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準備短し、進めよ留学生

ハンガリー留学は、準備がゆるくて簡単なのですが、誤解を生まないように入った後の話について言及していきたいと思います。

以前こういう記事を書きました。

留学準備は少ない期間で済む

上の例では、理系外部留学ですが、実際半年くらいの準備で済みます。おそらく英語の学習期間が短いというのが大きな理由でしょう。

Twitterや巷のブログを見ていると英語の準備期間に非常に時間を取られるようです。実際私も昔IELTSやTOEFLを受けたことがあります。IELTSで全てのセクションで6.0以上とるというのは結構過酷です。準備をしようと決めたときの最初の英語の習熟度のレベルによっては1年くらい準備が必要でしょう。

こちらの記事ではIELTSを受けたときの話を書いてあります。

ハンガリー留学の学部に限定すると、以下の能力くらいで入学できます。

・IELTS Academic ModuleでOverall 5くらい
・センター試験理系科目7割くらいわかる

そのため高校でそこそこちゃんと勉強していたら留学できると思いますし、社会人のリカレント教育としてもそれなりに準備期間の普段が少なくいいかもしれません。

では入った後はどうなのか?

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講談社「進撃の巨人」 諫山創

「ハンガリー留学」と書きましたが、私の知っている大学の話だけになります。

以下キラキラしてない鈍く光る鉛色の留学の話です。

大学の残念な対応

例えば、ELTE(Eötvös Loránd Universityというハンガリーの国立大学)では、生徒数が数万人いるのですが、それに対して大学の教務課の人が圧倒的に少ないため、9月の入学時に、メールで問い合わせてもほぼ回答が得られません。特に入国やビザの、重要な情報について返信が得られないというのは大きなストレスを感じます。

業務に対して、人がたりてないというのを教務課の人がしつこくいうので、仕方ないのですが、入学生や在学生にとっては情報を得られる唯一の窓口であり、それがまともに機能していないというのは、やはりそれ相応のクオリティということです。

コンサルティングの時間は決まっていて、時間を超えて対応してくれることはまずないです。あとメールの文面を、本来送るべき相手ではない別の生徒に誤送信するというが多少見受けられます。この辺はもう、当人の勤労意識とか仕事の質でしかないのですが。

自分が問い合わせる必要がない場合には、この辺の不満は感じません。

また履修登録もなかなかカオスを極めますが、授業が一度始まるとこれらの最低な体験は結構忘れてしまいます。

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小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

授業内容がレガシー/学習体験の質がまちまち

私はコンピュータサイエンスを専攻しています。授業内容は古典的なのでいいのですが、悪くいうと相当枯れた内容を毎年ひたすら擦っているような感じです。そういう学校のポリシーなのかもしれませんが、クラウドコンピューティングとソフトウェア開発全盛の時代に、半ば埃を被りかけている理論ばかりの授業内容に終始するのはどうなのかなという感じがあります。

授業は多くがLectureとPracticeからなっています。Lectureは老講師が教えて、Practiceは大学院に入りたて、もしくは博士課程の学生が教えています。

このPracticeは実際にプログラミングをしたり、数学の問題演習をするクラスなのですが、この授業の当たり外れが相当大きいです。講師によってはまず英語の習熟度が低すぎて何を言っているのか全くわからないまま終わります。これは私の英語力ではなく、TOEFL110点を超える同じ授業のクラスメイトも同様の不満を言っていました。

また、コンピュータサイエンス専攻の授業のカリキュラムは、留学生仕様にになっていて、現地のハンガリー人がとるコースとは別です。そのため留学生だけで構成されたコースで学びます。

留学生はわりと学位取得目的の人が多いです。モラルが多少低めでカンニングや解答の共有はよく見ます。

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小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

そのため、単位を取るための要件が複雑になっていて、不快なレベルの授業もあります。講師は、コードの提出課題では、静的解析でプログラムの一致度を確認すると言ってましたが、本当のところはわかりません。

この留学生だけのコースは、現地のハンガリー人がとるコース(ハンガリー語で行われる)に比べると専攻分野の授業選択の幅がほとんどありません。

私は別に研究者になる者でもないので、ソフトウェアエンジニアの業務に役に立ちそうな授業を取れれば楽しいなあと思います。現地のハンガリー人が受けられるコースには、

・Web Frontend
・Golang
等の授業がある一方、留学生にはないです。クラシックで枯れきった分野の講義があるだけなので、古典派コンピュータサイエンティストになれます。

プログラミングの実習が少ないので、コーディング能力は大学で鍛えるという感じでは全くないです。大学なのでそれはいいのですが、海外大学で素晴らしい「えんじにあ」になるというのは目的であれば留学先としてあってないと思います。

これは日本の大学も他の先進国の大学もほとんど同じ事情のようです。世界の大学ランキングの上位でも理論系のCS分野専攻だとプログラミング/コーディングの技能が低くても研究や学業に支障がないこともありますし、何よりコンピュータサイエンスとして扱われる領域が大きいこともあります。

この大学でアカデミックな内容をやりたいというのであればいいですが、大学で習った内容だけで全くの初心者が「かいがいでしゅうしょくするえんじにあ」になるにはちょっと難しい面があるかなと思っています。米国にいるときのように情報がいろいろ得られたり、就職のためのコネクションが作れるわけじゃありません。ハンガリーでのコネクションはできますが、所得が低いハンガリーで就職するというのも、経済的合理性がないです。

しかし、先に述べたように、どこの国でも世界でも大学でも同じではあると思いますので自分の努力にかかっています。凡人が手の届く正解でのソフトウェアエンジニアはプログラムで問題を解決してなんぼですから、そのための学習は個人でやっていかなければなりません。

アカデミックの内容的にはELTEは、コンパイラ系がちょっと興味深い研究をしてそうに見えます。

ハンガリーのEricssonの社員が授業をもっていたりして、LLVMとかコンパイラの細かい話を聞くことができます。静的解析のツールを作ったりしています。

またプログラミング教育に関する専攻や研究室があって、その辺に興味がある人はいいかもしれません。

まとめ

まちまちとか柔らかい表現で、いろいろ書きましたが体験としてはなかなか最低な体験だったなと感じる部分もあります。これはただの不運な個人の留学体験なのか、留学あるあるなのかよくわかりません。

大学に予算がないということも大学側から、とある状況で聞いたことがあるので、国の政治/財政状況相応のクオリティでしょう。

大学から提供されるものは正直貧相ですが、そこで何を体験してどういう機会に偶然で出会えるのかはプライスレスですので、とりあえず行動してみるのがいいかと思います。

お金と能力があれば、奨学金でもかき集めて先進国に留学するのがいいです。これだけは間違いない。

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小学館「ゴルゴ13」 さいとう・たかを

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