中重量級ボードゲームシステム制作に立ちはだかる18の壁
この記事はBoard Game Design Advent Calendar 2023の12月5日の記事として書かれました。
ヘッダー画像はみんなのフォトギャラリーより。
戸塚中央と申します。
初めての方もいらっしゃると思うので、軽く自己紹介いたします。
私は主にボードゲーム製作におけるシステムデザインを担当しています。
担当作としてアクアガーデン(uchibacoya)、Ostia(uchibacoya)、パフューマリー(タクティカルゲームズ)、アトラスロスト(タクティカルゲームズ)、ビルドウォー(Rulemaker)等があります。
今回の記事ではシステム制作上突き当たる様々な問題を挙げているのですが、それら諸問題の解決方法として昨日のN2さんの記事がとても役に立つと思います。
素晴らしい記事なので皆さま是非お読みください。
というかコレ内容的に公開日逆の方が良かったのでは……と思うものの、示し合わせて書いたわけではないので仕方ないですね。
それでは始めましょう。
はじめに
中重量級ボードゲーム制作にはスタートがあります。
それはコアとなるメカニクスだったり、コンセプトだったり、テーマだったり、体験であったり。とにかく何でも良いのですが必ずスタートがあります。
そこから先、我々は皆見えないゴールに向かうわけです。
しかしながらその道のりは果てしなく遠く険しい。
スタートして暫く進むとおそらくまず「ゲームっぽい何か」が出来上がります。ここまで来るのも本当に大変だと思います。来れたあなたは素晴らしい!
次にもっと長い道のりを経て、「ちゃんとゲームとして遊べるもの」が出来上がります。もうゲームが作れました。めちゃくちゃ偉い!!最高!!
そしてさらに長い長い長い道のりを経て、ようやく「面白いゲーム」まで辿り着きます。辿り着けないことのが多いかもしれません。到達出来るのは本当に凄いことです。ここまで来れるのならむしろ色々と教えてください。お願いします。
この長い道のりを進む上で、障害として立ちはだかるのはスタートとなったメカニクスやコンセプトでは無いと思っています。
元のアイデアが悪かったんだね。コアとなるメカニクスが悪かったんだね。じゃあボツにして次を作ろうよ。
これでは勿体ない。いつまで経ってもゴールに辿り着けません。
この時障害となるのは、スタートとは関係ない、多くのゲーム制作に存在する(いわゆるあるある)問題です。これらが大きな壁として立ちはだかると考えています。
本noteではそのあるある問題を思いつく限り列挙し、私なりの解決方法の一例を載せていきます。
ですが注意してください!
結局のところ私個人の考えや経験に基づいた偏った内容になります。これが唯一の正解というわけでは一切なく、単なる感想レベルとして読んでいただけたら幸いです。
1.選択の無いゲーム
単純なすごろくや坊主めくりは選択の無いゲームです。
あえてこう言ったゲームを作るのであればもちろん問題はありません。サイコロを振り、駒を進めるだけのすごろくにも面白さはあります。
ですがユーロゲームを作ろうとした時、プレイヤーへの選択肢を用意したつもりが「意味のない選択」を与えてしまうことが良くあります。
意味のない選択とは
・どれを選んでも同じ
・上位互換を常に選べる
等のことです。
どれを選んでも同じというのは、
・タイルは複数あるけどどれも単に一個5点
・中身の分からない複数の山札から、カードを引く山を選ばせる
・トラックに2つの分かれ道があるけれどボーナスもなくゴールまでの歩数も一緒
みたいな形です。選択が何ら結果に影響しません。
上位互換を常に選べるというのは、その名の通り「5点貰えるアクションと10点貰えるアクションがあり、常にどちらも選べる」といった感じですね。これでは前者に存在する意味がありません。
ここまで分かりやすく意味のない選択を用意してしまうことは無いかもしれませんが「複雑なことをさせてるが結局選択はさせていない」という状態は往々にして発生します。
例えば「カードでセットコレクションをするけれど、そのカードは山札からランダムで1枚ずつ引くよ」みたいなゲーム。
コレクションしたくてもランダム引きなので単なる運です。
こうなるとセットコレクションが意味を成していません。
上記解決方法は様々です。
一つの方法としては「価値の変動 & 早取り」があります。
まずは価値を変動させましょう。
ですが価値を大きく変えただけだと、価値の低い方に存在意味が無くなってしまいます。高い方を選ぶのが正解ですからね。
そのため、価値が異なるパターンを複数作り、これらを早取り(競り)させます。
「価値の高い方を常に選べるとは限らない」という状況さえ作れれば、低い方にも意味が生まれます。
良く見る例はワーカープレイスメントです。
ここに麦、木材、石材、牛、羊の5種の資源があります。
そしてそれら全てに上位アクションと下位アクションを設けます。
A:麦6個 B:麦3個
C:木6個 D:木3個
E:石6個 F:石3個 etc…
アクションは早取りです。
こうなってくれれば、プレイヤーは「他の人に打たれる前にあれを打ちたい」と悩んでくれるわけですね。
ユーロゲームでは適切にプレイヤーに選択肢を与える必要があります。
ワーカープレイスメントにしよう、は単なる一例ではありますが「ゲーム上の選択に意味があるか」は制作を通して常に確認しなくてはならない事項かと思います。
そしてこれが本noteで言いたいことの9割です。
今後繰り返しこの話が出てきます。なのであとは気になる項だけお読みいただくだけでも大丈夫です。
2.先のランダム、後のランダム
ランダムには後先があります。
先のランダムはグランドオーストリアホテルやガンジスの藩王、マルコポーロ、そして多くのダイスプレイスメントゲームなど。
後のランダムはオーディンの祝祭の狩猟アクションや、イスタンブールの茶屋アクション、テーベの東、ミニチュアゲーム等。
ざっくり言えば、ダイスを振った後にアクションをするのが先のランダム。アクションをした後にダイスを振るのが後のランダムです。
この時、後のランダムは取り扱いをかなり注意した方が良いでしょう。
ボードゲームの楽しさの一つに、計画、実行、反映のサイクルがありますが、後のランダムでは結果が予測しにくいため計画が立ちません。
そのため後のランダムを多用すればするほど運ゲー感が増してしまいます。
もちろん後のランダムにもメリットもあります。
どの目が出ても何とかなるように作られているのが先のランダム(いわゆるダイスプレイスメント等)ですが、「あの目が出ろ!!」と強く感情の盛り上がりを作ってくれるのが後のランダムです。盛り上がりには一役買ってくれます。
とは言え、基本的にはランダム要素は薄くする方向に調整するのをオススメします。
中重量級ボードゲームにおいて「ここもっと後のランダムが欲しいんだよな〜」ということはほぼありません。
ランダムにした方が盛り上がるんじゃ? は大抵盛り上がりません。作者が思ってるよりも上手くいきません。萎えることのが多いのです。
後のランダム要素は使うのがめちゃくちゃ難しいため、慣れないうちはなるべく希釈する方に進みましょう。
使い方次第で毒にも薬にもなるのがランダム要素ですが、薄めて使うならどちらに転んでも大丈夫ですね。
3.ダイスは偏る
当たり前のことを言っていると思われるかもしれませんがダイスは偏ります。
偏るをもっと具体的に分かりやすく言うならば「ゲーム中に一度も6の目が出ない」ということです。
つまりはシステム制作の際に「10回ダイス振らせれば少なくとも6の目が一回は出るだろう」なんて思ってデザインしていると痛い目を見ます。痛い目。ダイスだけに。
振らせる個数と回数を増やせばもちろん偏りは希釈されます。
ですがされるのは『希釈』です。均等化では無いんです。
何十回と振らせたら1-6の目が均等に出てくれる装置、としてダイスを取り扱うのは誤りです。
これに関しては下記の記事が分かりやすいかと思います。
もう一度言いますが、「6の目が一度も出ない」を前提にゲームをデザインしましょう。
これは他のランダム装置でも同様です。
4.見通しが悪い
見通しが悪いというのは、プレイヤーが何をして良いのか分からない状態のことです。
自分が作ったゲーム。作者である自分にとっては隅々まで歩き回った見慣れた景色です。
あちらに進めば収入が多くなるな。
でもこちらの方が早い段階で勝利点が取れそうだ。
向こうはインタラクションが強く関係するな。
悩ましい選択肢が目の前に広がっています。ワクワクしますね。
ですが、初見プレイヤーにとっては先の見えない荒野にポツンと立たされている状態です。
どこに進めば楽しい思いが出来るのか、が全く分かりません。
「いやこの分からない状態から見つける楽しさがあるんだ」という意見。それはもちろん正しいです。
ですが、プレイヤーと作者の理解度には想定以上の乖離があります。
「作者が分かりやすく提示したつもりでも、プレイヤーには意外と伝わらないものなんだ」ということを念頭に置いておきましょう。
なのでひとまずは分かりやすくすることを目指します。
そのために「目標」という標識を荒野に立ててあげます。
小目標(最初の一歩は何をすれば良いのか)
中目標(どんな戦略があるのか)
大目標(最終的にどうすれば勝てるのか)
この3つを分かりやすく提示しましょう。
戦略(中目標)や勝利条件(大目標)に関してはゲームごとの差が大きいので省きます。
小目標はいくつかの共通した手法があるため以下に紹介します。
まずは個人目標カード。これはめちゃくちゃ分かりやすく小目標として機能してくれますよね。プレイヤーが何をしたら良いのか書かれたものが手渡されるわけですから。
次にアグリコラにおける食糧制。
とりあえず食糧確保しなきゃ! と最初の目標になってくれます。食糧制だけでなく、何らかの減点 & 回避要素でも同じです。
他には大鎌戦役におけるメックとファクトリー。
プレイヤーはまず「川を越えて中央(ファクトリー)に向かいたい→じゃあメック作ろう」と思います。こう言った「テーマ的に重要なもの」も小目標として機能してくれます。
または単なる「収入」も強く小目標として機能します。例外無く全てのボードゲーマーは収入を多くしたいからです(デカい主語)
このゲームではどうしたら収入を上げられるのか、が一手目から分かるようにしてあげましょう。
個人的には「一手目は何をしたら良いか」は分かりやすければ分かりやすい程良いと思っています。
もちろん「分かりやすい=一通りしかない」では無いですからね。複数の道を分かりやすく提示しましょう。
5.作業感が強い
ゲームの見通しを良くしすぎると今度は作業感が強くなっちゃってダメじゃない?
と疑問に思う方もいるかもしれません。
しかしそうではありません。この2つは大きく異なります。
見通しの良さとは「やることが分かること」、
作業感が強いとは「結果が分かること」です。
やることが分かることと結果が分かることは全く違います
これめちゃくちゃ大事だと思っています。
やる前から結果が分かっていて、その通りにことが進んでしまうのであれば確かに作業感は否めません。
そのため、やることは分かる(見通しは良い)けど、結果は分からなくする必要があります。
例えば、
『今立ってるこの場所からゴールに向かうためには、道なりに進みながらあそこに見えている3つの橋を渡る必要があります』
ここまでが見通しが良い状態。
『ただしその橋はダイスで6の目を出した人だけが渡れます』または『1人一個ずつ他プレイヤーを足止めするアイテムを持っています』
これが結果が分からない状態です。
このように結果を分からなくするためには運またはインタラクションを用いる必要があります。
どうすればゲームに勝てるかは分かる(見通しは良い)けれど、運またはインタラクションの影響によってその通りに行くかどうか(結果)は分からない。
これが見通しが良く作業感は無いという状態です。
やることが分かると結果が分かるは全く別である
大事なことなのでもう一回言いました。
6.テンポが悪い
テンポを良くしよう、というのはボードゲーム製作者なら一度は聞いたことがあるかと思います。もしかしたら耳にタコが出来るくらい聞いているかも。
ではそもそもテンポとは何なのでしょうか。
個人的にテンポとは
・思考までの時間
・決定までの時間
・反映までの時間
の3つ。これらが影響すると考えています。
思考までの時間。
これは「どのタイミングから悩めるか」という話ですね。
例えば、自分より一手番前の人のアクションによって盤面の状態が大きく変わる場合。
こうなると「自分の手番が来ないと状況が分からず悩むことが出来ない」となります。
前もって悩めないのでどうしたって時間がかかります。
決定までの時間。
これは自身のアクションを決定するまでにかかる時間です。
先ほどの思考までの時間が「悩み始めるまでの時間」であったのに対し、こちらは「実際に悩む時間」です。
提示された選択肢が多ければ多いほど、または複雑なほど悩む時間は長くなる。
悩む時間が長ければ、手番はなかなか回りませんよね。
反映までの時間。
これはアクションの結果、「盤面での処理が完了するのにかかる時間」です。
はい今1つのアクションを行いました。
では駒を移動させて、自分の個人ボードを確認して、ボーナスをもらって、即座に点数計算をして、その後市場を一新させて、新たなカードをめくって、出てきたカードに対応するイベントを発生させて……
と処理が長ければ長いほど次の手番には進めません。
上記を鑑みて、めちゃくちゃテンポの悪いゲームを考えてみますと
・毎手番で盤面の状況が大きく変わる
・自分の番にならないと悩めない
・選択肢が多過ぎるまたは複雑すぎて悩む時間が長い
・1アクションで行う処理が多い
といった感じでしょうか。
逆にテンポが良いゲームとなると
・盤面の変化が少ない
・同時手番
・選択肢が少ないかつ簡単
・1アクションで行う処理が少ない
といった感じになりそうです。
では、テンポは良ければ良いほど正しいんでしょうか。
実はそうではありません。テンポの良さによって犠牲になるものもあります。
それはインタラクションです。
インタラクションとは「他者との相互干渉」です。
言い換えれば「他人の選択が自分に影響を与えること」なので、インタラクションが強ければテンポは悪くなります。
ワーカープレイスメントが分かりやすい一つの例かと思います。(またワーカープレイスメントかよと思われるかもしれませんが、マイナーなゲームやメカニクスを挙げても例として機能しないですからね)
あなたは他人の手番中に悩みます。
『自分の手番が来たらあのアクションがやりたいな。そして得た資源で、次はこのアクションがやりたいな』
ですが、いざ自分の手番が来たらどのアクションも踏まれてしまっていました。
なんてこったい。
そうなると一から考え直しです。他者の一手によって、思考する時間が長くなります。
このようにインタラクションが強ければ(頻度が多ければ)、テンポは悪くなります。
他者からの干渉によって計画変更を余儀なくされますし、その都度考え直さなきゃならないからですね。
テンポとインタラクションはトレードオフです。
なのでメリハリを持たせましょう。
インタラクションを持たせる部分はあえてテンポを悪く、それ以外の部分はなるべく処理を軽くしてテンポを早める。
その両軸で考えるのが良いの思います。
7.逆転の可能性
直接攻撃要素(1位を殴る要素)を持たず、かつ勝利点トラックがあるゲームですと、途中から下位のプレイヤーがもう絶対に勝てないと分かってしまうことがあります。テラミスティカやトスカーナの城等ですね。
いわば負け確と呼ばれるような状態。
この状態を楽しめるプレイヤーばかりではありません。萎えてしまうプレイヤーもいます。
もちろんあえて突き放すのも良いでしょう。
負けるのは別に悪いことでは無い、悔しさが次のゲームのモチベーションに繋がるんだ、としてゲームを作るのもアリです。
とは言え、ゲームデザインの一つの手法としてプレイヤーのモチベーションを最後まで保つための工夫をいくつか覚えておいて損は無いかと思います。
ということで常に逆転の可能性は残しましょう。
ここで大事なのは「実際に逆転出来ること」ではありません。
逆転出来る“かも”です。
確定ではなく、あくまでも可能性。
可能性は低くて良いので、プレイヤーが希望を持てるような2つのギミックを挙げます。
①役満を作る
麻雀の役満は、常に「逆転可能性」を秘めています。
状況によっては倍満でもいけるかもしれません。1位に直撃なら跳満でもいけるかも。
ただし、1位プレイヤーがタンヤオのみで上がってしまう可能性のがよほど高いのです。
役満には
・どうすれば逆転出来るのか(どんな牌を集めれば良いのか)が分かりやすい
・運要素やインタラクションが絡む
・実際の確率はめちゃくちゃ低い
という性質を持っています。
つまり、ユーロゲームでもこれと同じものを用意しましょう。
ただこれは短時間ゲームだからこそ許されてる手法だったりします。
そのため、中重量級ゲームなら次の手法のが使えるかもしれません。
②終了時勝利点の活用
勝利点トラックに記録されるのはゲーム中得点です。終了時点は最後まで分かりません。
そのため、たとえ勝利点トラックで離されいたとしても、ゲーム終了時の加点でまくれる可能性がある、と期待させれば良いわけです。
ここで避けなくてはいけないのが
・入る得点自体が少ない
・差が付かない(ように見える)
の2点です。
得点が少なければもちろんまくれません。
たとえ得点が多くても、皆同じ感じで入るなら差がつかないのが分かるため期待が持てません。
差が付かないの例えとしては、テラミスティカの宗教トラックで1位2位がバラけたような状態でしょうか。
全員満遍なく点が取れることが見てすぐ分かります。これでは期待が持てません。
そのため「自分だけの終了時点が入る」かつ「他プレイヤーは何点入るか分からない」というギミックが必要です。
具体的には
特化戦略がいくつか存在し、他プレイヤーには入らない終了時点を自分だけが持っている。
どうやら他プレイヤーも各々特化戦略してるみたいだけど、何点入るかよく分からない。
といった感じでしょうか。
この手法も、結局は上手いプレイヤーに終了時点が多く入るため、まくれる可能性自体は低くなります。
上記2パターンにおいて、どちらも「可能性は低い方が良い」としています。
その理由としては、ちゃぶ台返しにプレイヤーは理不尽さを感じるからです。長時間ゲームですと特に。
理不尽さは可能な限り減らす必要があります。それについては次の項で説明します。
8.理不尽さを減らす
ゲーム中の理不尽さを無くしましょう。
プレイヤーが納得出来ることは非常に大事です。
例えば2時間のゲームを遊んでいて、最後の最後にサイコロの出目が一番大きい人が勝ち、なんてルールだったらめちゃくちゃつまらないと思います。
これがなぜつまらないのかといえば、それは中重量級ゲームの楽しさが「計画・実行・反映」にあるからです。
例えば麻雀やトリテを2-3時間遊ぶ場合、短いゲームを何度も繰り返して遊んでいます。
各ゲーム間において点数は持ち越されることがあるものの、ゲーム自体に繋がりは一切ありません。毎回仕切り直して複数回遊びます。
ですが中重量級ユーロゲームは異なります。
2時間の中、最初の一手から最後の一手まで全てが繋がっています。
お互いが必死に計画し、実行してきたもので勝敗を決して欲しいのです。
それを台無しにされたんじゃたまったもんじゃありません。
ただ将棋のようなアブストラクトゲームでない限り、運要素やインタラクションによって勝敗に影響が出ることがあります。
ではこれらにおいて、理不尽さを減らすためにはどうすれば良いのか。
それは「積み重ね(それまでの経緯)」です。
積み重ねてきたものであること、突発的で無いことが非常に重要です。
まずは運について考えましょう。
ダメな例としては
・カードをランダムに引いたら、単に100点入るカードが引けた
というものです。
勝者が突然決まりましたし、それまでのプレイングが全く意味を成していません。各自が積み重ねたものが無意味です。
良い例としては
・特化戦略を取っていたら、その戦略に当てはまるカードがたまたま引けた
というものです。
頑張って積み重ねたものを運が後押ししてくれた形ですね。
運要素は積み重ねを輝かせる装置にしましょう。
次にインタラクションについても考えてみます。
インタラクションの中でも、攻撃・妨害要素は特に理不尽さを感じやすい部分です。
そのため積み重ねによって「殴られても仕方ない」という状況をプレイヤーが正確に把握出来るようにしましょう。
ダメな例としては
・殴る相手を選べず、とりあえず近くの相手しか殴れない
・誰であっても殴ると得
というインタラクションです。
積み重ねが全く意味を成していません。
良い例は簡単です。
「1位だから殴られた」です。
それがプレイングスキルなのかヘイトコントロールなのか運なのか、何はさておきそれまでの経緯によって1位になったのだから殴られても仕方ない。という形ですね。
なのでもし自作に攻撃・妨害要素を取り入れたいのであれば
・殴る相手を選べること
・1位が明確に分かること
・1位以外を殴るメリットが少ないこと
の3つは機能するようにした方が良いかと思います。
とにかく「積み重ね(それまでの経緯)」を大事にしましょう。
突発的だと理不尽さに繋がり、ゲーム体験を著しく損ないます。
下記にも「理不尽さ」や「積み重ね」についてのいくかの問題を挙げていきます。
9.均等でない
プレイヤーはゲームから自動的に得られるものが均等でないと、理不尽さを感じます。
分かりやすい例だと手番数です。
ラウンド制のゲームではなく、トリガー制のゲームにおいて「手番をならす」とか「同じ手番になるようにしてから終わらせる」といった処理を見ることがあると思います。宝石の煌き問題なんて言われることもあります。
例えばカタンはならされていません。誰か10点取ったら即終了。
これがなぜ理不尽に感じるかと言えば「プレイヤーの選択に関係なく、ゲームから自動的に与えられた物が均等でないから」となります。
スタートプレイヤーを決めるのは大抵ジャンケンです。ジャンケンはゲーム外の出来事であり、かつプレイヤーの選択が反映されてるとは言えません。単なる運です。
なのにスタートプレイヤーは手番数が一番多くなりやすい。ジャンケンで勝っただけなのに!?
この「プレイヤーの選択とは関係なく手番数に差が生まれること」を理不尽だと感じます。
他に理不尽さを感じやすい例としては、
座った席(上家、下家)によって得られる資源の多寡やプレイのし易さが決まるとか。
後手番は効率がめちゃくちゃ悪いとか。
ランダムに配られた能力によって勝利点を得る機会が大きく異なるとか。
こう言ったプレイヤーの選択とは関係のない部分で、覆せない差を設けるのはやめましょう。
もちろんこれがゲーム内の選択によって差が生まれるなら許容出来るわけです。
例えばワーカーを増員させたからアクション数が多い。資源を上手く集めたから手番が多い。他人から殴られたから得られる資源が少ない。
これなら問題無いわけですね。
この理不尽さを消してくれるのに重要な考えとしては「それってゲームのせいじゃなくてプレイヤーのせいだよね」です。
ゲームが悪いんじゃなく、自分または他人が良かった、悪かったんだ。とそう思わせられるようなゲームを作りましょう。
10. バランスは整える。バランスは壊す。
ゲームバランスという概念は説明するのが非常に困難です。様々な人が様々な意味で用いています。
バランスが悪いって良く言われるけど、これって結局どういうこと? という話ですね。
バランスってなんなのさ。
個人的な定義で言えば、バランスが悪いとは「プレイヤーが選択に意味を感じられなかった」の言い換えであると考えています。
例えば誰がどう使っても強すぎる能力があるとします。この能力はプレイヤーの選択が反映されません。
なぜならどのタイミングで使おうが、誰が使おうが、同様に強いからです。
どう使っても弱いも同等ですね。
プレイヤーの「積み重ね」が一切意味を成していません。
そうするとプレイヤーは自身の選択に意味を見出せなくなる。これが「バランスが悪い」状態です。
ただし、重要なのは「プレイヤーがそう感じたかどうか」です。バランスが悪いとは数字で表せるものではないんです。
なので、まずはバランスを整えましょう。
バランスを整えるというのは「プレイヤーの選択に常に意味を持たせ、ゲームとして成立するようにしよう」ということです。
この時のバランスとは数字ではありません。
単なる強弱の差ではありません。強すぎる能力や弱すぎる能力が悪いんじゃありません。
プレイヤーの選択に意味を成さないことが悪いんです。
ここでバランス調整を単に「数値を近づけること」や「強弱の差を無くすこと」と勘違いすると、ある弊害が現れます。
それは平坦化です。
ゲームに登場する全ての能力や効果が均等に調整され、同じ強さを得られるとしたらどうなるでしょう。
先ほどと同じくプレイヤーの選択が意味を成さなくなります。
なぜならどれを選んでも同じだからです。当たり前ですね。
これも「積み重ね」が意味を成しません。
先ほどの定義で言えば、この平坦化もバランスが悪い状態なのです
そのため効果には強弱が必要です。そう言った意味ではバランスは壊した方が良いのです。
ただこの時も大事になるのが「積み重ね」です。
積み重ねが上手くいった結果、強い効果。
積み重ねが上手くいかなった結果、弱い効果。
とにかくこの差を大きくしましょう。
バランスを壊すとは「プレイヤーが積み重ねた結果によって大きな差が発生するようにしよう」ということです。
この差を大きくした方が、よりプレイヤーは自身の選択に意味を感じてくれます。
バランスは整える。そしてバランスは壊す。
この2つは実は全く同じ意味であり、それは「プレイヤーの選択と経緯により意味を持たせる」ということとなります。
11. 罠を仕掛けるな
罠というのは「一見正しく見えるのに選んだら負ける選択肢」のことです。
例えばゲーム開始時に配られる目標カードの中に「全ての研究トラックを半分まで上げろ」があったとします。
しかしそれに従ってプレイをすると、勝利点が全然取れずに確実に負けてしまう。
これが罠です。
勝つためには研究トラックは一点特化で上げなくてはいけない、といった感じ。
「配られた目標カードは無視する」が正解になってしまうようなパターンですね。
プレイヤーは基本的にゲームからの誘導を疑うことをしません。
そのため、従ったら確実に負けるような選択肢に誘導してはならないんです。
もちろん戦略の強弱はありますし、この戦略弱いかもなー程度は問題ありません。
ゲーム側から強く誘導するようになると『罠』となります。
先の例だと、プレイヤーが“自ら”全ての研究トラックを満遍なく上げるプレイを試してみて、結果ダブルスコアで負けたとしてもそれは問題ありません。
強弱があることは様々な戦略を試す動機付けに繋がります。
他の例ですと、テーマに沿ってプレイしたら凄く弱い(狩猟ゲーなのに狩猟を頑張ったら負ける)とか。これも罠パターンの1つですね。
罠を無くすためには、まずは自身が素直にプレイして確かめることです。
目標カード通りだったり、テーマ的に重要そうだったり、パッと見で強そうな戦略だったり。
それを試してちゃんと勝負になることを確認する。
「突飛な戦略を試してみてゲームが壊れないかどうかテストする」を重要だと感じる方もいるかもしれません。
もちろんそれも間違ってはいないのですが、重要になるのはテスト後半においての話です。
まずは王道が綺麗に舗装されているのか、ちゃんと勝利へと続いているのか、その確認のが先ですね。
12. 資源が等価
このゲームでは5種類の資源が登場するが、それらは全て等価である。
というゲームをたまに見ます。テスト段階だとその頻度はさらに多く。
等価というのは「得る方法も使い方もゲームに登場する量も同じ」という意味です。ざっくり言えば宝石の煌きですね。
もちろん宝石の煌きフォローを作りたいのであれば全く問題ありません。最近ではフレイムクラフトが資源等価ゲームの一つです。
ただし宝石の煌きフォロー“しか”作れない(かつそれを脱したい)のであれば、他の手法も用意した方が良いでしょう。
資源等価の特徴として「シンプルだがそれゆえに味気ない」というものがあります。
赤、青、黄、黒、白の資源を集める。
集めた資源を支払って効果付きのカードやタイルを買い物をする。
その結果、貰える資源の量が増える。
さらに買い物をする。
このサイクルはシンプルでとても楽しいものです。ですが味気ない。
資源が等価は一歩間違えれば「どれを選んでも同じ」に繋がりやすく、これではプレイヤーの選択の意味が無くなってしまいます。
ではどうすれば良いのか。
資源を等価にしないためには、当然ながら各々の資源に独自の使い方や振る舞いを付与する必要があります。差を設けなくてはならない。
そしてこれを補ってくれるのが「テーマ」です。
各資源にテーマ性を持たせましょう。
ダイヤ、ルビー、サファイアだと何となく同じイメージ(専門家からすれば全く別でしょうけれど)。
これが麦、牛、人だと使い方がガラッと変わってくれるはずです。
なぜなら麦=牛=人のゲームの方が、なんか不自然に感じませんか。
システムのみを根拠に資源の振る舞いを変えたりバリエーションを用意するのはかなり難しいかと思います。
システム中心で考えるタイプの方は、同時並行でテーマも一緒に考えましょう。その方が結果的にシステムも上手く拡がってくれるはずです。
13.コンポーネントの大きさと位置、ゲームでの重要性
コンポーネントの大きさや位置とゲーム上の重要性は正比例させましょう。
つまり
重要なものは見た目を大きく、テーブルのど真ん中に配置する。
重要でないものは小さく、テーブルの端っこに配置する。
これを逆転させると、11の項で述べたような『罠』になってしまいます。
テーブルのど真ん中にあるメカニクスだから重要だと頑張って注力したのに、全然勝利点に繋がらないじゃん!
はやめましょう。
逆に言えば、ど真ん中に配置せざるを得ないコンポーネント(例えばメインボード)なら、ゲームシステム的な重要度を増す必要があります。
システムの重要度からテーブル上の配置を決めても良いし、テーブル上の配置からシステムの重要性を調整したって良いわけです。
そのため制作の早い段階で「ゲーム全体のテーブル上の大まかな配置」は決めた方が良いでしょう。
14.インタラクションを持たせるテーブル上の位置
先の項に続いて、インタラクションを持たせるテーブル上の位置にも気をつけましょう。
インタラクションは「他者との相互作用」と訳されますが、個人的には「他者によって手が歪むか」だと思っています。
他者の存在を意識し、意識させることがインタラクションには必要です。
そのためにインタラクションがあるメカニクスは「皆が意識出来る場所」に置いてあげる必要があります。
具体的にはテーブルの中央です。
盤面におけるプレイヤーの見やすさ、意識しやすさを比較すると
手札 > 手元(個人ボード) > テーブル中央(メインボード) > 他人の手元(他人の個人ボード)
となります。
当然のことながら、自分の目の近くから離れれば離れるほど、見えにくく意識しにくくなります。
そして一番意識しやすいのは自分の目の前にある手札ですが、それは同時に他人からは最も遠い場所になります。
インタラクションを持たせるメカニクスは全員が意識しやすい場所に置かなくてはなりません。
つまりは全員の目から等距離にある場所、テーブル中央に置くしか無いんです。
テーブル中央のメカニクスにはインタラクションを与え、個人ボード上のメカニクスはソロ寄りに調整しましょう。
15. プレイヤーは得にならないことをしない
プレイヤーは自身の得にならないことをしません。意識すらしません。
これはいわゆる「お仕事」とはまた別の話になります。
お仕事は「自分がしたいことは他にある」「でもこれをしないと誰かが勝ってしまう」という状態で、一応プレイヤーの得に繋がっています。得に繋がるので意識もします。
そうではなく、得が無いとは「ゲーム上の勝敗に一切繋がらない選択肢」のことです。
もちろんこう言った選択肢を用意してしまうこと自体が問題ではあるのですが、無視されるだけならまだマシだったりします。
ここに「終了トリガー」を組み合わせてしまうと途端にゲームが成立しなくなります。
終了トリガーを引くアクションより、トリガーに関係無いアクションの方が勝利点を稼げる
となった時点で、ゲームは終わらなくなります。
さらに厄介なのが「実際に点が稼げるかどうか」ではなく「プレイヤーがそう感じたかどうか」です。
作者の目線からすると
いやいやトリガー引いた方が勝ちに近づくじゃん!なんでやらないんだ!
と思います。でもそんなのは関係ありません。プレイヤーがそう感じなければゲームは終わらなくなります。
トリガー式のゲームはプレイヤーが何をしても絶対に終わるようにしましょう。
また補足として、一応終わりはするけれど、トリガーがなかなか引かれない場合も考えてみましょう。
ここで一つの例としてドミニオンを挙げます。
ドミニオンには2つの終了トリガーがあります。
①勝利点(属州)カードが尽きる
②効果カードの山が3種尽きる
です。
勝つためには、①を頑張るのが正しいプレイングです。
ですがある種のプレイヤー、ドミニオンに精通していないプレイヤーが遊ぶと、②のトリガーが引かれることがあります。
もちろん終わってはくれるのですが、②のトリガーは①に比べるとかなり長いのです。
じゃあこのトリガー設定には問題があるのでしょうか?
実はそうは思いません。
なぜなら、プレイヤーは楽しくて効果カードを引きまくってるからです。
楽しい時間を提供出来てるなら、別にトリガーが遠くたって構わないわけです。
これは他にもテラフォーミングマーズとかでも同じ状況になったりします。
当然ながら終わらないことは問題です。
ですが長引いても必ず終わるのであれば、トリガーがなかなか引かれないプレイング自体は許容しても良いと思います。
16. コスパを考える
コスパとはコストパフォーマンスのことです。これは説明いらなかったですね。
ボードゲームシステムデザインにおいてパフォーマンスとは「面白さ」のことです。
そしてコストには2つの概念があり、それは「ルール」と「コンポーネント」のことです。
同じ面白さを出せるのであれば、ルールやコンポーネントは少ない方が良い。
逆にルールやコンポーネントを増やすのであれば、それ以上の面白さが増えないといけない。
これが「コスパを考える」ということです。
ルールに関して言うなれば、良く言われるものに「1つのルールで複数の問題を解決しろ」というものがあります。
既存の商業作品は既に問題が解決された後の状態のため、元々どのような問題を抱えていたかを分析するのはやや難しいかと思います。
なので例として拙作のオスティアを用います。
オスティアは初期テストの段階では
A:メインマップを進む「移動アクション」
B:船駒を増やす「造船アクション」
C:資源を納品をする「納品アクション」
D:個人ボードを強化する「改良アクション」
E:メインボードに木駒を配置する「建設アクション」
F:メインボード上の都市とやり取りする「交易アクション」
の6つのアクションがありました。
そしてこの時、
Dの改良アクションとEの建設アクションに魅力が無い
という問題が発生してしまいました。
この問題を解決する方法として、とりあえずDとEどちらも複雑にすればある程度の魅力を増すことは出来そうです。
ただこの2つのアクションのためだけに複雑にするのは避けたい。
複雑さは抑えて、魅力だけを増したい。
では考えた結果どうしたのか。
答えはDとEのアクションを合体させることとしました。
つまり
D改:メインボードの港にプレイヤーディスクを置き(元の建設)、その港に置いてある建物駒を個人ボード上に配置することで強化する(元の改良)というアクション
としたのです。
魅力が無い2つのアクションや効果があるのなら、個々の魅力を増すのではなく2つを足しちゃえば良いじゃない。という解決方法です。
これでルールの複雑性は増やすことなく、問題を解決出来たわけです。
次にコンポーネントに関して。
ボードゲームはデジタルゲームと違い物理的な制限を持っています。
それは「テーブルの上に乗り切るのか」という制限と、「値段」という制限です。
簡単に言えば、場所も値段もかさむコンポーネントを無限に増やすことは出来ないよね、という話です。
そのためなるべくコンポーネントは少なく、かつ面白さは増したいと考えます。
コンポーネントの非常に良いコスパ例として下記の二つを挙げます。
テラミスティカには「建て替え」というシステムがあります。
これは、下位の建物から上位の建物に建て替えるアクションです。
例えばA(下)、B(中)、C(上)の3つの建物があります。
この時Cを建てるためには、
①まずAを建てます。
②次にAを手元に戻しBを建てます。
③最後にBを手元に戻しCを建てます。
そのため3回の建設アクションを消費してCを建てています。
では、A、B、Cの3つの建物を全て建て切るには何アクション必要でしょうか。
答えは6建設アクションです。
3つの建物駒を建てるのに、倍である6建設アクション必要なわけです。
もしこれが「建て替え」でなく「建て切り」だったらどうでしょう。当然ながら駒が倍の数必要になります。
もう一つの例として、フードチェーンマグネイトがあります。
このゲームではピザ駒やハンバーガー駒が登場するのですが、置かれる場所によってその振る舞いを変化させます。
手元に置かれたなら店の在庫として、
広告の上に置かれたなら広告効果として、
客の家に置かれたなら需要として振る舞います。
1つの駒に複数の機能を持たせているわけです。
テラミスティカとフードチェーンマグネイト、どちらもコンポーネントを再利用(リサイクル)しています。
コスパを良くするためにコンポーネントリサイクルを活用しましょう。
17. 箱庭は守ってやらねば愛着が持てない
箱庭ゲームを作る場合、大事なのはプレイヤーが箱庭に愛着を持てることです。
これにはいくつかの条件があるのですが、その中でも「破壊されない」ということが非常に重要になります。
箱庭を他者によって奪われたり破壊されることはかなりのストレスです。
例えばアプリゲームのクラクラでは、課金アイテムとして「一定時間攻められない権利」が売っています。
これが課金アイテムとして成り立つくらい、自身の箱庭を壊されるのはストレスなんです。
そして、もしこう言った防衛策が用意されなかった場合、次にどうなるかというとプレイヤーは集めたものに愛着を持たなくなります。
欲しいカード手に入れたけど、まあどうせ奪われるし……
上手くタイル配置出来たけど、まあどうせ壊されるし……
と、集めたものに対して愛着が発生しないよう気持ちにブレーキをかけてしまうんです。
損したくないばかりに「そもそも得をしていない」と考えてしまう。
せっかく得られるはずだった楽しさを抑制してしまいます。
箱庭ゲームの楽しさの中核を担うのは「愛着」です。
この愛着が損なわれると箱庭ゲームとして成立しません。
箱庭ゲームを作るのであれば、他者からの妨害要素を入れるのは絶対にやめましょう。
18. 勝利点におけるリスクとリターン
インタラクションの強さと獲得出来る勝利点の多さは比例させましょう。
例えばインタラクションの強いエリアマジョリティと、弱いセットコレクションの2つが実装されたゲームがあるとします。
エリアマジョリティは当然ながら他人の邪魔が入れば入るほど思うように行きません。実行するのにリスクが伴います。ハイリスク。
皆本当は邪魔されたく無いんです。邪魔されないセットコレクションをしていたい。
でも仕方なく邪魔しに行く。
それはなぜか。
なぜなら貰える勝利点が多いからです。ハイリターン。
誰か1人をエリアマジョリティに放っておけばその人が勝ってしまうからです。
ですが、もしこれで貰える勝利点が少なかったらどうでしょう。
誰か1人がエリアマジョリティを頑張ってますが、放っておいても貰える点が少ないので無視出来ます。
そんなことより確実なセットコレクションの方が点が取れる。皆そっちに注力する。ローリスクハイリターン。
これではエリアマジョリティが全く機能しません。
インタラクションが強いメカニクス(ハイリスク)には多い勝利点(ハイリターン)
インタラクションが弱いメカニクス(ローリスク)には少ない勝利点(ローリターン)
はデザイン上の鉄則かと思います。
最後に
今回は18の問題を列挙しました。
そしてここまで読んでいただいた方にとっては、いくつかの問題が
・プレイヤーの選択に意味がないこと
・選択の積み重ねに意味がないこと
のどちらかに(またはどちらにも)原因があるのが分かったかと思います。
つまりは「選択に意味を持たせろ」でほとんどの問題は済んでしまうわけです。
しかしながらそう言われただけではどうにもピンと来ません。
そのため問題を細かく切り分け、各個別事例においてどのように「選択の意味の無さ」が影響してくるのかをまとめ、自分なりに書き連ねてみました。
もちろん全ての問題を網羅出来ているわけでありませんが、本noteが中重量級ボードゲーム製作の一助になれば幸いです。