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食は狩猟民族のスタイルに戻り、工業化された現代食が体を蝕む

食の歴史を呼んだ。食の歴史の変遷を徹底的に調べらげられていて、過去・現代・未来の食がこれでもかというくらいの調査量で論じられている素晴らしい本。ファクトの物量が多く、何度か読み直したい。

前半は、見つけたものをすぐ生で食べていたところから、火を使いって、太陽の動きに合わせて定住を始め、会話を交わして言葉を発達させ、文化を築き、社会と権力を構造化し、家族・企業・都市・国家・帝国を管理するようになり、工業化により携帯食やファストフードが隆盛し、時間と場所に関係なく持ち運びしやすい食物を食べるという一連の流れがつかめる。

火を使うことにより負担は減り、消化するためのエネルギーが減ったため脳の容積は増えた。つまりホモ・サピエンスが言語を習得できたのは火を利用して食べるようになったからだ。

という狩猟民族から定住に移行していく変化、

フランス語に「banquet:饗宴」という言葉が登場した。この言葉の語源はイタリア語の「banchetto」であり、そして「banchetto」の語源は「banco:小さな腰掛け」である(したがって、「banquet:饗宴」と「banque:銀行」の語源は同じ)

という食事の会話の中から社会を管理し始めた変化、

太陽王の考えでは、食卓は自身の価値観と栄華の表れだった。フランスを含む全ての文明のそれまでの君主とルイ14世との違いは、ルイ14世は会食を、国民との対話の場ではなく、自身に対する服従の見せ場にしたことである。

という対話から権力誇示に変えた変化、

大衆層は工場で働き始めたため、故郷を離れて暮らす人々が増えた。これは食のノマディズムと連帯感の喪失を引き起こした。つまり、食事は次第に会話の場ではなくなったのである。

という工業化によって食が会話の場で無くなる変化、

世界の中心地になりつつあったアメリカは大衆層が資金の大半を食費以外の消費財に費やすように仕向けるために、食の工業化を進めながら、食品コスト削減に励んだ。

というように食はファストフードなどで簡易化されて、会話は消えていく変化。

このように、形は変われど初期の狩猟民族のように、社会はノマドの群れに戻っていることが興味深い。孤独で自己愛に満ち必然的に他者と争いを起こすノマドは、ソーシャルネットワーク上に映し出される自己のイメージに酔いしれ、そこで自己の嗜好、不満、欲望を他者と分かち合う。そして、それは独りで食事をしながら行われる形になっているのだ。

後半は、工業化した現代の食事の課題から未来を考えるパート。

1960年代までは、食品業界は主にテンサイとサトウキビから得られるスクロース(ショ糖)を利用していた。ちなみに、アメリカではテンサイもサトウキビも栽培されていない。1970年代以降、食品業界はアメリカのトウモロコシから得られるフルクトースのシロップを使うようになったのだ。
HFCSは輸入されるスクロースよりもはるかに安価であり、液体であるため食品の加工に利用しやすい。ところが、スクロースから摂取されるグルコースとは違い、コーンシロップから摂取されるフルクトースの血中濃度はインスリンによって制御されない。そのため、血中のコレステロールなどの資質が増える。
さらには、コーンシロップのフルクトースは果物のフルクトースとは異なり、他の栄養分と一緒に体内に入ってくるわけではないため、フクルトースそのものの有害な影響が補われることはない。
それにも関わらず、1990年以降には調理済み料理、炭酸飲料、ケーキ、ヨーグルト、アイスクリーム、デザートなど、食品会社の数多くの食品にHFCSが利用されるようになった。

というように、食の工業化により、知らずと人の糖分の摂取量が上がっている。それにより、肥満が増え(2~18歳までのアメリカ人の6人に1人は太り気味ないし肥満)、糖尿病の患者数が増えている。大人の世界人口に占める糖尿病人口の割合は、1980年の4.5%から2017年のおよそ8.5%まで上がっている。そのほかにも肥満は金骨格系障害や心血管疾患の原因でもある。糖分は一部のガンや変性疾患の発症率も増加させる。

赤肉や加工肉は多環式芳香族化水素やニトロソ化合物などの発ガン作用をもつ化学物質を生成する。2015年、WHOの国際ガン研究機関は赤肉を「発がん性があると思われる」と述べた。複数の疫学調査からは、赤肉の摂取と大腸癌の発症との間には、正の相関があることが示された。大腸ガンほどではないが、膵臓や前立腺のガンについても正の相関が認められるという。
加工肉の「発がん性」は間違いないとみなされている。毎日50グラムの加工肉を摂取すると直腸ガンに罹るリスクはおよそ18%上昇する。超加工品の摂取とガンの有病率との間には6%から18%の相関が認められたという。

というように、赤肉や加工肉はガンのリスクを上げる。こういったリスクをあることを考えながら食事を取らなければならないが、これは調べないと教えてもらえないものだ。

未来のノマドは、主に糖分を摂取しながら暮らすことで、孤独を満たそうとする。というのは、我々は孤独感からアルコールや薬物に手を出しやすくなるのと同様に、脂肪分や糖分の高い食品をもっと食べたくなるからだ。

現代の食事のあり方は、工業化した現代の食事の消費を加速させる可能性がある。

というのも、社会的に排除されているという感覚が生じると、苦痛を感じる脳の部位が活発化する。すると、これを緩和させたいという欲求が生じる。すなわち、糖分が欲しくなるのだ。糖分を摂取すると、脳は気分に働きかけて幸福感をもたらす神経伝達物質であるドーパミンを分泌する。

これが理由だ。

食の歴史を学ぶことで、過去現在未来の食のあり方がわかることと、人体の成り立ちと仕組みを知ること、現代の食品のメリットデメリットを正しく理解することって大事だなぁと思った。







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