『人は話し方が9割』

 人とコミュニケーションを取るうえで理解しておくべき三大原則がある。
まず一つ目は「人は誰もが自分のことが一番大切であり、自分に一番興味がある生き物である
 集合写真を見るとき、まず最初に見る人物は誰か。それは自分自身である。自分がきれいに写っていれば他の人が多少事故っていても否応なしにSNSに投稿する女子が良い例であろう。
 二つ目は「本来、誰もが自分のことを理解してほしいし、自分のことをわかってほしいと熱望している
 三つ目は「人は自分のことをわかってくれる人を好きになる
 この三大原則を前提として如何にコミュニケーションを取るかが重要となる。

 上記の三大原則と関連してアップル創業者のスティーブ・ジョブスの言葉を紹介したい。スティーブ・ジョブスは「美しい女性を口説こうと思ったとき、ライバルの男がバラを10本送ったら、君は15本のバラを贈るかい? そう思った時点で君の負けだ。ライバルが何をしようと関係ない。その女性が本当に何を望んでいるのかを見極めることが重要なんだ。」と言った。
 ここでスティーブ・ジョブスが言いたいのは、恋愛の象徴とされるバラを贈るよりも三大原則の一つである「人は自分のことをわかってくれる人を好きになる」ことから思考停止でバラを贈るのではなく相手のことを理解しようと努めることが大事であるいうこと。今後、自分も誰かに言いたい。

 三大原則を理解した上でどのようにコミュニケーションを取っていくか。その際に使えるテクニックが「拡張話法」と「表情」である。まず拡張話法について説明する。この拡張話法には順番がある。感嘆→反復→共感→称賛→質問の順となる。以下各々について説明する。
①感嘆:相手の話を聞いたときに受ける感銘の表現
 「!」、「?」、「♡」を自分の言葉の終わりにつけるように意識する。次に「ー」。感嘆詞を伸ばすことである。口に出すとわかりやすいが「そうなんですね」と「そうなんですねー」では「ー」の部分に感情を乗せることができる。
②反復:相手の話を繰り返す
 自分を含め自称進学校出身にありがちなことであるが、相手の話を聞いているときに話の先を推測し自己解釈することが多々ある。(例:「〇〇ってことがあって…」『あ~ってことは××ってことか』)
 これは自己解釈が合致している分には問題はないものの、もし相違している場合には訂正をするためにどうしても会話がワンテンポ遅れてしまう。さらに話途中で訂正をする必要が出てくるために相手に気持ちよく話してもらえなくなる可能性がある。それに対して、反復は相手の話を繰り返すものであるため、相違のしようがない。訂正による時間のロスもなく気持ちよく話してもらえる。
③共感:相手の話に感情を込めて理解を示す
 相手の話に深く頷き、相手と同じ表情をしながら、時に勢いよく、時に静かに言う。
④称賛:相手を評価する
 「すごい!」「素敵♡」「さすがだね♪」など言葉にマークをつけるイメージで言う。
⑤質問:相手の話を中心に展開させていくためにその後を追いかけて聞く
 いいタイミングで良い質問が入ると相手の話はドライブがかかっていく。三大原則の一つである「本来、誰もが自分のことを理解してほしいし、自分のことをわかってほしいと熱望している」から相手のことを理解しようと質問をすることが潤滑なコミュニケーションに繋がる。 
 これらの拡張話法を使う最大の目的は相手の話を「広げる」こと。人は自分のことを知ってほしい生き物であるため、「うまく話せたな」「気持ちよく話せたな」と思わせることがポイントとなる。

 次に使うテクニックは「表情」である。一般的に表情といわれると「喜怒哀楽」などの顔の表情が思い浮かぶものであるが、本書で言われる表情は「顔の表情」「声の表情」「体全体の表情」である。これらを駆使することで相手に「この人は私に興味がある」と効果的に思わせることができる。
 具体的には「笑顔で聞き、自分の言葉に感情を乗せ、身振り手振りを使って相手にリアクションする」のが基本となる。私自身、表情を出すのが苦手であり、真剣に相槌を打っているつもりでも話を聞いていないと思われることがある。特に、声の表情を示すのが苦手なのでまずはこの1ヶ月、声に表情をつけるように意識してみたい。

 これは私自身の体験であるが、友人から仕事に関する相談をされ、「手助けになれば」という思いから様々なアドバイスや解決法を伝えたことがあった。しかし友人は具体的なアドバイスなどは求めていなかったようで「ただ話を聞いてほしかった」という返答であった。私が人に悩みを相談するときには、その人なりのアドバイスを求めて相談をしているため、この友人の返答には大きな衝撃を受けた。本書で「悩んでいる人にはポジティブアドバイスはいらない」と述べられており、その友人の経験を思い出した。
 相談するときはメンタル的にネガティブになっていることが多く、そこでポジティブなアドバイスや解決策を提示しても「それはわかってる」「説教されてる」などと思わしかねない。そのため、相談事を受けた際にはまず相手の気持ちに寄り添い共感をする。もしアドバイスを求めている場合は、あくまでも客観的に、かつ謙虚にアドバイスをすることが重要である。
 しかしやはり、関係の深い相手になればなるほど、誤りを指摘する必要が出てくる。これも私の経験であるが、女友達に恋愛の相談をされ、明らかに本人も悪い部分があったが相手が8割方悪いというように話していた。まだ本書を読んでいなかった私は「被害者面するな」と思い、「被害者面するな」と心の中で思ったことを一言一句違わずに言ってしまった。もうその女友達は私に相談しないことを心に決めただろう。今となってはすごく申し訳ない。
 正論は相手の逃げ場を塞いで追い込んでしまうことがある。正論はストレートではなく変化球で伝える。正論だからこそ、真正面から言わない配慮が必要である。相手の誤りを指摘する時、「自分も同じような経験があってさ、そのときに先輩に〇〇だよと言われたよ」と架空の体験談を作ることで自分へ指摘されているとは思わずに、素直に耳を傾けてくれるのである。相手への配慮が、「嘘も方便」となり、正論を変化球で伝えることができる。
 













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