大発明
2010年1月27日、恒例になっていたAppleの新製品発表会が開催され、スティーブ・ジョブズはいつものとおり会場を沸かせていた。
2002年頃から密かに噂されていたApple製のタブレット端末『iPad』をついに発表したのだ。
2007年にiPhoneを発表し、スティーブ・ジョブズは世界中を熱狂の渦に巻き込んだ。この熱狂を受け、「大きいiPhoneを作ろうとジョブズが考えたのだろう」と思っても不思議ではない。iPadが2010年に発表されたことを考えると、素人目には妥当な開発期間だと思うかもしれない。
しかし、iPadの開発はもっと前から始まっていた。
iPadの開発は、2004年にデザイナーのジョナサン・アイブたちが新しいタブレットのプロトタイプを作成したときまでさかのぼる。当初はiPhoneの前に発表される予定だったが、携帯電話市場の可能性がはるかに大きいことと、画面が小さければコストが下がることからiPhoneの方が重要であるということでジョブズとアイブの意見は合致し、2010年の発表まで遅らせることになる。
そうして長い時間を経て、ついに完成したiPadを世界にお披露目したのがこの製品発表会だ。
ここまでの説明だけでも、このプレゼンに対するAppleおよびジョブズの想いを以前より深く菅んじることができるのではないだろうか。
この記事では、さらに奥深くまで入り込み、iPad誕生秘話を明らかにしていこう。
Newton:1987年にAppleが開発したiPadの先祖
iPadの萌芽は1987年まで遡る。Appleが開発した、Newton(ニュートン)と呼ばれる手書きデバイスだ。
「このまま一生、砂糖水を売り続けるのか、それとも世界を変えるチャンスをつかみたいか」とジョブズに言われ、ペプシコCEOからAppleにCEOとして招かれたジョン・スカリーを知っている方も多いだろう。
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Newtonはジョン・スカリーの指揮のもとで1987年に開発を始め、1993年にリリースし、1998年には生産が終了してしまった製品だ。
なお、スティーブ・ジョブズは1985年にジョン・スカリーらによって、自ら創業したApple社から追放されている。CEOとして復帰したのは1997年のことだ。
「パソコン市場だけに限定せず家電業界に参入できないか」と野心的な構想を持っていたスカリーは、当時のApple代表作であるMacintoshを手軽に持ち運べるマルチメディア家電にできれば、市場を支配できるのではないかと考え、Newtonの開発を進めたのだ。
Newtonとは、ひとことで言えば「通信機能を持った手書き入力可能な電子手帳」で、まさにiPhoneやiPadを先取りしたような商品だった。
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1987年の構想から6年という長い期間を経て、Newtonは1993年8月に699ドル~949ドルという価格帯で発売された。
しかし、スカリーの思うような結果にはならなかった。
Newtonは手書きがウリのデバイスだったにも関わらず、文字認識機能の精度がすこぶる悪く、ユーザーからの評判が悪かった。1994年1月までの出荷台数はわずか8万台で、価格を引き下げてもユーザーを獲得することはできなかった。医療分野など一部の業界で使われることもあったが、後発で人気を博したパームパイロットの登場により、シェアを大きく落とすことになった。
ジョブズは、Newtonの性能の低さ、開発陣、指が使えないスタイラスを嫌っていた。また、Newtonが、自分を裏切って追放したジョン・スカリーの肝煎りプロジェクトであったことも嫌う理由としては十分だ。1997年にジョブズがAppleのCEOとして復帰すると、彼の指示でいよいよNewotonは製造中止となってしまった。
しかし、Appleによる手書き端末改めタブレットの開発は、ここで終わりではなかった。
iPad開発否定派のスティーブ・ジョブズを説得したジョナサン・アイブ
時は2000年代。
当時はネットブックという低価格PCがもてはやされた時期だった。低価格なCPUを使い、ディスプレイやメモリーなどの性能を限定することで200〜300ドルで買えるPCを作って販売することが流行っていた。
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ネットブックは売上を急速に伸ばし、2009年にはノートパソコン市場の20%を占めるまでになったほどだ。それでも当時のスティーブ・ジョブズは「ネットブックはあらゆるものより劣っている。ただ安いだけのラップトップだ」と語っていた。
そんなジョブズに、ネットブックに代わる答えを提示したのがAppleの伝説的デザイナー、ジョナサン・アイブだ。
2008年のある日の幹部会議にて、アイブは自分がプロトタイプとして作っているタブレット「035」が、ネットブックに対するAppleの答えになるのではないかと提案した。「タブレットは、基本的にはキーボードのない安価なノートパソコンだ」という彼のアイデアをジョブズは気に入り、プロトタイプを正式に製品化することを許可される。
「035」はアイブが2002年から取り組み始めた、のちにiPadになるプロトタイプだ。極秘プロジェクトとして進められていたが、Appleがサムスンと裁判になった際にその写真などが資料として公開されることとなった。
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ちなみにジョブズは2003年、とあるカンファレンスで以下のように語っている。
タブレットはニッチ市場だ
3台目のコンピュータを買う余裕のある金持ちの集まりだ
デスクトップ、ポータブル、そして読書用。これ(3台目)を使って読書をする、それがあなたの市場だ
電子メールを大量に使うなら、キーボードがなければならない。我々はマイクロソフトのタブレットを見たが、失敗すると思っている。ユーザー層が狭すぎて、超富裕層に限られるからだ
当時の感覚としてはこれらは正しく思えるし、それがこだわりの強いジョブズの発言だとなるとなおさらひっくり返せそうにもない話だ。それを説得できたアイブはさすがというほかないだろう。
また、マイクロソフト幹部に苛立ったこともiPad開発に踏み切る要因としてあったようだ。ジョブズはスタイラスを嫌い、タッチスクリーンを指で使うことを好むが、マイクロソフト幹部が何度もスタイラスとタブレット端末の計画について語ってくるものだから「クソ食らえ。本当のタブレットはこれだというものを、あいつに見せてやろう」と語ったとされている。
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iPad誕生。2010年の「最も影響力のある発明の1つ」に
2008年の幹部会議をきっかけに、「035」は「iPad」として製品化へと本格的に踏み切ることになったが、発表までは3年近くかかっている。
iPadがすぐに発売されなかった大きな理由の1つは、スクリーンやバッテリーなどの部品として最適なものがなかったことだ。実際、Appleの元幹部は「技術がまだなかった」と語っている。
先ほどの写真を見てもらうとわかるように、プロトタイプ「035」はタブレットとしては大きく扱いにくかった。今で言うとMacbook Proくらいの厚さのタブレットだろう。
しかし、2007年にiPhoneが発売されてからモバイル技術は大きく進化していたため、新しいスクリーンとバッテリーが生産されるようになり、タブレット端末はもっと軽くスリムにできることになった。
無事に納得のいくiPadを開発できる目処がたつと、アイブはサイズと画面アスペクト比の異なる20種類のモデルを製造し、テーブルに並べてジョブズとともにそれらで遊んだ。そうやって、もっとも素晴らしいと感じる画面の大きさを決定した。
上記エピソードはジョナサン・アイブが話したものだが、サイズの決め方には他の説もある。当時のAppleの役員によると、画面の大きさは「紙切れ」から影響を受けたと言われている。教育現場や電子書籍として使われることを想定していたからだ。
こうしてついに生まれたのが、初代iPadだ。
iPhoneもモバイルデバイスだし、MacBookもモバイルデバイス。では、その間はどうだろう?
ブラウジングやメール、写真にゲーム……。そういった用途には「ネットブック」が使われることが多い。しかし、本当にそれがいいのだろうか?
ネットブックは遅いし、ディスプレイのクオリティは低いし、使うのはPC用ソフト。「安いPC」でしかなく、良いところといえば安いことくらい。なにか、もっとずっといいものがあるはずだ。
ジョブズはそう語り、自信満々にiPadを発表した。
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一部のアナリストは発表前から失敗すると予測していたし、WIRED誌は「巨大なiPhoneに過ぎない」と評した。
しかし、その結果は火を見るよりも明らかだ。
iPadは、ウェブブラウジング、Eメール、写真、ビデオ、音楽、ゲーム、電子書籍に優れた性能を発揮するよう設計されている。第3のデバイスを作るなら、ラップトップやスマートフォンよりも、こうした作業に優れていなければならない。そうでなければ、存在意義がない。
とジョブズは製品発表会で語ったが、消費者には実際そう受け入れられたということだろう。iPadは販売初日に30万台を販売し、2ヶ月も経たないうちに200万台以上を販売した。2013年に販売のピークを迎えたにもかかわらず、2020年9月までに5億台以上のiPadを販売している。
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iPadは「時価総額25兆円、売上高4兆円、営業利益1.2兆円」
2021年度のApple通期決算によるとiPadの年間売上は約319億ドルで、売上全体の8.7%を占めている。同年度のAppleの営業利益率は約30%であり準利益率は約25%だ。これをそのまま適用すると約95億ドルの営業利益、約80億ドルの純利益を稼ぎ出しているセグメントということになる。この数字は、アメリカの上場企業でもそうそう達成できないものだ。
製品セグメントごと(特にServicesセグメント)に原価率・販管費率は違うため、かなり雑な計算であることをご了承いただきたい。あくまでiPadという製品を事業として考えたときの、おおまかな感覚を提示する意図である。
なお、21年度の決算が発表された時点(2021年9月末)での同社PERはだいたい25倍だ。そのまま適用すると、iPadという事業の2021年度での時価総額はおよそ2,000億ドルということになるだろう。
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iPadは販売数が減ってきているが、減少のピークは過ぎたように見える。紙を無駄に消費することもないし、情報共有にも優れているし、もっと教育の現場などで活用していってほしい。
いちユーザーとしてiPadを使っていても、アップデートのたびにどんどん進化してると感じるし、もう絶対に手放せない最高のデバイスだ。
ここまで素晴らしいiPadですが、具体的にどうやって活用すればいいかを解説する記事はあまりありません。
デザイナー向けにAdobeの使い方を解説する記事や、高齢者向けに本当にゼロから解説する雑誌などはありますが、率直に言ってそれは私にとっては必要ない情報でした。
そこで、情報収集デバイスとして何度もiPadを使い込むうちに見つけた活用方法をnoteにまとめました。
これを機に、ぜひご覧いただけますと幸いです。
参考記事一覧
https://japan.cnet.com/article/35103137/
https://www.appbank.net/2022/07/08/technology/2260021.php
https://www.businessinsider.jp/post-206501
https://toyokeizai.net/articles/-/394337
https://www.gizmodo.jp/2018/11/hirock-suzuki-apple-special-event-talk.html
https://www.axismag.jp/posts/2019/06/135123.html
https://www.theverge.com/2020/1/27/21083369/apple-ipad-10-years-launch-steve-jobs-tablet-market
https://www.apple.com/newsroom/2010/01/27Apple-Launches-iPad/
https://en.wikipedia.org/wiki/Apple_Newton
https://style.nikkei.com/article/DGXZQOLM21AG90R21C21A0000000/
https://appleinsider.com/articles/18/04/03/a-brief-history-of-the-ipad-apples-once-and-future-tablet
https://gizmodo.com/the-inside-story-of-how-the-ipad-got-its-iconic-deisgn-1463463557
https://www.theguardian.com/technology/2012/jul/19/ipad-prototype-ive-2002
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