経営に役立つ和辻哲郎
こんにちは。
ビッグな経営者になりたいですねーーー!
日本の高度経済成長を支えた偉大な経営者たちは、哲学的な目線においても、卓越していました。
ビッグな経営者になるために、彼らを見習い、ビジネスのかたわら、勉強も欠かさないようにしたいです。
今回取り上げる和辻哲郎は、20世紀前半の日本で活躍した哲学者です。
彼の「人間の学としての倫理学」に、ビジネスに役立つ極めて重要な要素が入っていたので、ご紹介したいと思います。
何のためにビジネスをしているの?
経営者としての理念は?
と聞かれた時の答えがグッと豊かになるはずです。
何のためにビジネスをするの?
君は、どんなビジネスをして、何を達成して、どうしたいの?
この質問に心から自信を持って答えることは、あまり簡単ではありませんよね。
僕は、経営者の作法として、一応ビシっと応えるのですが、後から色々と考えるうちに、だんだん自信がなくなり、不安になってきてしまうことがあります。
先輩経営者は、そんな風にぶれてしまう原因は、自分が本当にやりたいことにしっかり向き合えてないからだよ、と教えてくださいました。
そこで、僕はもっと掘り下げて考えることにしました。
僕は、何のために生きるのだろう?
いや、そもそも人間って何のために生きるの?
と。
もっと難しくなってしまいました。
しかし、この質問については、救世主がいました。
哲学です。
哲学において、人間の目的とは、人間としてのあるべき姿になることです。
人間としてのあるべき姿を把握して、それを自分を含む少しでも多くの人が実現できるようにするためにビジネスをする、という風に考えれば、哲学を経営に活かすことができますよね。
では、あるべき姿とは何か?
和辻哲郎は、「人間の学としての倫理学」において、様々な西洋哲学を総括した上で、このようにまとめていました。
人間のあるべき姿とは
①個別性
②多数性
③総体性
を同時に持つことである、と。
???
ですよね。
詳しくご説明します。
個別性とは?
個別性とは、個性のことです。
唯一無二の、自分だけのものを認識しているということです。
同じ家族、同じ地域、同じ学校、同じ会社、同じ国に住んではいても、その環境に属する他人とは違う、自分だけのものを持っている、と自覚していれば、それが個別性です。
人間の尊厳は、自分自身が唯一無二であると信じられるところからスタートします。
多数性とは?
多数性とは、文字通り、大勢の人と関わるということです。
人間は、たった一人では生きていけません。
たった一人で生きている時、その人は、人間としてのあるべき姿から外れています。
孤立せず、少人数に閉じず、大勢の人と関わっている状態、それこそが、多数性です。
人間は何よりもまず、社会的な動物です。
総体性とは?
総体性とは、自分を含む多数の人間が、一つの総体としてまとまっている、ということです。
例えば、会社には色々な人がいますが、単なる集まりではありません。
大勢の人は、法人の構成員であり、それを総括して「〇〇会社」としてまとまっています。
「私は、〇〇の一員として、仲間とともに〇〇を目指しています!」と言い切れる人間は、一匹狼よりもカッコいいですよね。
この時、人間は根源的な孤独を乗り越えています。
数学的なアナロジー
以上の3つの要素は、数学的なアナロジーからも簡単に掴むことができます。
理系の方に、ピンと来やすい例えだと思ったので、紹介させていただきます。
無限級数として、初項2分の1、公比2分の1の無限等比級数を想定します。
一つ一つの項が存在している、ということが個別性です。
次に、そういった項が多数存在している、ということが多数性です。
にもかかわらず、この等比級数の和は無限に増加して発散する訳ではありません。1にきちんと収束します。
これが総体性です。
ビジネスの目的
さて、人間の本来の姿は、個別性、多数性、総体性を同時に持つということでした。
唯一無二でありながら、社会的であり、大きな目的のために生きている、ということです。
ビジネスを、人間として成長するため、人間本来の姿として生きていくための手段として考えてみましょう。
そうすると、ビジネスの目的は、ビジネスに参加する人の、個別性、多数性、総体性を実現することです。
ビジネスは、まず、メンバーが自分を唯一無二の存在であると感じられるようにするものでなければなりません。個性を殺すことを求めたり、道具のように働くことを求めた時、個別性は失われます。
また、ビジネスは、大勢の人を巻き込んでいくものでなければなりません。一人や少人数で起こせるビジネスは確かにありますが、多数性を身につけるためには、大勢の人を巻き込んでいくことが必要になります。
最後に、ビジネスは、大きな目標・シンボルの元に、大勢の人をまとめるものでなければなりません。部署がバラバラで、他の人たちが何をやっているか分からず、自分の部署のことばかり考えて会社全体のことはどうでもいいと思っているようでは、総体性は失われています。
このような条件を満たすビジネスが、経済的に必ずしも最も合理的かどうかはわかりません。
しかし、個別性、多数性、総体性を兼ね備えたビジネスをできたら、その時、経営者も社員も、「おれ、ビジネスはもちろん、人間としても満たされてるなー」と感じられるはずです。
まとめ
以上を踏まえれば、こういうテンプレートができそうです。
「当社の社訓は、人間的な成長です。人間は、自分のことを大切に感じ、広く社会と繋がり、大きな使命感の元に団結することで、充実感を持って生きられます。そのために一丸となって、日々の仕事に取り組んでまいります。」
昭和っぽいですが、本質的な気がします。
いつの日か、「会社は、人を育てる場所です。そのためには、社員一人一人が自分の大切さを実感できる場所にしないといけません。同時に、大勢の社員同士が、一つの旗の元に集った仲間、家族だと思い合えることが是非とも重要です。人として成長できるからこそ、優秀な方が集まり、会社も成長できるのです。」などと、松下幸之助風の言葉を言ってみたいーーーー!と思いました。
お読みいただき、ありがとうございました。
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