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個人ゲーム開発におけるマーケティング戦略

今回は個人ゲーム開発で勝ち残るための、マーケティング戦略を考えてみます。
なお、今回の記事を書くにあたって、こちらの本を参考にしました。

■1. 勝てる戦場を選ぶ

すでに人気があり、多くのユーザーを抱えているゲームと真正面から戦っても勝つのは難しいと思います。スタートが遅れていますし、知名度の点でも追いつくのは困難だからです。もしそれが大手が何億円もかけて作ったゲームだとしたら、トータルのクオリティの面で勝ち目はないので、戦うのは無謀です。

そこで、個人開発者は、「戦わずして勝つ」戦略を選ぶのが無難となります。戦わずして勝つ、というのは「勝てる戦場を選ぶ」という意味で、競争が激しい人気のジャンルをそのまま選ぶのではなく、少しそこからずれた人に向けて作ることで、競争を避けます。
しかし、あまりにもマイナーなジャンルを選ぶと、そもそも遊ぶ人がいないかもしれないので、そこは注意した方が良さそうです

例えば、スマートフォン向けゲームでは以下のジャンルが人気です。

* ワンタップで遊べるお手軽アクション・シューティング・タイミングゲーム
* 放置、育成ゲーム
* クラフト系ゲーム
* パズルゲーム
* シナリオ、ノベルゲーム
* 脱出ゲーム
* ストラテジー、タワーディフェンス、経営シミュレーション
* リズムゲーム
* ネタ系、バカゲー

このあたりのジャンルのテンプレを抑えつつ、テンプレから外れた要素を少し入れることで差別化していくのが良いのかな、と思います。

また、大手のゲームは長い間遊んでもらうために、本編からかけ離れたゲームシステムを複数用意したり、ステージを長めの尺にしてプレイ時間を引き伸ばしたりします。これは高い値段で買ってもらうためには、それなりの規模がないとユーザーを損した気にさせてしまうためです。それに対して、個人で戦う場合には、プレイ時間は数時間終わるけれども、1つのゲームシステムに絞った濃密なゲームプレイを楽しませる、という一点豪華主義で攻めるのが良いと思います。

■2. 自分だけの強みを出すには

競合に勝つためには、自分のゲームにしかない強みで勝負する必要があります。
では、強みを出すにはどうするか、ですが、これは「強みのないゲームは何か」を考えるとわかりやすいかもしれません。

▼強みのないゲーム
* そのジャンルのテンプレやお約束だけで作られていて、独自性がなくそれを選ぶ必要がない
* テンプレすらも抑えられていなくて、同ジャンルの他のゲームより明らかに劣っている

ジャンルでゲームを考える、という前提ですが、ジャンルにはいくつかのお約束があります。例えば放置系ゲームであれば、時間経過によりリソースが増加して、そのリソースでさらに多くのリソースを獲得するために何らかの設備投資を行います。
極端な例ですが、時間経過してもリソースが増えなかったり設備投資ができなかったら、それは放置系ゲームとは言えないこととなり、遊んだ人をがっかりさせてしまうかもしれません。
ということで、まずは選んだジャンルのテンプレやお約束、定番を抑えることが大切となります。

差別化をするために独自の要素でガンガン勝負したいと考えるかもしれません。ですが、それをするとテンプレから大きく外れてしまい、ユーザーを置いてけぼりにする可能性が高くなります。そのためテンプレを「70〜90%程度」入れ込んだ後で、"残りの部分に独自要素を少しだけ混ぜていく" 程度のやり方が、違和感を与えることなくプレイしてもらいやすくなります。

そして、自分だけの強みを身につける方法ですが、狙うジャンルを徹底的に分析することをオススメします。そしてそのジャンルを自分の言葉で長々と語れるぐらいになります。これが浅い理解だと、作っているうちに、テンプレやお約束を外してしまっていることに気がつかない危険性があります。深い理解の上でそのジャンルを作ると、遊ぶ人に「この人、ちゃんと分かって作っているな」と思わせることができ、ゲームとしての説得力が上がるのではないかと思います。

例えば「放置系ゲーム」の分析例です。

* 時間経過でリソースが増える、というルールが大前提
* RTSや経営シミュレーションのようなリソース管理の面白さの一部にフォーカスしたため、シンプルながらもやり込みがいのあるゲーム性となっている
* 操作はとてもシンプルで、たいてい戦闘はオートとなっている

私は放置系ゲームを作ったことがなく、それほど詳しくないのでこの程度の理解ですが、あるジャンルを極めたいのであれば、そのジャンルのいろんなゲームを分析するのが良いでしょう。
もしくは、色々なジャンルのゲームをあえて作らず、同じジャンルを繰り返し作って試行錯誤してみるのも良いかな、と思っています。特定のジャンルに集中投資することでそのジャンルを極め、一点突破できる可能性があるからです。

■3. 魅力的な殺し文句を決める

作るゲームは、その魅力を一言で説明できた方が良いです。というのも、配信してストアに並べる際、ゲームを説明するときに魅力的な説明を一言で書くことができれば、そのまま載せることも可能です。ですが、そうでなければ長々と説明を書かなければ魅力が伝えられず「何か難しそうなゲームだな」と避けられてしまうゲームになってしまいます。
要は “キャッチコピー” です。Twitterなどの SNS でプロモーションをする場合にも、短い言葉でアピールできれば、わかりやすいため拡散されやすいのではないかと思います。

また、キャッチコピーを書くと、そのゲームが売れるかどうかを判定する材料にもなります。キャッチコピーがありがちなものにしかならない場合、他との差別化ができておらず、話題になりにくい気がします。
例えばシューティングゲームを作っていて、「弾を撃って敵を倒すゲーム」という説明しか思いつかない場合、それはジャンルを説明しているだけなので、何も魅力がありません。

キャッチコピーが魅力的かどうかを判定する基準としては、

* シンプルでわかりやすいか?
* インパクトがあるか?
* 興味のある情報を提供しているか?

という点を確認します。

また「機能的ベネフィット」「感情的ベネフィット」は何か、ということも意識すると良いです。

▼機能的ベネフィットの例
* 遊ぶたびに変化があって何度でも楽しめる
* やり込み要素が盛りだくさん
* 空いた時間にお手軽に遊べる

機能的ベネフィットは、独自のゲームシステムバリエーションの多さなどにより、遊ぶ人に利益があることをアピールします。「30時間遊べる」「アイテム数が1000以上ある」「ステージ数は100以上」など、具体的な数値でのアピールがしやすいです。

▼感情的ベネフィットの例
* 画期的な映像表現、独特の世界観
* 衝撃的な展開のストーリー
* 魅力的なキャラクター
* インパクトのある絵を出すことができる (スクショ映えする)

感情的ベネフィットは遊ぶ人の心を動かす要素です。そのゲームを遊ぶことでどういった体験が得られるのかを言葉に落とし込みます。もしくはイメージボードという形やスクリーンショットで面白い絵になる、というアピールも有効かもしれません。

■4. ターゲットを考えたゲームを作る

ターゲットを狙う、ということは狙わないターゲットを捨てる、ということでもあります。例えば、カジュアルゲームを作る場合は、コアゲーマー層は捨てますし、コアゲーマー向けに作ったゲームは、カジュアル層を捨てています。
例えば、放置系ゲームであれば、ユーザーは基本的にシンプルな操作を求めています。そのため、面倒で複雑な操作を嫌うと推測できます。また放置しているとリソースが増えるのが、放置系ゲームの楽しさです。
そのため、リソースを得るために繰り返しミニゲームをプレイさせたり、リソースを増やす楽しさを味わえるのは2時間プレイした後、などとするのは、ターゲットに向いていない要素となり、離脱の原因となりそうです。
放置系ゲームを遊ぶターゲットのことを考えれば、簡単に自動化でリソースを獲得できるゲームシステムが基本となります。
複雑なゲームを作りたい場合は、別のジャンルを選ぶのが正解となりそうです。

■最後に

最後に、各要素間の整合性をチェックする質問をして、本当に差別化できているかを確認します。

* 戦場と強み:その強みと差別化は、あなたにしかできないことか?
* 資産と強み:あなたの強みは今後も継続して利用できるか? 利用できるようにしているか?
* 強みと顧客:あなたの強みは今後も継続して利用できるか? 利用できるようにしているか?
* 戦場と売り文句:その売り文句はあなたにしかできないものか?
* 顧客と売り文句:あなたのゲームを遊んでもらいたい人に訴求する言葉になっているか?
* 強みと売り文句:あなたのゲームを遊んでもらいたい人に訴求する言葉になっているか?

以上、マーケティング戦略のまとめでした。

■関連する記事

どんなゲームを作るかについて、もう少し具体的にまとめてみました。

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