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"Switch"の読書感想文。~人を動かすちょっとした工夫~

 Switchを読んだ。理性と感情を、象使いと象にたとえながら、人を変えるために必要なことを科学的に論証していく本。人を変えるには、理性と感情に訴えかけながら、環境を変えていくことによって変化を生むことが数字と一緒にわかる。

もともと、やりたいことがあるけどまだやらないという人は1)ホントは別にやりたいと思ってない or 2)弱さからの逃亡という考え方を持っていた。前者ならめんどくさいからさっさとやりたいことがあるっていうのを辞めなさいとなるし、後者ならさっさとやりなよと。ただ、そういう0か100かというのも暴論かなと思うようになった。

1) 象使いに方向を教える
a. ブライト・スポットを見つける / b.大事な一歩の台本を書く/ c目的地を指し示す
2) 象をやる気を与える
 a. 感情を芽生えさせる / b.変化を細かくする / c.人を育てる
3) 道筋を定める
a.環境を変える / b.習慣を生み出す / c.仲間を集める

基本的には上記の3ステップを進めるために、それぞれのa,b,cの工夫をしていくにはどうすればいいかを実証実験データをもとに論証されるのが全容だ。

様々な研究によって自己管理が心身を消耗することが証明されている。

というように、人が変われないのは、あらゆる状況でセルフコントロールを消耗するからという。

ウェディング・レジストリの作成や新しいコンピュータの購入など、複雑な選択や検討をさせられた人々は、させられてない人々よりも集中力や問題解決能力が落ちることがわかっている。
病気の動物を描いた悲しい映画を観るときに、感情を抑えるよう支持された被験者は、自由に涙を流した被験者と比べて、その後の身体持久力が低下することがわかった。

というように、変化を起こそうとしているときは、人々は自動化された行動に手を加えなくてはならず、自動化された行動を変えるには、象使い(理性)による細心の管理が必要としている。

「問題がなくなっていると思う最初の小さなサインはなんですか?」
「最後のほんのわずかの間でも奇跡が見えたのはいつですか?」

上記の質問が象徴するように、1) 象使いに方向を教える, a. ブライト・スポットを見つけるでは、まずは良いところにフォーカスさせる。心理学者が感情を表す全ての英単語を分析したときに、全558単語のうち、ネガティブな単語は62%でポジティブな単語は38%だったところから見ても、人は、善よりも悪に興味がいく生き物なため、まずはその視点を変えさせる。

そして、視点を変えた後は、人の行動を促すようなわかりやすいスローガンを作った例(ホールミルクの例など)や、変化を引き起こすための身近な目的地の設定方法などを論じる。

象使いへのアプローチの次は、2の象(感情)へのアプローチ。

近所の洗車場がスタンプカードのキャンペーンを始めた客が洗車に来るたびにカードにスタンプを押し、カードに8つのスタンプがたまると洗車が一回無料になる。しかし、同じ洗車場で、別の客のグループには少し異なるスタンプカードを渡した洗車が一回無料になるためには、8個ではなく10個のスタンプを集める必要があった。ただしそのカードには"スタートダッシュ"が与えられていた。カードを受け取るときに、すでに2個のスタンプが押されているのだ。
数ヶ月後、8個用のスタンプカードを受け取った客は、19%しか無料の洗車までこぎつけなかった。一方、スタートダッシュを切った客では34%がスタンプを貯め切った。

とあるように、人は短い旅の出走ゲートにいるよ売りも、長い旅が途中まで終わっている方がやる気を出す。他にも、

結果モデル:
決断を下すとき、人は選択肢の費用と便益を評価して、満足度が最大になる選択を行う。
アイデンティティモデル:
決断を下すとき、1) 自分は何者か?2)自分はどのような状況に置かれているか?3)自分と同じ状況にいる人々ならどう行動するか?を考える。

という二つの決定方法があるが、人を動かすにはアイデンティティのほうがいいよという。人にお願いをするとき、お金の話をしてしまうと対市場価値で判断しようとするが、無料でお願いすると、対アイデンティティで判断しようとするという研究が有名だが、これも一種の判断モデルの違いなんだと思った。

そして、最後は3の道筋を定めるためのアクション。

人間の問題に見えても、実は環境の問題であることが多い。

というように、相手の行動を変えるには、その人の環境を変えるのが一番手っ取り早い。例えば、

変化のケースの36%は引っ越しと結びついていた一方、変化に失敗したケースで引っ越しが含まれていたのは13%に過ぎなかった。

といういうように、研究でも環境を変えることに優位な数字が出ているようだ。他にも学生に課題を出させるという状況で、

(○日に提出してねという時)、実際に書いて提出したのは33%だった。一方、別のグループの学生はアクショントリガーの設定を課せられた。つまり、あらかじめレポートを書く正確な時間と場所を宣言させられたのだ。(例えば、「クリスマスの朝、全員が起きる前に父親の書斎でレポートを書く、など)。すると、なんと75%の学生がレポートを書いた。

という実験結果がある。何かをする時間と場所をイメージすると実行確率が上がるのだ。

これらは、自分自身もそうだし、マネジメントに携わるものならマネジメントもそうだし、組織そのものもそうだと思った。



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