ゲームの要素分析〜強制スクロール

今回は「強制スクロール」のシステムがゲームにもたらす効果を考えてみます。

■強制スクロールの定義

強制スクロールとは、「フラッピーバード」や「ラン&ジャンプ系」などで採用されているゲームシステムで、プレイヤーの意思とは関係なく画面がスクロール、それに合わせて画面外から新しい地形や敵、アイテムが出現します。

古くは「パックランド」「スーパーマリオブラザーズ」で採用されたシステムで、これらのゲームでは自動スクロールではなく、プレイヤーの移動に合わせて画面がスクロールしていました。ただ「後ろに戻ることができない」ので、これらも強制スクロールの一種として考えます。

そのため、プレイヤーが任意の方向に移動可能な「アトランティスの謎」や「ゼルダの伝説」などは強制スクロールに含めません。

また、一部ゲームでは、スクロールの末端にトゲなどの即死ギミックがあり、スクロール速度に追いつけないとミスと扱われるものもあります。

▼強制スクロールとは

* プレイヤーの意思とは関係なく画面がスクロールする
* スクロールにより画面からオブジェクトが消滅する。もしくは画面外から新たに出現する
* スクロールが自動の場合、追いつけないとミスとなることもある
* 自動強制スクロールの例:フラッピーバード
* 任意強制スクロールの例:スーパーマリオブラザーズ

■強制スクロールを導入するメリット

強制スクロールを採用するメリットは以下の通りです。

1. スクロール速度を上げることで難易度を上昇させることができる
2. ランダムでレベルが作られる場合、古いレベルがスクロールで流れることで乱数値が平均化してうまく調整できる可能性がある
3. 動きのあるステージとなる (スクロール全般に共通)
4. 画面外からオブジェクトが登場することで、退屈な状態を緩和できる(不確定情報の存在)

1はゲームの進行に合わせて難易度を上げる場合、スクロール速度を上げることで簡単に難易度を上げることができます。ただし上げすぎるとクリア不能なゲームバランスになってしまうので、限度はあります。

2はランダムで敵や地形が出現する場合、乱数の値によっては極端に難しい状況になることもあり得ます。ですが、スクロールでそれを流すことができれば、プレイヤーは次のスクロールまで持ちこたえれば良いことになり、全体としてみればゲームバランスが調整される可能性があります。

3は、スクロールゲーム全般に言えることですが、スクロールによりオブジェクトがダイナミックな動きとなるので、ゲームとしての見栄えが良くなります。

4は、1画面固定のゲームと比較するとよくわかります。例えば1画面固定の「バブルボブル」は画面内に存在する敵を全て倒すと先に進めるゲームですが、敵が少なくなると途端に難易度が下がり退屈になります。それを緩和するために敵の移動速度が上がるのですが、単調という印象は残ったままです。
これに対してスクロールゲームでは、常に画面外から敵が出てくる可能性があるので、一定の緊張感を保ったままゲームをプレイすることができます。
見えない部分を推測する面白さがありますし、1画面固定よりも大きなマップとなるので遊びの自由度が広がります。

■強制スクロールのデメリット

強制スクロールを採用するデメリットは以下の通りです。

1. プログラムが複雑になる
2. マップが広くなるのでデータ作成とレベルデザインの難易度が上がる
3. スクロール速度によってはゲームが成立しなくなる
4. じっくり考えるパズルゲームには不向き

1について、スクロールを実装するとスクリーン座標系とワールド座標系の2つの座標系が存在し、プログラムの実装コストがやや上がります。
もしスクロールの実装が面倒であれば、流れてくるオブジェクトの座標そのものを動かすようにして擬似的にスクロールを実装する方法もあります。ランダムで地形が生成されるようなゲームや縦スクロールのシューティングゲームであれば、背景だけがスクロールしてオブジェクトの座標はスクリーン座標で扱う、としてもたいていは問題ないはずです。

2について、スクロールは1画面よりもマップが広くなるので、データ作成の手間が大きくなります。特にサイドビューアクションの任意強制スクロール(スーパーマリオブラザーズなど)では、プレイヤーのアクションの難易度に起伏をつけるため、しっかりしたレベルを作成する必要があります。
フラッピーバードのようなランダム生成の地形であれば、データ作成は難しくないかもしれませんが、ランダムに生成した地形がちゃんとゲームとして成立しているバランスになっているかの調整がやや面倒です。

3は、自動強制スクロールの場合、スクロールが速すぎると画面外から登場するオブジェクトに反応できず、対処不能なゲームバランスとなってしまう可能性があります。
例としては、強制スクロールではありませんが「ソニック・ザ・ヘッジホック」は目が追いつかないほどの高速スクロールのアクションゲームとして一斉を風靡しましたが、そのため敵を視認して回避することが困難でした。
スクロール速度が上昇すると、レースゲームのように爽快感と緊張感が上がって面白いのですが、ゲームとして成立するためには「速度が上昇してもミスとなる要因を回避することが物理的に可能」という問題を解決する必要があります。

最後に、4についてですが、強制スクロールによりクリアに必要なオブジェクトが流されたり、考える時間が減らされてしまうため、じっくり考えるパズルゲームには不向きです。
ただ、落ち物パズルのようなアドリブでなんとかなるゲーム性であれば、強制スクロールを入れてみる余地はありそうです。

■採用ゲームの例

最後に強制スクロールを採用しているゲームをまとめておきます。

* フラッピーバード
* ラン&ジャンプ系
* ステージクリア型のサイドビューアクションゲーム
* ベルトスクロールアクション
* 一般的なシューティングゲーム

ここにない例のゲームに「強制スクロール」を加えてみると、新しいゲームが作れるかもしれません。例えば「片道勇者」はローグライクに強制スクロールを導入するという、それまでありそうでなかったゲームシステムとなっています。

■参考にした本

強制スクロールについての考察を参考にしました。この本では、ゲームの様々な要素について分析があり、とても参考になります。



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