見出し画像

離婚後&別居中の生活費(婚姻費用)、そして交渉方法について具体的に考えてみよう! --連載11

(1)お金は重要でも、どうしても離婚をしなければならない状況がある

離婚にあたって考えるべき最重要点は、離婚後の生活費と子どもの養育環境についてではあります。
ただもちろん、お金は重要だけど、それを差し置いても離婚をしたい気持ちが強いということは、

(1)もう気持ちが持たない
(2)これ以上一緒にいれば子どもにも影響する。
(3)仮に自分がメンタル的にも厳しくて働けないような状況になれば、それこそ破綻して、今後の生活どころではない・・等、

上げればキリはありませんが、いずれにせよ、離婚へ踏み切らざるを得ない状況があっての事だとは思います。

特に、モラルハラスメント、いわゆるモラハラなどが日常的にあれば、自分のメンタルのエネルギーが底をついてしまう前に逃げなければ、自分を保つことすらできなくなります。実際、会社を辞めざるを得ないほどの状況に陥っている方も大勢おられることを知っています。

(2)扶養的財産分与って何?


とはいえ、離婚をすればその日から法律上は他人となり、当然、元配偶者にはこちらを扶養する義務はなくなりますから、生活費の支援は受けられません(子供に対する扶養義務は別です)。

確かに、扶養的財産分与といって、分与すべき財産がない場合に、離婚後の妻(正確には収入の少ない方)の生活が安定するまで、「毎月生活費を支払いなさい」という結論になることはあります。

ただ、協議で相手が任意に取り決めてくれればよいのですが、仮に裁判にまで進んだとすれば「財産がありません、子供が小さいのです」ということのみを持って扶養的財産分与が認められわけではないようです。

本人の稼働能力(年齢・健康状態)、お子さんの年齢、結婚期間・財産分与や慰謝料等があるかどうか、などによることになります。

いずれにせよ、扶養的財産分与を巡って裁判にまでなるケースは、それほど多くはないとは思いますが、ただそれは判決上のお話しです。協議であれば、ある意味では不当でなければ、何を主張してもよいというところもあります。なので、認められる要素がある以上は、主張されてよいとは思います。

実際、今の日本社会では、女性の社会進出が増えてきているとはいえ、収入差はありますし、まだまだ専業主婦の方も多いですから、離婚となった場合に、夫婦の問題とは別に、相手方は離婚をしても勤務先があり、安定収入があるなど、やはり対等かと言われれば、いくら養育費をもらったとしても、環境という点では、対等には感じないこともありますので。

夫婦カウンセリングをしていても、よく出てくるフレーズは、離婚をした後のお互いの状況が対等ではないという話はよく耳にします。

繰り返しますが、扶養的財産分与が、認められることがあるいじょう、堂々と主張されてよいものです。離婚条件は最終的にお互いの主張の妥協点(落とし所)を探してゆくわけですから、一般的に考えて妥当だと思われるものは主張して、相手方配偶者がやむを得ないと思う妥協点の上限値を上げられるようにお話しを進めてください。

(3)離婚条件や婚姻費用の交渉上の注意点!

ただ、ここでの注意点は、とにかく権利があるから何でも主張してもいいんだということでは無いという点です。それは、相手方には相手方の主張がありますから、揉め事が大きくなるほどに、対話の場も閉ざされ、頑なに財布の紐をしめ始める感情戦にもなっていくからです。あまりに対話が成り立たない場合には調停をする必要が出てきますが、そこについては、以下で説明をしていますので、参照してみてください。

なお、交渉という点では、これはケースバイケースではありはしますが、巷でよく言われるのは、とにかく高額を主張して、そこから金額を少しずつ落としていくという話です。

これは、行動経済学でいえば、アンカリングという方法に該当するところかもしれません。ただ、夫婦の感情戦が伴っている場合には、僕はあまり効果が高いとは思わないことが多いように思います。

どういうことかというと、あまりに高額な請求をした場合には、相手方も被害者意識を募らせ、極論としては、そんなにお金を要求され、実際それがなければ折り合わないと言うならば、裁判でもしてください・・という態度に変わることもあるからです。
つまり、裁判にまでなれば、婚姻費用を支払い続けなければならないし、弁護士費用も掛かるし、労力も掛かるのは分かる、それでもそんなに高額な要求をされるなら、白黒付けた方がよい、むしろ裁判での予想される判決や和解案の方が、落とし所がよい場合もある・・と考えるわけです。

もちろん、裁判をする前に調停をしなければなりませんが、それでも裁判までいくならいくでよいと考えられてしまうこともあるわけです。

くどいようですが、あくまでケースバイケースではありますよ。でも、時として思うのは、自分のこれ以上は譲歩できないというポイントを最初から提示して、そこからは絶対に下げることはしないという姿勢の方が、交渉上よい場合もあります。

たとえば、こちらが500万円を要求し、相手方は300万円だと言った場合に、折り合って中間地点の400万円で折り合うかといえば、冷静に考えてみれば、案外そこには至らず、至るとしても相当時間と労力を要するように思うわけです。また、弁護士さんが必要な時もあり、けれどその費用を差し引くと、結果として400万円以下になる場合も往々にしてあるわけです。

お金も重要ですが、その居たたまれない苦しい環境にいることで、自ら削り取られるのも避けたいですし、それが子どもに影響していると思うと余計に何が正しくて、どう進めるのが正しいのかも分からなくなっていきます。

いずれにせよ、高齢や、小さなお子さんがおられる場合には、特に、上記のような交渉方法や、自分自身のボトムラインといいますか、譲れないポイントも事前にしっかりと把握し、そして準備をしておかれるとよいと思います。

離婚を考えているのに、感情に任せるなとは言いませんが、どこかで冷静さと感情をコントロールすること、そして戦略的に考える必要があると考えます。そうした戦略的な所を一人で考えることが難しい場合には、僕に相談をしてください。

相手方が夫婦関係の修復を望んでいても、いざ離婚をとなれば、1円たりとも払いたくはないという気持ちに切り替わってしまいます。

(4)離婚条件は離婚後に決めてもよいのでしょうか?

 この点は重要ですので、もう少し詳しくお話ししましょう。たとえば、相手との話し合いがこじれ長引いていて、もはや一緒の名前(姓)であること自体が嫌で、すぐにでも離婚をしたい方から「離婚条件(財産分与、慰謝料、養育費等)は離婚後に決めてもよいのか」というご相談を受けることがあります。

結論から言えば、それも可能ですが、離婚条件はできるかぎり離婚届を出す前に決定しておいた方がよいと言えます。

法律上は、財産分与は離婚後2年間、慰謝料は3年間、養育費に時効はなし、というようになっております。そして、慰謝料は別ですが、財産分与と養育費は、離婚後であれば、養育費分担の調停・審判や財産分与の調停・審判がありますから、そこで決めてもらうことも可能ではあります。

ですが、現に、統計上、離婚後の方が、取得額が少ない(今のデータは分かりませんが、かつては3割減というデータもあったと記憶しています)というようなものもあります。

繰り返しますが、離婚後の請求は、足元を見られ話し合いもしづらくなります。もし、生活費がまかなえていて、生活が破綻するような状況でなければ、とことん納得するまで場合によっては調停で話し合うのも一つの方法かもしれませんが、生活費が苦しい状況で調停などに持ち込まれてしまえば、兵糧攻めにあい、相手の提示する低い額に応じざるを得ないことにもなります。その辺りも考慮されて生活費が確保できるうちに(もしくは、十分に貯金をしてから)、離婚条件を取り決めてください。

(5)別居をすれば必ず婚姻費用はもらえるのですよね?

別居をすれば、婚姻費用(別居中の生活費)の分担請求調停・審判をするというのも方法かと思います(取得できるのは、相手の方が収入の多い場合です)。

ただ確かに、婚姻費用の調停は、離婚調停とは違い、調停の不成立後には審判という制度に移行し、そこで裁判官さんに、婚姻費用算定基準表を元に決めてもらうことができます。なので便利な制度ではあります。

ただ如何せん、決まるまでに時間が掛かります。数ヶ月は掛かります。どういうことかというと、まず調停が不成立にならなければならず、これが1回で不成立となって審判に移行すればよいのですが、必ずしもそういうわけではありません。なので、審判になるまでに数ヶ月掛かる場合もよくあるわけです。

そして、ようやく審判で決まったかと思えば、相手方から即時抗告(不服申し立て)をされて、それに対する裁判所の判断が下るまでに、さらに時間が掛かることになるケースもあります。

ですので、安易に婚姻費用の調停があるからとは考えずに、ある程度の生活費を確保したうえで進め方を検討したり、別居前に話をしたり、また感情的になることを避けるために、まずは円満調停から入る方がよい場合もありますよ。

 ※ 審判前の保存処分という、“決定する前に、仮でよいので、先に決めてもらいたい”という、簡単に言えば、そのような制度もなくはありません。ですが、その申し出が通るのは簡単ではないようです。

いずれにしても、どれだけ相手方に非・責任があるような場合でも、すぐに裁判をするという決断に至るものではないでしょうから、やはり前提は対話・協議がベースにあります。

その対話なり、協議なりをどう進めていけばよいのかという点は、事前に戦略を練っておく必要があります

その点については、僕に相談してくれるとありがたいです。以下から相談できますよ。

(6)行政書士松浦総合法務オフィス 離婚と修復のおきがる相談室

離婚や修復をするためには、何をどう考え、どういうアプローチをしていく必要があるか等、そうした進め方等についてのご相談に乗らせていただいています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?