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医師の勉強録;宇宙に行くと身長はどうなるの??

金井宣茂さんの身長は2cm伸びたとのことです!宇宙環境では概ね2-5cm程度伸びると言われているようです。重力がなくなること、椎間板への体液シフトなどが原因として考えられています。腰痛は宇宙開発でも重要な課題であり、地上でも重要な課題のため今後の解決が望まれます。

少しでも伸びないかと背伸びをしていたり

中学生の頃、身長が思うように伸びないで悩んでいた時期がありました。
今でも、健康診断で1番楽しみにしている項目の1つで、
少しでも伸びないかと背伸びをしていたり、いなかったり。
流石にもう伸びないと思ってはいますが、、
宇宙では身長は???どうなるのでしょうか?

金井宣茂さんのツイート

国際宇宙ステーション(ISS)に2018年12月から滞在していた
金井宣茂さんのツイートが、世界で話題になっていました。
金井宇宙飛行士の身長がISSに滞在して約3週間、
その間に身長が9cmも伸びたというツイートです。

しかしながら、ロシア人船長に
「9cmは伸びすぎだろう?」と疑問を呈され、
自分で簡易的に再計測。
だいたい182cm。地上より+2cmという再計測結果でした。

さすがベテランのロシア人船長です。と話は終わっています。

脊椎の解剖

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病気がみえる vol.11 運動器・整形外科

脊椎は椎骨とよばれる骨が連結したものです。
側面から見ると、それぞれ前後に弯曲しています。
これを生理的弯曲といい、頚椎と腰椎は前弯、
胸椎と仙椎は後弯となっています。
頭側から頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙椎、尾骨(びこつ)があります。
椎骨と椎骨の間には椎間板があります。
中心はゼリーのような髄核で、
その周辺は線維で層状に覆われています。
脊椎にかかる負担をやわらげるクッションの役割をすると同時に
脊椎が動くことを可能にしています。

宇宙で身長は伸びる

脊椎の伸長、体液の移動、骨の萎縮、筋萎縮などの多くの生理学的要因は、微小重力環境への曝露中に発生します。

脊柱にかかる重力が減ることで、脊柱の伸びます。
これにより、自然な脊椎曲線をまっすぐにすることができます。
また、体液シフトに伴い、椎間板に体液の移動があることも
脊椎の伸長を促す要因の可能性があります。

脊椎伸長は、宇宙にいる乗組員の安全とパフォーマンスにも
影響を与える可能性のある要因の1つです。

身長は最大3%増加??

以前の研究では、、立位姿勢の少数の被験者から脊椎伸展データが
収集されました。
これらの研究からのデータは、無重力状態の最初の数日間に
身長が急速に増加し、その後、身長の成長がプラトーに達し、
元の測定値が最大3%増加することを示しました。
ただし、このデータは、座った姿勢ではなく、
立った姿勢の乗組員についてのみ収集されています。

別の研究では座高に着目して行われています。
座位の高さは、姿勢の変化、
および着用拘束と臀部の潜在的な圧迫の複合効果により、
立位の高さとは異なる影響を与える可能性があります。
着座高さのデータは、ISSの増分乗組員8名(女性2名と男性6名)と
シャトル乗組員21名(女性1名、男性20名)を含む
29名の乗組員から得られ、平均年齢は48歳(4歳)でした。
結果は、参加している乗組員が座高で最大6%、
身長で最大3%伸びていました。

最近、飛行中の椎間板をエコー検査で
椎間板の高さの一時的な増加と、
その後の高さの減少を観察した報告がありました。
変化をリアルタイムで観察することで、
腰椎の平坦化と椎間板の変化の相関関係が可能になりますが、
今後の研究が待たれます。

宇宙と地上帰還後の課題:腰痛やヘルニア

多くの研究は、宇宙飛行後の宇宙飛行士の腰椎と頸椎の両方で
椎間板ヘルニアのリスクが高いことを示しています。
321人の宇宙飛行士を対象とした研究では、
腰椎椎間板ヘルニアのリスクは、
宇宙飛行士の方が一般集団の4.3倍であると報告されています。
頸椎椎間板ヘルニアはデータが不足ではありますが、
宇宙飛行後最初の12か月の頸椎椎間板ヘルニアのリスクは、
対照の民間人のリスクの35.9倍とする報告もあります。

腰椎椎間板ヘルニアのリスク増加の要因は、
微小重力下によって、椎間板線維輪のひずみを増加させること、
グリコサミノグリカンの有意な減少、
コラーゲン:プロテオグリカン比の増加、
およびマトリックスメタロプロテイナーゼの増加などが報告されています。

腰痛は、多裂筋および脊柱起立筋の萎縮とも関係しています。
腰椎傍脊柱筋は、宇宙飛行中に微小重力の影響で萎縮します。
研究によると、微小重力下での姿勢安定筋の神経筋反応が低下し、
運動ニューロンの興奮性が低下することが要因と推定されています。
いくつかの研究では、椎間板の腫れを伴わずに
腰椎筋萎縮によって椎間板ヘルニアのリスクが高まる可能性が示されています。

感想

身長の話から腰痛の話まで進んでいきました。
腰痛はある人にしか辛さがわかりませんが、
QOLを阻害する大きな要因です。
労働災害でも大多数を腰痛が占めています。
宇宙での課題解決が地上での課題解決へつながっていくと
面白いなぁと感じております。

【参考、引用資料】
https://twitter.com/Astro_Kanai 金井 宣茂さんのtwitterより
Appl Ergon. 2020 Feb;83:102995.
Clin Neurol Neurosurg. 2021 Aug;207:106755.
病気がみえる vol.11 運動器・整形外科

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