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依頼する文章の書き方

講演をお願いしたい、取材をしたい、個展に来てほしい、提案を受けてほしい、採用してほしい、など誰かにお願いする場面は仕事のなかでもよくあります。仕事は一人でできるものではなくて、誰かの力を借りなくてはいけないので他人に何かを依頼することは社会人の必須の技術です。しかしその方法を教えてもらうことってほとんど無いですよね。ということで自分用のメモだったものを補足して公開します。

私はこれまで講演や原稿執筆、委員の就任、アドバイス等を依頼されて、様々な依頼文やメールを読む機会がありました。その依頼内容や文章により、こころよく依頼を受けることもあれば、お断りしたくなることもありました。

その依頼を受ける、断るという違いはどこから生まれるのかを考えていくと

「自己紹介」

「必然性」

「意義」

「誠意」

というポイントがあって、それらが依頼主からの依頼の中にあるのか、ないのか、きちんと伝わる表現になっているかどうか、ということがポイントだと思うのです。

●自己紹介

そもそもこの依頼をしてきたのは誰なのか?がわからないと依頼を受ける受けないの判断ができません。

依頼する本人は、自分のことは日常で当たり前になっているのか、なぜか説明が無かったり、わかりにくいこともあります。初めてあった人には簡単な自己紹介ぐらいはするはずです。どんな会社でどんな事業内容なのか、依頼している本人は何をしているのか、などについては忘れずに書いてください。

また、依頼者と受ける側がどのようなつながりなのか、ということも示してくれると判断がしやすくなります。いつも世話になっている知人の紹介なのか、まったく関係ないのか、でも対応は異なります。どうして連絡先を知ったのかがあると少し安心します。

できれば、長々と会社概要や業務内容の細部から話し始めるのではなくて、まずは全体像を簡単に説明、それから私が関心を持ちそうな細部へと説明を進めてくれると理解しやすくなります。


●必然性(選んだ理由)

必然性というのは「その人を選んだ理由」です。
たまたま偶然知っていたからではなくて、多くの候補の中からこの人こそが依頼に最も適している、どうしてもこの人でなくてはいけない、という理由です。

ということは、必然性を語るためには、相手を理解していなくてはなり
ません。相手のこれまでの実績や、仕事、考え方、特長などを知らなくては、相手が依頼にするのにふさわしい理由を述べるのことができないのです。

この必然性をキチンと述べてない依頼文だと「別に他の人に頼めばいいじゃないか」という気持ちになってしまうし、自分の特長などに対する理解が間違っていれば、「知らないでいい加減に頼んできたんじゃないか」と思ってしまいます。他の使い回しのコピペみたいな文章で、心が動くでしょうか?(よほど上手い文章なら動くかも、ですが)

依頼される自分のことに対する理解や共感が納得いくものであれば、そこに、依頼者と被依頼者との間に「つながり」が生まれます。

このつながりが、依頼を受けるきっかけになるのだと思います。


●意義(自分と相手のメリット)

その依頼を受けたほうが良い理由、メリットを提示するということです。

もちろん依頼者の利益のために相手にお願いしているので、その依頼をする意義は何か、どのような成果が生まれるのか、どのような未来があるのか、ということについて語るのです。主に依頼する側が受けるメリットですね。

例えば講演を依頼するなら、受講してくれる人にどんな影響を与えて、それが、その人たちにどのように喜ばれて、どんな成果につながるか、ということまであると「やりがい」につながります。

もちろん、その講演が講師にとってどんなメリットがあるかまで、書けていたほうがいいことは言うまでもありません。「自分たちは集客力があるので新規のファンを獲得できる」「講師の商材を販売してもよい」などは受ける側のメリットです。

これがバイヤーへの依頼なら、そのお店の品揃えを理解した上で、私のブランドを採用すると「品揃えのアクセントになり売り場が明るくなる」とか「フォロワーを集客できて売上に貢献できる」などのメリットになるかもしれません。


誠意(準備に費やした努力量)

誠意という目に見えないものを伝えるのは難しいのですが、私の場合、誠意というのは、相手が準備に費やした努力量として判断します。

例えば、依頼をする前に自分いろいろ調べて、試行錯誤して、苦労して、それでもダメだったから頼まれる、というのは悪い気がしないものですが、ネットで3分調べれば分かるとか、窓口に電話すればすぐ分かるようなことさえ自分で調べる努力もしないで、自分が楽をしたいから、労力を使いたくないからと手足のように使われるのは、いかがなものかと思ってしまいます。面倒くさいからたまたま見つけたこれでいいや、って選ばれても嬉しくありません。

また、たくさんの資料を集めて事前に調べる努力をしていればいるほど、必然性や相手理解が深まり、誠意が伝わると思うのです。そこまで情熱をもって面倒くさいこともして依頼してくれるなら、こちらも期待に応えようと返報性の心理が働くのです。

バイヤーであればしっかりお店や品揃えを調べた上で「あなたのお店の◯◯◯が好き」「品揃えの◯◯のレベルが高いからぜひ扱ってほしい」と言われれば嬉しくなりますし、

同じように雑誌に売り込むのなら「◯◯号の◯◯という特集の◯◯に対する切り口が鮮やかで刺激を受けたから、私も紹介してほしい」というように十分調べた上で頼まれると、そこまでわかってくれるなら掲載しようとなりやすいのではないでしょうか。

また、講師依頼の場合、明らかに交通費を含めると赤字になる依頼もあって「決まっているのでこれでお願いしたい」と言われるのか、それとも「少しでも多くなるように社内で調整してきたが、どうしても無理だったのでこの金額でお願いしたい」と言われるのでも違いますよね。相手が頑張らない依頼には、こちらが頑張って応える必要も無いと思ってしまうものです。


■依頼する文章のフォーマット

また、依頼内容によっては一人に相談しただけで解決しない場合もあり、そこからさらに何人かを経由して、その先の専門家に辿り着き解決ということもあるので、直接会ってお願いすればなんとかなる、のではなく、文章にするのは大切です。これが正しいということはなくて、それぞれ相手との関係性でアレンジして使ってもらうといいと思います。

※講師依頼を想定しています。

1)挨 拶
2)自己紹介 
 ・会社名(ブランド名)、業種、氏名
 ・自分はどんな仕事をしているか。別紙をつけてもよい
3)相手を知った経緯、相手をどう思っているか
  ・相手の実績や活動などについて、どのように理解しているのか
  ・それらの活動についてどう感じているのか
4)依頼内容
   ・何をお願いしたいのか?を簡単にわかりやすく提示
5)相手にお願いする理由は何か
  ・どうして「あなた」を選んだのかという理由、必然性
  ・相手を選んだ理由は? 今回の依頼事項とどう関係しているのか?
   例:○著作を読んで○○について気づきを得ることができたから
     ×他にいなかったから ×他に知らないから
6)これまで、自分でどのように解決しようとしてきたか
  ・相手にお願いするまでに自分でしてきた試行錯誤や経緯などを
  ・自分の事情だけれど、相手には直接関係無いので簡潔に
7)具体的な依頼について
  ・相手が判断するために必要な要素を忘れずに
  ・場所、時間、必要なもの、対象など。別紙をつけてもよい
  ※まだ依頼を受諾しているわけではないので、あまり制約しない
   OKをもらえてから、細部をつめていくこと。
8)意義:相手にお願いすることでどのような成果を期待するのか
   ・誰に喜んでもらうのか、それがどのように役に立つのか
   ・相手が協力したくなるような大義名分を提示する
  ※ここで相手にやりがいを感じてもらいます。
9)相手のメリット、謝礼
   ・お礼をどのようにするのか。
   ・金銭で返せないときは、代わりに何を提示できるか
   ※必ずしも相手はお金で動く人ではないかもしれません。
     相手に何を返せるのか考えてみるのもよいかも。
10)返事のもらい方
  ・初めての人に相手から連絡させるのは失礼。あらためて電話で確認
  ・相手に検討してもらい、判断は任せる
11)PS(追伸)
  ・個人的に伝えたいメッセージ。追伸はしっかり読んでもらえます。

いきなりくだけた失礼な依頼もどうかと思いますが、あまりに事務的なものだと心を動かされないで、バランスも必要だと感じています。

自分でもこのフォーマットで見直すと、できていないことがあって
反省することができました。簡単なメモですが、参考になれば幸いです。

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