見出し画像

浮世でランチ | 山崎ナオコーラ | ☆☆☆☆

もうなんか基本的に、ナオコーラさんはツボなんだな、というのを実感しました。
1ページ目から、書きっぷりに共感し、感動し、そこから最後まではあっという間で。

何が好きなんだろうか、と考えながら読んだんですが、ちょっと言葉では形容しづらいのですが、感覚の瑞々しさなのかなと思いました。

風流だな、と思うところが割と多い印象で。
そしてその風流感は決して気取ることはなく、普通に生きていればなんとなく共感できるレベルのものが書いてあるから、つい主人公に感情移入しちゃうんですよね。
彼女は彼女なりに精いっぱい生きているのだから、最後には報われてほしいな、と、物語に吸い込まれながら読んでいくんです。
結末が報われているかというのは読者の捉え方次第ですからなんとも言えませんけど、まぁ、私がこの主人公だったら最後のセリフは、「こんな人生も悪くないかな」になると思うんすよね。

人生ってどんな風に転ぶか分からなくて、私は保守的な性格だからあまり大それたことはしたくないし、しなくて良いと思ってますから、冒険好きな人からしてみると、スリルのない地味な人生と思われるかもしれませんよね。

けど人間って自分を守ろうとするから、そんなに言うほど冒険できる訳でもないし、治安の良い地域に繰り出してそこでちょっといつものタガを外してみる、という行動はまさに人間らしいと思うのですが、多分私もその程度なんじゃないかな。

そんな中で主人公の彼女は、会社を辞め、かつて仲の良かった友人に会うために海外へ飛び立ち、そこで出会ったのはまさかの人物、というような、ちょっと現実的ではないよな、と思いつつも、風景描写の中にやんわりと挟まれる瑞々しさ、それを吸い取れただけでも、この本を読んで良かったのではないかな、と思います。

ホント、ナオコーラさん、好きです。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?