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離れた場所

時と場合によって、同じ景色の見え方や感じ方は大きく変化するんだなと感じた週末だった。6月のおわり。

早朝から母親に連れられて山梨・富士吉田に出かけた。

幼少期、幾度となく遊びに行った街。出かけるのが大好きな祖母に連れられて。

いつからこうなったんだろう。祖母の小言が増え、私に母親についての文句を言うようになったのは。

私は反抗していた。母親はそんなに悪い人じゃない。確かに小言は多くて人の話は聞けないが、根本的には良い人のはずだから。

それでもこの間出かけた時は幾度となくバトりそうになってヒヤヒヤした。私も母も主張が強いのだ。

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古びた大きな街

話は戻って、富士吉田について。そもそもわたしは山梨出身だからか、すごい頻度で来ていた。

祖母の家は甲府だが、車社会なので全然遠い距離ではないという感じなんだろうか。便利だな、車。

連れて行かれるたびに車酔いを起こして、止まっては吐いて、また動いては気持ち悪くなり、止まっては吐いて。

その繰り返しはごく最近まで続いていた。三半規管が弱いらしい。

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富士吉田は「吉田うどん」が有名だ。固くてコシのないうどんにケモノ臭い出汁、キャベツが乗っている。

有名店だという「ムサシ」という店でうどんを食べたが、私は讃岐うどんの方が好きだな、なんて考えながら完食した。

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その後、ずっと気になっていたお店へ向かう。

"the dearground"という店。おしゃれなカフェと服屋(もとい雑貨屋)が入った古いビル。

カフェでアイスコーヒーとスコーンを注文して、席に着く。店内がとても素敵だったし、スコーンはおいしい。

窓の外を眺めると、近くにある高校の男子生徒が、クロスバイクで下校している。暑いなかご苦労なことだ。笑っている。美しい。

スコーンが届く。お皿はアンティークのもので、コーヒーを置くコースターは白い陶器のタイルだ。滑りそうで、ヒヤヒヤする。

本当に目に入るもの全てが美しかった。ずっとここに居たかった。

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一階にある服屋へ入る。名前は忘れたが、趣味のいい店だと思った。入った瞬間HAVERSACKというブランドのポロシャツが飾られていた。

ワンピースを手に取り、試着する。私は意外と、というか、水色と白のストライプって意外とみんな似合うのだろうか。

自分のために作られたみたいにピッタリで、嬉しくてそのまま購入した。

大人になると変化するんだろうか。きっとかっちりしたストライプのシャツは、今もこれからも似合わないと思う。

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昔よく行ったうどん屋でうどんの生麺を買う。

「予約しといたから!」という母の言うままに10玉分購入したが、食べ切れるわけないじゃん、と少し笑った。

そういえば母は昔から作るなら一気にたくさん作っちゃえという感じで料理をする人だった。今回もそう言う性格が見えた感じがした。

多分料理、好きじゃないんだろうな。というか、好きじゃなくなったんだろう。

それはきっと、今はもうどこにいるかもわからない元夫、もとい私の実父のせい。

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透明な池

山中湖のそばに、忍野八海という深い池がある。

水深10メートル。狭いエリアに何個もそんな池がある場所だ。

ヤマメ、イワナ。たくさん泳いでいる、恐ろしい顔で。恐ろしく透き通った冷たい水で。

ここも昔、祖母に連れられてよく訪れた。別に自分は見るわけでもなく、車で待っていたり座っていたりしたんだが。

自分が1番大事なように見えたのに、どうしてだろう。ただこうやって思い出をたくさんくれた。本当に感謝している。

水はやはり怖くて、底が知れないものも怖い。だからここにくると本当に怖くて、進めなくなる。

昔江ノ島で海に携帯を投げ捨てたことがある。破壊衝動があるのは昔から。その後どうなったかとか、全然覚えてないけど。

忍野八海でも、いっそ落ちてみたらどうなるかなって何度も考えたけど、魚に食べられそうで嫌だ。

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わからなかったこと

山梨から東京に出て、もう15年以上経つ。

山梨なんか、全然魅力なくてつまんない場所だ、おまけに海もない、ほんと何にもないってずっと思っていた。

東京に来て、なんでもあることに驚いたし便利だったけどなんだか寂しかった。無機質だった。

山梨出身だという話をすると、何もないねっていう人もいればいい場所だねっていう人もいる。

そう、いい場所なんだよ、何より自然があって、ご飯がおいしいし、空が広い。それだけで十分。

そんな原則みたいな、当たり前のことに気づけたのは本当に最近だ。

どんなにお金を出しても手に入らない自然とか、そういう景色が家の庭から見られるとか…。

ただ感じることができる場所にいられるってことがどれだけ幸せなのかわからなかった。あまりに小さかった。

だからかき集めてしまう、ほしいと思ったものを手当たり次第に。手元に置いておかなくてもいいものはきっとたくさん存在している。

東京は暑い。40度を越えそうな勢いだ。

山梨も大部分が盆地で暑い。でも、何だか心地いいと感じた。何だか本当に地球がこのまま終わってしまうような感じがして怖い。

もっといろんな自然を見たい。どうかその時まで、変わらずにいて欲しいと思う。

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