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陸上競技による疲労骨折ってなんだろうか。思春期のスポーツ障害における疲労骨折。

陸上競技選手において、気を付けなければならないスポーツ傷害の1つは、疲労骨折です。
私自身も陸上競技をしていたので、周囲で経験がある友人が多数いました(私自身は幸い経験なかったです)。
怪我によって競技の成績に影響が出るだけでなく、心理的負担になったり日常生活に支障が出たりと広い影響が出る場合もあると思います。

疲労骨折の特徴

疲労骨折は、小さな外力の繰り返しによって骨組織が微細な損傷を受ける状態です。この損傷は通常、選手が競技中やトレーニング中に感じないことが多く、初期段階では症状が軽微であることがあります。そのため、選手はしばしば無理をして競技を続けることがあります。しかし、この行動は治療を長引かせたり、骨折の進行を招く可能性があるため、慎重に扱う必要があります。

疲労骨折の原因について、練習量が大きな要因であることが指摘されています。特に休日の有無や走行距離などが発症頻度に影響を与えており、中学駅伝競技において週2日以上の休みをとる選手と週1日以下の休みをとる選手との間には発生頻度に大きな差があることが報告されています。さらに、オーバートレーニング症候群との関連性も指摘され、自覚症状がある選手の方が疲労骨折の発生頻度が高いことが確認されています。

女性アスリートに関しては、female athlete triad(女性アスリートの三主徴)と呼ばれる問題があり、これには利用可能エネルギー不足、無月経、骨粗鬆症が含まれます。特に無月経は骨密度の低下につながり、疲労骨折のリスクを高めることが示唆されています。
この問題は男性選手にも影響を及ぼす可能性があり、栄養面からのアプローチが重要です。

疲労骨折の発生部位は種目によって異なりますが、全体的にはすねや足部に多く発生します。しかし、短距離競技や跳躍競技では足部が、長距離走や競歩競技ではすねが多い傾向があります。また、跳躍や投てき競技の選手においては腰椎分離症の割合が高く、競技種目によって発症部位が異なることが報告されています。

画像検査の難しさ

疲労骨折の特徴的な点の1つは、通常のX線写真では確認が難しいことです。従来のX線では、微細な骨の損傷や変化を観察するのが難しく、疲労骨折が確定診断されるまでに時間がかかることがあります。そのため、競技者が痛みを訴えても、初期段階では診断が難しく、適切な治療が遅れる可能性がある点に留意する必要があります。

疲労骨折の重要性

疲労骨折は軽視できないスポーツ傷害であり、放置すると大きな完全骨折に進行する可能性があります。さらに、競技者にとっては、疲労骨折によってトレーニングや競技から遠ざけられる期間が長引くことがあり、パフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性が高いです。
日本陸上競技連盟のアンケート調査からも、成長発育期の多くの選手に疲労骨折が発生していることが示されています。小学生から高校生までの各カテゴリーで疲労骨折の既往歴が報告されており、特に高校生の競技者において発生率が高いことが明らかになっています。

予防と早期対応の重要性

疲労骨折を予防するためには、以下のような対策が必要です。

  1. トレーニングの適正量と質: 選手の年齢や体力に合わせたトレーニングプランの設定が重要です。過度な負荷をかけないようにしましょう。

  2. 適切な休息: 選手に十分な休息を与え、過労を防ぎます。休日や休養日の確保が大切です。

  3. 栄養補給: 選手の栄養バランスを管理し、特にカルシウムやビタミンDなどの栄養素を適切に摂取することが骨の健康に寄与します。

  4. 定期的な健康チェック: 選手の健康状態を定期的に監視し、疲労骨折の兆候を見逃さないようにしましょう。

  5. 早期対応: 疲労骨折の症状が出た場合は、速やかに医師の診察を受け、適切な治療を行うことが大切です。

日本陸上競技連盟では疲労骨折の注意喚起と啓蒙活動を行っており、「疲労骨折予防10か条」を作成して選手に普及させています。下記に列挙します。

ひ 疲労感、体調には十分気をつけましょう。

ろ ロードでもトラックでもフィールドでもたくさん走れば発生します。

う 運動しすぎは要注意です。

こ 骨密度が低ければ、発症率は高くなります。

っ つらい減量は疲労骨折のもとです。

せ 生理(月経)がこないようでは骨が減ります。

つ 疲れた筋肉では、骨を守れません。

よ よい栄養をとりましょう。

ぼ ボーイもガールも、疲労骨折はおこります。

う 運動、ランニング中のしつこい痛みは、すぐ医師へ。


参考資料
https://www.jaaf.or.jp/about/resist/medical/kossetsu.html
日本陸上競技連盟医事委員会.陸上競技ジュニア選手のスポーツ外傷・障害調査─第 5 報(2019 年度版).東京:日本陸上 競技連盟;2020.

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