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読書感想【社会的噓の終わりと新しい自由】

「なぜ,多くの人が懸命に働いても自分の展望が持てないのか?」,「なぜ,現代の日本で閉塞感を感じるのか?」,「その閉塞感を乗り越えて生きていくにはどうすれば良いのか?」という難問に対して,著者なりの回答をまとめているようなので,興味を持った.

「なぜ,現代の日本で閉塞感を感じるのか?」,それは日本が権威主義2.0と権威主義3.0のハイブリッド型であり,両方の抑圧性が程よい形に合体した「ぬるま湯」のような社会だからと著者は言う.

権威主義を一括りにせず,政治・社会体制によって三種類に分け,日本も権威主義と指摘するあたりが著者らしいと感じる.


また,権威主義1.0,権威主義2.0,権威主義3.0の流れを理解すると,陰謀論やフェイクニュースの正体を同時に知ることができるという視点は,なかなか興味深い.

物理的に打倒するべき敵が存在せず,永遠に救われることのない夢遊病に囚われ続けるのは,悲しいことだ.


さて,本書の最後に「自由な社会」で求められる能力として,「強靭性」,「選択性」,「決断力」が挙げられている.一番印象に残った項目は「決断力」で,読書の重要性を説いていることだ.

自らの経験だけでなく他者の価値観を得ることで,アイデンティティーの取捨選択を行うチカラを養成できるなら,読書という行為はまだまだ捨てたものではないと感じた.読書をする理由が一つ増えたことは間違いない.

閲覧履歴からオススメ本を紹介されることが,インターネット上の通販でよくある.しかし,そのようなシステムに依存していると,アイデンティティーの取捨選択を行うチカラはつかないだろう(似た考えの本を選びやすくなるため).

どういう本を選んで読むかの判断は難しいものの,自分なりに価値判断を磨いていければ良いなと思う.



以上.


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