出版社アルバイトを辞めたワケ

これは最終回ではない。僕はすでに東京の出版社アルバイトを辞めて、関西の出版社で社員として働いている。名前を変えた方がいいかもしれないが、25歳出版社社員日記よりは 今のがキャッチーだし、バイト時代の思い出はまだまだあるので、当分これでいこうと思う。

バイトを辞めたいというよりは、「地元の関西で働ける出版社が見つかれば、バイトを辞めよう」と、それくらいの気持ちだった。バイトは最長3年間契約できる。それに業務は楽しいし(何しろ月1で作家に会える)、東京も新鮮で楽しいから、のんびりいこうと思っていた。

焦りが出始めたのは2人のバイトの先輩が辞めた時だった。1人目は3年の任期満了。僕はてっきり「3年もいれば会社のどこかの部署に社員登用できるだろう」と思い込んでいた。編集部じゃなくて例えば「書店営業部」「ライセンス事業部」でも、まあ出版社の社員になれるならどこでもいいと思っていた。しかし先輩はあっけなく追放された。まあ、会社側は「3年居たら社員にしてあげる」なんて一言も言ってないのだが。

2人目は1年半?で辞めた。まだ半分期間が残っていたのに辞めたということは、人生の焦りを感じたのだろう。ここで3年働いても社員になれるか分からないのだから、転職活動して決まればさっさと辞めよう。こういういことだ。その先輩は静かな人だったので、余計にその焦りを残りの編集部バイトに植え付けていった。

その先輩が辞める前から、僕もインディードで「出版社 正社員」と検索はしていた。良い募集を逃さないためには毎日、いや毎時検索をかけなければならない。先輩が辞めてから、本格的に履歴書を送り、面接にも行くようになった。

面接までいってもやはり落とされた。出版社ではなく、編集プロダクションにも応募したが、編集経験の無さにより落とされた。そこはとても感じのいい会社に見えたし、とても親しい面接だったので、ようやくこれで受かったと思った。でも落ちた。フリーターには厳しい世の中である。

よく考えれば僕は編プロになんか行きたくない。その編プロは学校教材を編集する会社で、僕はそんなこと本気でしたいわけじゃなかった。でも焦りがそうさせたのだ。今思えば落ちてよかったが、当時は「とりあえず就職」と思っていた。

なぜそこまで就職したかったのか? 
1つ目に、小説の出版社の理想とギャップだ。実際にバイトをしてこう思った。「一生を作家のサポートに捧げたくない」。作家やデザイナーとの連絡係より、自分で記事を書きたくなった。20年後、仮に文芸編集部の部長になっていたとしても、次々に生まれる若い作家を妬み無しには見れないと思った。

2つ目に、それなら東京にいる意味はないと思った。関西にも少ないが出版社はあるし、そこで自分の記事が書けるならそっちの方がスリリングだと思った。

3つ目に、お金。バイトの給料は13万。家賃と食費、光熱費、携帯代でほとんどがパアだ。1年程フリーター生活を続けたが、貯金は学生バイトほど。地元の友達はその間にもボーナスをもらって結婚、子供…と思うと、気持ちが流されていった。


あのまま3年間バイトを続けてどうなっていたのかは分からない。東京に実家がある人なら、転職活動でバイトは並行できるので有利というか、やりやすいと思う。僕は受かるか分からない面接のために3度も帰省した。帰省の回数が増えるたびに、またお金を無駄にしているんじゃないか。これならいっそ関西でコンビニのバイトでもしながら出版社への転職活動を進めたほうが賢いんじゃないか、なんてことも考えた。フリーターというのは端から見ると能天気に見えるが、結構ビクついているのである。

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