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ゴーストレストラン(バーチャルレストラン)のFC加盟をするにあたって知らなければいけないこと

◎はじめに

 恐らくこちらの記事を見つけた方は、これからゴーストレストラン(バーチャルレストラン)を初めて開業しようと考えている方、もしくは過去に自分で開業してみたが、思っていたほどうまくいかなかったといった方なのではないかと思います。ここでは、ゴーストレストランのフランチャイズ(FC)加盟するにあたって、失敗しないための視点をお教えしようと思います。

1.イートインとオンラインデリバリーは別物である!

 まず最初に認識しなくてはいけないのは、『イートインとオンラインデリバリーでは戦い方が全く別物である。』という事。ここを認識していない方が非常に多いです。単純にこれまでイートインで提供してきた商品をパックに詰めて販売すれば、すぐにデリバリーが開始できると考えてしまいがちですが、それをやっただけでうまくいった方はほとんどいらっしゃらないでしょう。恐らくうまくいったという方がいらっしゃったとするとそれは、それ以前からテイクアウトにも対応をしていたファーストフード系業態の方くらいだと思います。しかしながら、そのファーストフード系の業態にも関わらず、うまくいっている所とそうでない所があるといったのが事実です。では、何がイートインとデリバリーでは違うのでしょうか?

①リアルとwebの立地の違い

 飲食店では立地8割とよく言われるようにいかに多くの人にお店を見つけてもらえるか?は最も重要な要素です。現状のデリバリーにおいては、webが主戦場となってきています。すなわちデリバリーにおいては、web上の好立地に出店できるか?が重要な要素だという事です。簡単にいうと自店舗のホームページを作ったとしても誰も見つけてくれませんよね?だから、人の集まるフードデリバリーアプリ上にお店を掲載しています。さらに、アプリ内においても如何にいい場所に表示させられるか?によって勝負が決まります。という事で、デリバリーにおいては、web上での戦い方と知らないと勝負にならないという事です。

②業態としてのライフステージの違い

 既存の外食事業はライフステージとしては、成熟期から衰退期にかかってきており、利用者の方のお店探しのスキルも高くなっています。一方でオンラインデリバリーは、ここ数年でできたばかり、多くの人にとってはコロナ禍で始めて使ったというような感じで、市場としては成長期、利用者も初心者という事でアプリの検索機能を駆使してお店を探すというよりも表示されているものの中からお店を探すといった方が大半です。また、ピザや寿司を除くとデリバリーブランドとして確立しているブランドも少ないです。すなわちチェーン店が出てくる前の外食市場と同じで、勝つチャンスはみんなにあるといった状態です。逆にいうとブランド名だけで勝つことが難しい状態でもあります。デリバリーにおいては、名だたるブランドでも売れていない所多いですよね。

③顧客が見えない

 イートインは、お客様がお店に来ていただけるので、自店舗の商品がどんな形で提供され、それを食べたお客様の反応も見て取れるので改善が進めやすいですが、デリバリーにおいては、どんな状態で届いているのか?食べた後の反応はどうだったのか?が全く見えません。その為に改善が進められないお店が多いです。逆に言うと顧客が見えるような仕組みを持たずに改善を図ることは難しいです。
 また、顧客が見えないことで従業員がお客様への感情移入がしずらいといった面もあります。それ故に同じお客様であるにも関わらず、
イートイン>デリバリー』といった形で重要度をつけてしまう事が多い。

2.うまくいかない理由は、大きくは3つ。

 基本的にうまくいかない理由は大きく3つあります。
 ①オペレーションの問題。
 ②商品力の問題
 ③集客力の問題

①オペレーションの問題

 通常のイートインでの業態でのオペレーションをベースにしているため、
・仕込み工数(時間)がかかる
・作業工数(時間)がかかる
→通常営業をしながら、平行作業ができるように設計がされていない。
 →結果、ピーク時にデリバリーオーダーが入るとお店が回らなくなり、注文を止めてしまう。
  →イートインの作業を阻害しないようなオペレーションの構築がされていることが必要

②商品力の問題

 イートインの商品は、出来上がったらすぐにお客様の所に届き、温かい状態で食べてもらう事ができます。しかしながら、デリバリーにおいては、調理後に配達員さんが来て、それをお客様のもとに届けた上で召し上がっていただく形になります。すなわち
・作成後一定時間経過後の品質が高くなくてはいけない。
 →パッケージ後に時間経過による品質の劣化を極限まで落とさなくてはいけない。
  →一定時間経過後をイメージした商品設計及び
   パッケージの設計・選定を行わなくてはいけない。

③集客力の問題

 実は、ここの部分が一番重要な要素となり、通常のイートインのFCと大きな差がとなる部分です。よく有名店がデリバリーに進出しているかと思いまが、成功していないお店を多々見かけますが、それはなぜでしょうか?

通常のイートインのブランドであれば、元の店舗の知名度が高ければ、それは集客力に直結します。もちろんデリバリーにおいても集客力に寄与することは間違いがないのですが、先ほど記載通り、有名店でも売れていないお店がほとんどです。

イートインでの集客は、ほぼ立地に依存します。すなわち店前にどれだけのお店のターゲットとなるようなお客様が通るか?が重要です。では、デリバリーにおいてはどうでしょうか?もちろんデリバリーのニーズのあるエリアに店舗がなければダメなのは一緒ですが、さらに必要なことがあります。そこで考えて欲しいのが、デリバリーにおいての店前はどこになるか?です。

 現状ではほとんどの方がデリバリーを注文する際にはデリバリーアプリから注文します。個店でのアプリを提供していないお店は、UberEatsや出前館といったフードデリバリーのアプリ上から注文してもらわなくてはいけません。という事は、デリバリーにおいての店前はアプリ上での店舗表示という事になります。当たり前のことなのですが、表示されなければどんなに有名であっても売れないんです。という事は、ここの表示されるような指導を本部がしてくれるか?そもそもそういったノウハウを本部が持っているか?が重要なポイントになります。

3.一般的にFC加盟する際に注意すること

 かつて私もFCの展開をお手伝いする会社で全国に2000店舗以上の出店を見てきました。その経験の中からデリバリーに限らず、イートインの業態においてもFCに加盟する際の注意点を記載したいと思います。

①投資回収が早いこと(ROI(投資回収率)が高い)

 以前よりもマーケットの環境が大きく変わる要素が非常に多くなってきています。恐らく来年どうなっているか?も正しく予測することが非常に難しくなっています。そんな環境下ではいかに早く投資回収をして、最悪事業をたためることが重要となります。既存店舗でおこぬ初期投資の小さいバーチャルレストランに関しては、ほぼここは心配しなくていいでしょう。
 一方で、イートインやテイクアウトを持たずに新規に物件を借りて、複数業態を導入してのゴーストレストランを検討している場合にはここに関してはかなりナーバスになった方がいいでしょう。

②直営が実績を出していること

 まずはベースとして直営店がしっかりと業績を上げてることが重要です。基本的にはFC店が直営店ほど徹底したオペレーションやサービスを行うことは難しいことが多いです。直営のノウハウが100だとすると加盟店にそれを伝えると80とかになってしまうことを考えると少なくとも直営店できちんとした実績が出ていることが重要です。逆に「ここが実績が出ていない=直営にノウハウがない」と言うことですので要注意です。過去の調子の良かった時の実績だけを表示していることがあるので、直近の実績をきちんと確認するようにしましょう。

③加盟店がある際はそちらでも実績が出ているか?

 こちらに関しては、全加盟店が実績が出ているということはほぼないと思います。大抵10から20%は不採算なお店が存在していることが多いです。出店立地や店舗の運営能力によってそれ位の確率で成功していないお店が存在しているというのが現実かと思います。ですから、最低限確認したいのはTOP20%くらいのお店がキチンと収益が出ているか?は確認して見るのがいいでしょう。
 中々そこまでの開示はしてもらえない事が多いと思いますので、その際は近隣のエリアで売れているお店があるかはチェックしましょう。加盟店で実績が出ていることが分かればある程度再現性がある事が証明されます。

④サポート体制がしっかりしているか?

 現在は外食・中食を取り巻く環境の変化が激しいです。当初は良かったとしても、環境変化によりその業績を維持することは難しくなっていきます。そもそも、その環境変化に自分で対応ができるくらいならば最初からフランチャイズに加盟しなくてもいいはずです。という事は、環境変化に対しての本部サポートがあるか?は重要な要素だと私は考えます。

 
一方で、ゴーストレストランの特徴としては、投資回収が早いといったメリットがあります。だから、ダメだったらすぐに閉店して次の違うコンセプトのお店に乗り換えるといったが可能なのも魅力の一つです。加盟店がこういった考え方で取り組むことは悪くないと思います。
 では、本部が同様の考え方だったら、どうでしょうか?『ダメだったら辞めちゃえばいいじゃん』といった本部に何かノウハウがあるでしょうか?あるとすると単純にそれらしいメニューを作成する事とその食材を販売する能力だけだと思います。そこに加盟する意味あるでしょうか?レシピサイトからレシピを引っ張ってきて、食材業者さんから自分で仕入れたのとさほど変わらないのではないでしょうか?
という事で、デリバリーにおいても重要なことが分かったかと思います。

ちなみに『本部のサポート体制がしっかりしている=事業の売上の分解ができており、管理指標が明確かつ、その改善手法も明確、さらにそれを加盟店に伝えてくれる担当が存在している(通常SVと言われる人)』という事です。
 SVが存在していたら大丈夫と思ってしまいがちですが、『事業の売上の分解ができており、管理指標が明確かつ、その改善手法も明確』といった部分が凄く重要です。これができる前提として、その管理指標をとる仕組みを持っていなくてはなりませんので、そこの部分を確認することで違いが見えてくるでしょう。

4.FC(フランチャイズ)加盟前のチェック項目

1.~3.を踏まえて加盟前のチェック項目を作ってみました。いくつかの候補先を下記の項目に基づいて〇△✕の3段階くらいで評価して比較するといいでしょう。

5.ゴーストレストランチェーン

 多店舗多業態展開しているゴーストレストランチェーンを上げておきます。自身で問い合わせて上記の表で比較してみるといいでしょう。自店舗のやっている業態によって、食材や厨房設備等の相性が変わってきますので、他店舗の話をうのみにせず、必ず自身でチェックを行うようにしましょう。

・バーチャルレストラン

・Globridge(ご近所キッチン)

・TGAL

・エフエフアルファ

・X kitchen

・Wiaas

・ゴーストレストラン研究所

・デリハック

https://delihack.jp/

6.追記 ゴーストレストランだけでの店舗をオープンする方への注意点

 先日、Twitterでゴーストレストラン単体で独立した方が失敗したと上げているのを見かけたのですが、失敗の要因は取り組む前にあると思いましたので、同様なことが起きないように追記に入れました。既存のイートイン店舗にゴーストレストランを追加する場合とゴーストレストランのみで出店する場合は初期投資や人件費が大きく変わるので、通常以上に注意が必要です。

新たに店舗を借りて設備を整えていくといった事もあるので、初期投資と月次のPLが大幅に変わってきます。プラスオンでかかる費用としては

【初期投資系】
 ・物件取得費
 ・工事期間中の家賃
 ・厨房設備費
 ・人材採用費(既存人材がいないので採用が必要)

【ランニング費用】
 ・人件費(イートイン営業と併用の場合は既存人材を活用なので0円)
 ・家賃(イートイン営業との併用の場合は支払済みなので0円)

となります。ここを見てもらうだけでも経営する際の難易度が違う事に気が付いてもらえるかと思います。ゴーストレストラン単体での運営はかなり事前の計画を綿密に練らないと失敗する確率が非常に高くなります。

特にランニング費用の部分は、PLに直接跳ね返ってきます。仮に2人で運営するとして一人あたりいろいろな費用込みで人件費が35万円だとすると、
 35万円×2=70万円
となります。家賃が仮に10万として合計で80万円となりますので、単純に既存イートインにプラスオンで乗せた場合と利益で80万円違ってくるという事です。さらに初期投資の減価償却も考えなくてはいけませんので、その分もさらに利益を圧迫するといった形になります。

上記の例で簡単なシミュレーションをしてみたいと思います。数値は全部税込みで考えています。条件としては、
・居抜きorシェアキッチン(必要な厨房機器が既にそろっている)
・家賃は10万円
・平均原価は30%
・FCに加盟したとしてロイヤルティーが10%
・人件費(交通費等も込々で) 2人で70万円
・水道光熱費 3%
・雑費 1万円
・物件取得費 
 契約手数料 家賃×2ヶ月 20万円
 工事期間の家賃 10万円 

として損益分岐点を計算してみると下記のようになります。
上記の条件ですと470万円くらいで損益分岐点に乗るといった状況です。
本来は、さらに初期投資がかかった分を考えるならこれ以上必要となります。もちろん固定費を下げて損益分岐点を下げることはできますが、削れる要素としては人件費くらいになります。しかも初期投資の償却を入れないでこの状態です。

注意して欲しいのは純粋なゴーストレストランを行う際にはこの『損益分岐点を大幅に越えられるだけの業態や業態数を集めておかなくてはいけない』という事です。競合数が増えている今、1業態で200万円以上売る業態は非常に稀です。また、仮に1業態で売れていたとしても、継続的に運営をしていくことを考えるとその業態がダメになったら、一気に売上がなくなってしまう可能性が高くなるので、ポートフォリオ的にも複数業態を運営しておいた方がいいでしょう。(季節変動や時間帯の変動もありますので)

という事で、ゴーストレストランのみでの出店を考えている方は、事前に収益シミュレーションを綿密に計算しておくことを忘れないようにしましょう。このあたりを加盟時に本部に相談したときに、キチンと上記のような収益シミュレーションを算出し、リスクについて教えてくれない所は信用がならないと思った方がいいです。加盟店さんが継続して儲かるといった視点が抜け落ちているとしか思えません。

上記の事例でもシレっと損益分岐点は470万で2人で運営としていますが、本当に2人で運営できるのか?営業時間や時間帯別の予想オーダー数も加味し、シミュレーションしておかないと非常に危ないです。
また、加盟するブランドだけでの構成では上記のようなPLになってしまうので、自社開発のロイヤルティーの取られない業態の構築も必須だと個人的には思いますので、初心者は絶対にやらない方がいいと思います。


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