読書感想【戦後史の解放Ⅰ 歴史認識とは何か】
日露戦争から太平洋戦争までの歴史を振り返る本だが,歴史を振り返る前にある序章もなかなか面白かった.
中でも歴史理論は初めて触れるものだった.ランケやエヴァンズの考え,そして1980年代以降に広がった「歴史叙述それ自体が文学だ」とするポストモダニズムを知れたことは,良かった.
大正や昭和の歴史を学ぶと,やはり第一次世界大戦は日本に大きな影響を及ぼしたことを確信する.
大戦を通じて,ヨーロッパ諸国は人道的悲劇と国土の荒廃を経験したため,平和を強く願い,戦争を嫌悪した.
一方で日本は,軍事力行使により権益を拡大でき,大戦の特需で商売繁盛.ヨーロッパで起こった悲惨な戦争を理解できず,成金気分に浸っていた.第一次世界大戦による「天佑」は,日本にとって麻薬だったのだ.
世界が平和を志向し始めたものの,日本はそのことに気づくことができず,残念だ.
また残念な点といえば,外国人捕虜の扱いが日露戦争と太平洋戦争で変わってしまったことだ.
日露戦争におけるロシア人捕虜の死亡率は,0.5 [%]とかなり低かった.しかし,太平洋戦争におけるイギリス人捕虜の死亡率は,25 [%]と高い水準であった.
このようになった理由として,元々日本では捕虜になることが恥辱であるという認識が強かったこと,また,1932年に陸軍士官学校教育綱領が改訂され,国際法教育の科目を除外したこと が強く影響しているようだ.
かつて文明国を目指し,国際法教育を重視していた日本軍は,姿を消してしまった.
大国になった日本が転げ落ちるのを見るのは,とても苦しい.でもこれも日本の歴史なのだ.
以上.
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