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藤原為時 -越前守任官に関する逸話-


1.藤原為時の越前守任官


 藤原為時は、長徳2年(996年)1月25日の除目で淡路守に任ぜられたが、3日後の28日に右大臣・藤原道長が参内して、越前守に任ぜられたばかりの源国盛を俄に停めて、藤原為時を淡路守から越前守に変更した(『日本紀略』後編十)。

学問に励んだ寒い夜は血の涙が袖を濡らした。除目の翌朝、無念さに天を仰ぐ私の眼には、ただ蒼い空が映っているだけ。蒼天は天子を指す言葉でもある。朕のことか。

『光る君へ』

※「紅涙」とは、涙を流し尽くして出る血の涙のことで、漢詩特有の表現。
※「蒼天」は、天子(ここでは一条天皇)を指す言葉でもある。「懸命に勉強に励んだ甲斐もなく、今は蒼天=天皇の恩を仰ぐしかない」とすがる文。

※ドラマでは、源国盛の越前守任官の決め手となった申文は、文章博士の作とし、さらにこの上奏文を紫式部の作とした。

 この越前守任官の決め手となったのが、この上奏文とされているが、文献によって語句が異なる。

  苦学寒夜 紅涙露袖
  除目春朝 蒼天在眼

寒夜:『古事談』『今昔物語集』『今鏡』『本朝通鑑』
冬夜:『十訓抄』

露袖:『古事談』
霑襟:『今昔物語集』『今鏡』『本朝通鑑』
盈巾:『十訓抄』 ※「巾(きん)」=「襟(きん)」か。

春朝:『古事談』『続本朝往生伝』『十訓抄』『今鏡』『本朝通鑑』
後朝:『今昔物語集』 ※「春朝」「翌朝」の誤りか。

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