見出し画像

飲食店で自業態がデリバリーに適していないとお悩みの方へ

0.結論

私なりの結論としては、
自業態がデリバリーに適していない場合は、以下の順番で考える。
①まずは、他社の開発した売上上乗せ型のデリバリーFCを導入する
②そこで売上の上がるデリバリーとはどういうものなのか?と理解した上で自社業態を開発する

・他社のデリバリーを検討する際に一番注意しなくていけないのは、
イートインとの併用がキチンとできるか?』の部分。

利益率とかをつい見てしまうのですが、それは売上が立った上でのことでしかない。売上が立たなければ意味がないので、まずはきちんと運用されるものを導入していくことが重要だと思います。

『利益率が高い=原価が低い=加工度が低い』といったケースが多く、その後の仕込みや調理の工数が多いために結果現場での運用が難しい、もしくは提供時間の遅れや品質のバラツキが生じ、顧客評価が落ちる⇒デリバリーアプリからの評価が落ちる⇒アプリ上で表示されなくなる⇒売上が立たないといった負の循環に陥ることが多く、加盟してもうまくいっていないケースの原因は、ほとんどはココになるかと個人的には思っています。

・外部の業態に取り組み、ある程度デリバリーのノウハウを得た後に自社業態の開発に取り組んだ方が効率的でしょう。イートインとデリバリーは全くの別業態である意味新規マーケットへの参入です。失敗率の高さを考えるとまずは他社の真似から入るのが成功確率が高いでしょう。

上記結論の背景を下記に記載しています。

1.初めに

 先日、株式会社ユニワークさんの行ったアンケートで『デリバリーを導入、検討する上でネックとなるものは何ですか? 』とデリバリーを導入していない企業さんへ質問したところ下記のような結果が出ていました。(詳細は下記のプレス配信をご参照ください。)

人出不足や利益率の低さが一番の課題かと思っていたのですが、約半数の方が『お店の業種・業態に適していない』と答えていました。(下図参照)

デリバリーを導入、検討する上でネックとなるものは何ですか? デリバリーをやっていないとお答えの方にお伺いします。 (n=242)

という事で、自店舗の業態がデリバリーと相性が良くない場合の選択肢について考えていきたいと思います。

2.デリバリーとの相性が悪い業態

では、どんな業態がデリバリーとの相性が悪いのでしょうか?

①そもそもデリバリーするシーンで食べられることが少ない
②デリバリー時に品質劣化が大きい商品

上記2つに該当する業態や商品は、デリバリーとの相性は良くないと言えるかもしれません。ただ、一方では競合も少なく改善さえできればチャンスのある業態とも言えます。(①に該当してしまう業態においては、利用シーンの喚起も必要になって来るので短期的に売上を上げることは難しいと言えるでしょう。)

①そもそもデリバリーするシーンで食べられることが少ない

 現状のデリバリーの使うシーンは、大きく分けると2つ 
 ・個人の日常食
  一人or二人での通常の食事シーン(UberEatsの浸透によって拡大した)
  注文単価は低いが、発生頻度が多い。
 ・複数人数でのハレのシーン
  家族での記念日、来客、パーティー(旧来からあるデリバリーシーン)
  注文単価は高いが、発生頻度が少ない。

 もちろんこれ以外にも使われるシーンはあるのですが、商圏範囲のあるデリバリーにおいては、主軸となる上記のどちらかのシーンをしっかりと取りこんでいく必要があります。上記のシーンで食べられることの少ない商品は短期的には売上を大きく立てることは難しいでしょう。

②デリバリー時に品質劣化が大きい商品

 次にデリバリーとの相性が悪いものとしては、経時劣化の大きい商品です。調理後すぐに食べていただけるイートインとの大きな差は、調理後から食べていただくまでに最低でも15分、長ければ30分近く時間がたってしまう という事です。
温度が冷める事(or冷たいものがぬるくなる)による
 ・味の変化
 ・食感の変化
 ・見た目(色)の変化
が大きいものは、お客様の期待値を下回りやすく評価が安定しない為、あまり向いていません。特に肉系は火が入りすぎたり、もしくは温度低下によって肉が固くなるといった事が起きやすいため厚切りのモノとかは注意が必要になります。

上記2点に該当する業態や商品をメインで扱っている方は、そのままでのデリバリー参入はなかなか厳しいといえるでしょう。

3.自社業態、商品がデリバリーに適していない場合の対応

大きくは下記2パターンしかないと思います。

①新規にデリバリー用の業態を作る
②既存業態に上乗せ型のデリバリーFCを導入する


それぞれについて考えていきたいと思います。

①新規にデリバリー用の業態を作る

 既存の業態がデリバリーに適合していないため、別途デリバリーに適合した業態を作るといった発想です。この場合のメリットとデメリットを記載します。

メリット :
 ・自社業態の為、利益率は比較的高くなる
 ・自社ですべてをコントロールできる

デメリット :
 ・業態作成に時間とコストがかかる
 ・業態ができてから、実際に売れるか?の検証も必要
 ・イートインとは違う集客ロジックの為、全くの新事業への参入に近く、 ノウハウの構築に時間がかかる可能性が高い。

やはり自社で作ることができれば一番ベストなのですが、恐らく私の知る限りでは、うまくいった人は5%もいないといった感じです。これは、様々な要因があるのですが、一番はイートインとは全くの別業態と考えて作らなくてはいけないのですが、どうしてもデリバリーのノウハウがないため、イートインと同じ感覚での業態開発になってしまうからです。結果、商品もオペレーションもデリバリー向きに仕上がらない。という事が起きやすいです。

基本的にこれまでのイートインとは別物の新規マーケットへの参入だと認識し、成功確率が低いと思って取り組む必要があります。

②既存業態に上乗せ型のデリバリーFCを導入する

 こちらは、自社での開発はせずに他社の業態を入れてしまうといった発想です。こちらのメリットとデメリットも記載していきます。基本的にはいきなり①に取り組んでも成功確率がかなり低くなるため、この②から取り組んだ方が失敗は少ないと思います。

メリット :
 ・既に実績が出ている業態を導入することができる
  (開発のコストと時間の削減)

デメリット:
 ・利益率が低くなる(ロイヤルティー等によって)
 ・業態のカスタマイズは基本できない

注意点としては色々なFCがありますが、モデルがそれぞれ違いますのでお店の実情に合わせたものを選ぶという事です。
実際に既存のイートインと並行してオペレーションをするという事を考えると仕込みや調理工数がかなりライトでないと難しいです。モデル原価率が低くても、素材で材料が入り、その後に仕込みや加工が生じるようなモデルだと一見利益率が高くていいように見えますが、現場での運用にハードルがでて、結果売上が上がらないという事が起きます。原価率が多少高くとも、現場負担が小さく運用が普通に行えるようなモデルの方が結果売上も取れ最終の利益額が大きくなることが多いです。
特に既存の人材を使ってとなると教育や習熟に時間がかかるのは現実的ではありません。トータルで見て判断すべきでしょう。

また、その先にある自社の業態開発に活かすためのノウハウ獲得を目的とするならば、その欲しいノウハウの一番は継続的に売上が立つといった部分だという事を忘れてはいけません。つまり自分たちが継続的に売上を上げることが出来て、初めて獲得できるという事ですから、先に書いたようにイートインと並行して継続的に売上を上げていかないと得られないものと言えるでしょう。

4.他社のデリバリーFCを導入したのにもうまくいっていない理由

3.までの結論として、まずは他社のデリバリーFCを導入した方がいいという事が言えるかと思いますが、一方でデリバリーFCに加盟したのにうまくいっていない人たちが多いのも事実だと思います。

今後、加盟を検討するにあたって重要な部分になるのでその理由についても記載していきたいと思います。

①加盟店側の問題

まずは、加盟店側でおこる問題点について記載していきます。

・決められた通りの商品品質の提供や正しい運営ができていない。
→私が見ている限りでは、こういった店舗の割合はかなり多いのも事実です。

一方で、キチンと上記の事を守ろうとしているのにも関わらず、実施できていないといったケースもあります。
これは、どういう事かというと当初店舗側が想定したよりもオペレーションの負担が重いといったケースです。仕込みやオペレーションが軽いといった打ち出しをしているFCが多いですが、デリバリーを専門として運営しているお店が思うオペレーションの軽さとイートインの店舗を運営しながら、デリバリーを平行して行うお店ではオペレーションの重さの感じ方が違うという事です。
本部側は簡単というのですが、イートインの業態を運営しながら行うと小さな手間の積み重ねで意外と負担がかかり、結果商品質が悪くなったり、提供時間が遅くなるといった事が起きます。という事でイートインと変更して、デリバリーを導入する場合には、仕込みはじめ、調理オペレーションが本当にイートインと並行して行う事が出来るのか?は確認する必要があります。
前の章でも書きましたが、一見原価が安くても加工度の低いものはオペレーション負担や人件費、ピーク時の生産能力まで加味すると結果安くないといったパターンが多いです。

②本部の問題

先ほどは加盟店側の問題書きましたが、本部側の問題ももちろんあります。下記のようなケースがあり得るので、加盟前にキチンをチェックをするようにしましょう。

・①と被りますが、イートインを加味したオペレーション設計がされていない
・本部が運営ノウハウを持っていない。売上改善ノウハウがないので業態を入れ替える事しか出来ない
・マーケットの変化が早いにも関わらず、それに適応した施策をたてられない。
・マーケットの変化に対応したノウハウを獲得していたとしても、それが加盟店にフィードバックされない

ある意味、業態を簡単に変えられるのがゴーストレストランの魅力ではあるのですが、あまりにも頻繁な入れ替えは店舗側の負担が大きくなります。食材の管理・発注やオペレーション教育などが都度発生し、現場は混乱します。結局は、導入した業態が安定的に売上が立つことが一番高収益になりますので、業態と本部のサポート体制はきちんと確認したうえで検討するようにした方がいいでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?