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読書感想【集団的自衛権の思想史】

本書は日本国憲法第九条の解釈がどのように変わっていったのか,憲法制定・日米安保改定・沖縄返還といった出来事ごとに章を分けて説明している。

憲法に関する本であるため内容は簡単ではない。しかし憲法第九条がどのように解釈されてきたのかを知ることは有益だと思う。


第九条の最初の解釈は自衛のための戦力も放棄するというものだった(日本国憲法制定前に吉田茂が答弁した)。

その後 自衛のためならば(必要最小限度の)軍隊を持って良い -> 個別的自衛権なら問題ない(個別的自衛権なら最小限だから良い)と変わっていった。

世界情勢が変化していく中で日米同盟を維持するため 憲法をどう解釈し現実の問題に対処してきたのか。本書はそれらをうまくまとめていると感じた。


私は解釈改憲をしても良いと思っている。そのため自衛のための戦力も放棄するという解釈を変えていくのは理解できる。

しかし自衛のための必要最小限度の軍隊なら持っても良いと解釈を変更するなら憲法改正もしたほうが良かっただろう。明確に軍事組織が違憲ではないとできるからだ。現在までの苦しい解釈をし続ける必要もなかったはずだ。

第九十六条に憲法改正の発議が書かれているのだから 素直にその条文を活かすべきだった。そのほうが立憲主義的である。


矛盾を抱えているけれども 国民は現状を受け入れている。それが日本の立憲主義だと言われればそれまでだが 解釈改憲に頼り続け第九十六条が死文化しているのは悲しく思う。



以上。

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