読書の調べ

7月後半、日本橋高島屋の本屋さんに印刷見本を安く売っているとの情報がTwitterで拡散されていました。

印刷見本はなにも印刷されていないため、文庫本サイズの紙質の悪くないノートが安くたくさん手に入るということになります。

ノートは欲しいなと思っていたのと、8月一杯の開催とお店側は書いてあったこともあり、まだ少しは残っているだろうと踏んで向かいました。が、ネットの拡散力はやはりすさまじく、印刷見本があったであろうコーナーには「全て売り切れ」との張り紙だけがありました。

しかしせっかくの休日、電車に乗ってお出かけに来たので、そのままとんぼ返りというのも味気ないです。私はぶらぶらと店内を見て回ることにしました。本屋さんは高島屋新館の6階端にあり、店内はこじゃれた雑貨屋さんのようです。本の量は少ないですが、センスのよさそうな本が置かれている雰囲気を感じられます。

レジ前には店員のオススメ本コーナーがあり、並んでいる本はどれも読んだことがなかったため、数冊手に取ってみました。
その中に村上春樹文、和田誠画の『ポートレイト・イン・ジャズ』という本がありました。

本の内容は和田誠さんの絵を見ながら村上春樹さんが絵に描かれたアーティストについての文を書いているエッセイです。

私にとってジャズとはThe Stylisticsのアルバムを1つ持っている程度で、興味はあるものの、ほとんど聴いたことがない音楽です。


The StylisticsのSuper BESTアルバム。ジャズのスタンダードナンバー「You Are Everything」が入っている。アルバム1曲目はイントロがギャッツビーの宣伝でも使われている「 Can't Give You Anything (But My Love)」
べたべたに甘い音楽が苦手なため、買ったもののあまり聴いていません。

また、個人的にジャズは楽器の上手い人たちができる音楽、という印象を持っていました。
私は中・高校生のころドラムを習っており、一度ジャズドラムのたたき方を先生から教えてもらう機会がありました。しかしロックやメタルとはスティックの握り方から違っており、繊細で難しかったため、「楽しそうだけど私には演奏できない、よくわからない文化の音楽」という認識で止まっておりました。

書籍内にも登場するドラマー「アート・ブレイキー」
右手と左手のスティックの持ち方に注目してほしい。右手が上からスティックを持っているのに対して左手は下からスティックを包み込んでいる、これはレギュラーグリップと呼ばれるスティックの持ち方。

私は今年25歳となり、アラサーと呼ばれる年代に入りました。大好きなメタルやハードロックも最近は新規開拓する気もなく、同じ曲を聞き返す日々。新しい音楽に飢えていたこともあり、心機一転、ジャズに親しんでみようと購入しました。

目次を見た段階だとルイ・アームストロングくらいしか知っているアーティストはいませんでしたが、YouTubeでアーティスト名を調べながらエッセイを読んでいると知っている曲がたくさん出てきます。

ベニー・グッドマンの「Sing Sing Sing」、アート・ブレイキ ー& ジャズメッセンジャーズの「Moanin'」など、私の中にあった名もなき音楽にどんどん名前がつきました。

個人的にアート・ブレイキ ー& ジャズメッセンジャーズの「チュニジアの夜」がとても気に入りました。

最初はマラカス、そしてドラムソロから始まり、緊張感のあるフロアタムの3連符からクラッシュシンバルと同時に全員が演奏を始めた瞬間、久しぶりに音楽を聴いて泣いてしまいそうになりました。

聴いていて最高にハラハラするような複雑なリズムのドラムソロを気持ちよく叩ききり、そこからまさかのサンバのようなリズムのバンド演奏、と思えばやはりジャズだ、と曲の展開もめまぐるしく、どんどん引き込まれていきます。

ビッグバンドのような豪快さもあり、何度も聴きたくなるよき音楽に出会いました。

また本を読んでいて感じたのですが、村上春樹さんの文章は個人的な感想が読者に上手く伝わるように翻訳して書いておりました。

音楽を文字で表現するとこうなるのかと豊かさに感心してしまいました。

耳は音、目は文字の調べに魅了される贅沢な読書時間でした。

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