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アクションゲーム制作の4つのポイント:『ラフレシアン』デザイナーノート①

この記事はBoard Game Design Advent Calendar 2023の12月6日の記事として書きました。

ボードゲーム制作チームSzpiLAB(シュピラボ)の藤縄です。
ゲームデザインからコンポーネント設計、アートディレクションなど広く担当しています。過去には「プラネピタ」というゲームを作りました。

この記事では、私達の新作アクションゲーム「ラフレシアン」のゲームデザインについてお話します。
ただ、連日ゲームデザインに役立つ記事が続いていることもあり(N2さんの記事戸塚中央さんの記事など)、
細かい部分はなるべく省いて、アクションゲームをデザインする上で自分が大事と思う4つのポイントに絞って話をしてみます。

ラフレシアンってどんなゲーム?

まずゲームを知らない人に向けて(といっても発売前なので全員そうだと思いますが)簡単に紹介をします。
ラフレシアンは巨大な花に向かってカードを輪投げのように投げて揃えるアクションゲームです。
基本は3目並べ的に3枚揃えることが目的ですが、1人ずつではなく「せーの!」で全員同時に投げるので、盤面がどんどん変化することが特徴です。
速い展開の中で、どこ/誰を狙うかという判断を常にしていく必要があり、シンプルながら常にバチバチの攻防を楽しめるゲームになっています。
ゲーム詳細についてはこちら

ではここから本題です。


POINT①:気持ちいいアクションを理解する


アクションゲームを作るときは、まず軸となる何度もやりたくなるような気持ちいいアクションがないといけませんよね。例えばおはじき系ゲームだったら、「デコピンで打つこと」がそれに当たります。

まずは軸となる気持ちいいアクションを見つけることが出発点なのですが、さらになぜそれが気持ちいいと感じるのかについて理解を深められると、その先ゲームルールを組み立てるのに役立つと思います。

ラフレシアンにおける軸となるアクションは「カードをテンポよく箱に投げ入れる」です。ここで単に「カードを箱に投げ入れる」だけではなく「テンポよく」があるのには理由があります。
玉入れとかバスケットボールのシュートを想像してみてください。

なかなか入らないものですよね。
「投げ入れる」というアクションはなんだかんだ難しくて成功率が低いので、単発だと気持ちよくなれる可能性があまり高くありません。

「カードをテンポよく箱に投げ入れる」についても同じで、一回や二回だと難しいのですが、それを深く考えずにテンポよく繰り返しやると
・とにかくたくさん投げるのが楽しい
・繰り返し投げていく中でだんだん精度が上がってくのが嬉しい
という気持ちよさがあります。

どんどん投げるのが気持ちいい

余談ですが、これはバスケや玉入れから発想したのではなく、とあるボドゲの円形カードを何気なくその辺にあった箱を狙って投げていたら夢中になってしまった、というのが発端です。

POINT②:アクションの気持ちよさを守る


軸となる気持ちいいアクションを見つけたところで、この気持ちよさを誰もが体験できるようなルールを考えたいですね。
でも、いつの間にかアクションが気持ちよく感じられないルールを作っていたりしませんか?
たまに振り返って最初に見つけたアクションの気持ちよさをキープできているかを確認してみましょう。

ラフレシアンは箱を3x3で並べてカードを投げるシンプルな3目並べゲームからスタートしています。

3枚でビンゴできたら1点

最初はターン制で一枚ずつ投げるようにしていました。
これはこれで面白いですが、いまいち最初に感じていたカードを投げる気持ちよさが感じられません。
あるときに手番の間に待ち時間があり、もともとやりたかった連続でどんどん投げていくフィーリングがないことが原因だと気づきました。

そこでこのゲームでは全員が同時に一枚カードを投げる同時ターン制を採用しました。同時ターン制によって、待ち時間も少なくどんどん投げられますし、完全リアルタイムではないので、次に相手がどこを狙うか?その上で自分はどこを狙うべきか?などの同時ならでは駆け引きも生まれます。

全員同時でテンポ◎

アクションゲームで同時にアクションするゲームはそこまで一般的ではないと思うのですが、このあたりの選択に迷いがなかったのはやはり最初に「カードをテンポよく箱に投げ入れる」という実現したいアクションが明確だったのが大きいかなと思います。
その後もいろいろルール決めで迷ったときは、基本的に「テンポよく」という部分に立ち返って決めていました。

POINT③:物理のままならなさを活かす


物理の絡むアクションゲームあるあるとして、判定が難しいエッジケースをどう扱うかという問題があります。
このゲームでは、以下のようにカードの乗り方が中途半端な場合にどう判定するか?という問題がありました。

手前の赤のカードはOK?NG?

このとき最初に浮かんだのこのあたりの選択肢

①コンポーネント設計でこの状況が起きないようにする
②判定を決めて除外する
③どっちかに転ぶまでそのまま残す

①は一見キレイに思えます。
ただ頑張ってもおそらく98%くらいは大丈夫になるかもしれませんが、結局100%大丈夫なようにするのは物理ゲームとして難しいでしょう。
またこのような判定しにくい中間状態があるのはアクションゲームならではの良さと考えているので、できたらルールとして活かしたいです。

②もシンプルです。
しかしこのゲームだと判定が3次元なのでなかなか目視で判定するのが難しいのと、せっかく面白い状況になるかもしれないのに全て除外してしまうのはちょっと勿体ないです。

③は、いっそそのまま残しておいてしまうという選択肢です。
その後の戦略が増えますし、見た目も賑やかになるので魅力的です。
しかしこのゲームにおいては、中途半端なカードが溜まるとカードが3枚揃った判定がしにくいというクリティカルな問題があり、結局諦めました。

悩んだ末にこのゲームで出した結論は、特定のプレイヤーのアクションに委ねる、というものです。
このゲームでは、プレイヤーの中に1人「リーダー」という役割を与え、その人が中途半端なカードをすべて「リーダー棒」という魔法の棒で自由に動かせる、というルールにしました。

リーダー棒で弾く

もちろんそうするとリーダーがあまりにも強いので理不尽なゲームバランスになってしまいますが、このゲームでは「リーダー権を奪う」アクションを用意し、この権利をプレイヤー同士で奪い合うようにしました。
このルールによって、中途半端で判定に困る状況が、逆に特定プレイヤーが積極的にアクションできる美味しい状況になりました。

実際のルール

一見するとそれでいいの?とか、ともするとルール作りの怠慢と思われてしまうかもしれませんが、私達としてはこのリーダー棒争いをカード投げ以外の面白さの軸と捉えているので、ぜひ遊んでみてほしいです。

POINT④:アクションに依らない選択も作る


最後に、個人的な好みとして、アクションスキルに依らない選択も作るという話をします。
ボードゲームにおいて「意味のある選択をする」ことがプレイヤーが感じる面白さに寄与するということを一旦前提とした上で、アクションゲームにおいては大きく
・結果がアクションのスキルに依存する選択
・結果がアクションのスキルに依存しない選択
の2種類を意識しています。

前者は例えば次はどこに投げようとか、どのくらいの高さで投げよう、とかです。
これらの選択はアクションゲームならではのものなので絶対あったほうがいいですが、その選択の結果がどの程度意図通りになるかはプレイヤーのアクションスキルに依存してしまうので、その選択によって感じられる面白さもスキルで変わってしまうと考えられます。

例えば100%の確率で狙った位置に投げられる上手いプレイヤーと、とても50%の確率で外してしまう下手なプレイヤーがいたとして、上手いプレイヤーはいつも自分が狙った通りの場所に投げられるので自分の狙いに意味を感じられますが、下手なプレイヤーは半分は外してしまうので、上手いプレイヤーに比べて自分の選択の価値も低く感じてしまうでしょう。

アクションゲームである以上、ある程度スキルによって楽しめる度合いが変わるのは当然であり、それ自体は問題ないですが、ボードゲームとして幅広い人が楽しめるようにするには、後者のアクションスキルに依存しない選択も用意してあげたほうが良いと考えています。

ラフレシアンにおいては、基本的にはカードをうまく投げられた人が有利になりますが、別軸として手札をたくさん持っているとそれだけ多く投げられるので有利になる、いわゆる手札マネジメントの要素があります。
自分の手札を回収する行動は、投げスキルとは関係なく手札を捨てることで行えるので、もし投げるのが下手であっても、ある程度効率よく手札を回収していくことでスキルを補えるようになっています。

実際のルール

おわりに


ラフレシアンのゲームデザインを題材に、アクションゲームを作る上で自分が大事にしているなと改めて感じたポイントを4つピックアップして説明しました。おさらいすると

  • 気持ちいいアクションを理解する

  • アクションの気持ちよさを守る

  • 物理のままならなさを活かす

  • アクションに依らない選択も作る

です。

あくまで数作品作って得た肌感覚の備忘録的なものにすぎませんが、一部でも参考になれば幸いです。

ラフレシアンは今週末のゲームマーケット秋2023で販売します。
会場に来られる方は感想だけでも大歓迎なのでぜひシュピラボブースにお立ち寄りください。
シュピラボのゲムマ出展情報はこちら

ビジュアルも大満足の出来です


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