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「時には厚かましさも大事だね」恩師との出会い③

「うわ〜すごいな、こんな景色初めて…。」

日本を出発して12時間、パリのシャルル・ド・ゴール空港へ近づいた機内から見たフランスの景色。

当たり前だけど日本とは全く違う屋根の色、広がる草原に感動していた。

なんだかすごく遠いところに来たんだ、とようやく実感が湧いてきた。

とは言ってもこの後のことで頭がいっぱいだ。

スーツケースちゃんと出てくるかな?
ホテルってどうやって行くんだ?
フランス語でなんて聞くんだっけ?

あ〜ドキドキする…。

記憶にはないが、とにかく無事入国はできたみたいだ。
パリに着いたのは夕方、この日は空港近くのホテルに泊まり、翌日高速列車に乗ってベルギーに入る予定になっていた。

とにかく早くホテルで休みたい。
ホテルまではリムジンバスがあると聞いていたので安心していたが甘かった…。

フランス最大のシャルル・ド・ゴール空港に集まるバスは数えきれないほど。

日本みたいに親切な標識もないし、そもそもあってもフランス語だしよく分からない。

勇気を出してあちこちに聞いたけど聞き取れない。
日本ではフランス語を勉強していたけど、現地に着いた途端、頭が真っ白になった。焦る…。

デカいスーツケースを引きずりながら右往左往していると、偶然ホテルのロゴが付いたバスを発見!

「あっ!このバス、ホテルへ行きますよね?」

運転手のおじさんに聞いてみたけど、何を言っているかやっぱり分からない。(相手も同じことを思っていただろうが…)

「とりあえず乗りま〜す!」(厚かましくいかなきゃ!)

その後無事にチェックインできたのだから正解だったのだ。


翌日も同じような感じで運よく⁉︎ベルギーのブリュッセル南駅まで辿り着いた。ここで乗り換えだ。

店があるゲントという街までは電車で30分。

インフォメーションでゲント行きのホームを聞いたが、やはり冷たくされ退散…。

ならば親切そうな女性を見つけてまた聞く。

今度はその人が親切にホームまで連れて行ってくれた。

「メルシー!」(これだけは自信満々のフランス語!)

順調、順調。

電車に乗ってひと安心、車窓から見えるベルギーの風景を楽しむ余裕も出てきた。

都心から10分も走ればどこまでも続く牧草地が広がる。

牛たちものんびり、時間の流れもゆっくり。
日本とは全く違う景色にあらためて感動していたが…

「君はなぜこの車両にいるんだ?」

と車掌さんが聞いてきた。
なんでって言われても、ちゃんと切符持ってるよ?

「違う!違う!ここは一等車だよ!君の切符は二等車!」

えっ⁉︎ このボロ車両が?(言葉が悪いな…)

海外電車あるあるで、ボロ車両でも一等車、最新車両でも二等車っていうことがよくある。

海外初めてのカントリーボーイには分かりませんよ…。
まあ、フランス語よく分かりませんみたいな顔してそのまま座らせてもらったけど。
(日本を離れるにしたがってどんどん厚かましくなっていく…)

っていうかブリュッセルを出発してからもう30分以上過ぎてるけど、まだ着かないのかな?急に不安になる。

50分経っても到着しない。やばいな、間違えたか…。
と焦り出した時、ゲント駅に着いた。
しかもみんなこぞって降りだした。終点だった…。

なんでこんなに時間がかかったんだ?
どうやら各駅に乗ったらしい。そういうことか…。

さあ、あと少しだ!

街中にある店まではタクシーで行こう。
海外のタクシーには不安もあったが、もうここまで来たらぼったくられてもいいや!

ピットさんが助けてくれるだろう。

という大変厚かましい開き直りが出てきた。

石畳の上を走るタクシーはガタガタ揺れて気持ち悪かったけど、中世の建物が並ぶ街を眺めていると、今日からこの街で暮らすのかという嬉しさが込み上げてきた。

あっ!写真で見た店だ!!

その店の前にタクシーは停まった。
ぼったくられるどころか、とても親切なおじさんで笑顔で見送ってくれた。アジア人が珍しかったのだろうか。

丸2日かけてようやく憧れの名店「パティスリーダム」に着いた。

期待と不安でドキドキする気持ちを落ち着かせて、歴史を感じる古い店の扉を開けた。

次回へ続く。
(今回もピットさん出てきませんでした…)

「パティスリーダム」

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