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大学生は水商売するな

学部時代を早稲田で、国立の院で修士号をとったA子は、学生時代にビールの売り子をしていた。明治神宮球場ではない、もっとローカルなところで、おのののかのようなギラギラした子はいない環境。
彼女はビールの売り子エピソードをガクチカにして就職活動を無双した。おじさんは元ビールの売り子が会社に入ってくるのはとても好むし、コミュニケーション能力、おじさんをあしらう力もついている。そもそもA子はビジュアルがいい。ビールの売り子に受かったというお墨付き。

そんなA子、最近酒を飲むと泣きながらこういう。
「私って醜い人間だ。汚い。こんなんで彼氏ができるわけがない」
聞けば、A子はビールの売り子時代に常連さんを複数人作り、「メールアドレスを教えて」と言われたら「100杯買ってくれたらね!」といって売り上げを上げていたそうだ。
A子は言う。「私がビールを注いで手渡すと同時に、そのおじさんは通路にビールを捨てる。それを100回やって、メールアドレスを渡した。そこからも常連になって何回も購入してくれるし、球場にくる日はメールしてくれるからその日の売り上げは担保されるって安心する。でも、私は環境破壊もしてたり、自分の性を売ってたも同然だ」
私は「ビールの売り子は水商売じゃないよ」と言うけど、A子は「自分の女性性を売って普通に手にしがたい金を手に入れるという意味ではほとんど一緒だよ」と言う。
ちょっと結論が早すぎはしないかと思うけど、このような声を最近はたくさん聞くようになった。

学生インターンのときに仲良くなったB子は、京都で有名な大学に通っていて、祇園のスナックでバイトをしていた。確かに妖艶な顔をしていて、それだけでおじさんからお酒を何杯でも卸せると思った。B子は頭が良かったので、「お酒が飲めないキャラをやってる。ソフドリでニコニコしているだけで高時給稼げるから割がいい」といっていた。
B子は30近くなって、婚約者に振られた。B子は夜の世界で培った金銭感覚を現在も引きずっており、結婚指輪や結婚式にも普通の会社員だったら無理なような「特別」を求めた。婚約者も、超絶一流エリートのコンサル勤めだったけど、それも尻尾を丸めて逃げ出したのは、単純にお金が払えなかったのではなく、「この人と生涯を生きるイメージがつかない」ということなんだろう。

現在仲がいいC子は、学生時代に自主映画を撮っていて、機材代がなくて休みの日はホステスとして働いていた。彼女は超有名なTV局に新卒入社したが、一緒に旅行に行ってお酒を飲むと、ホステス時代に客から「お前みたいなブスがいていい場所じゃねえんだよ」と言って酒をかけられたエピソードを泣きながら話す。
そして、TV局に入社できたことにも自信が持てず「私は男のあしらいがうまいのを見そめられただけだよ」「結局ホステス時代に培ったじさんの対処法を活かすだけの仕事だよ」と残念そうに話す。私は彼女のスピーチ力やアイデアはすごいと思ってるけど、本人は「女である身体」にしか価値がないと思い込んでいる。

みんな口を揃えて「私の過去は汚い」という。
そして、社会人になってからは「こんな飲み会で時給が発生しないなんて!」と病み、「だったら水商売の方がマシなんじゃないのか」とフッと頭に上がってしまうという。
そして、みんなが共通して言うのは「私は最悪働けなくなってしまったら、場末のホステスになるんだろうな……そんな可能性を微塵も感じない貴方が羨ましいよ」ということである。

人よりも数千円高い時給を稼げるけど、生涯的に見たらコスパはかなり悪い。一生涯付き纏う「私は汚い」という罪悪感と、曲がった価値観、そして将来の選択肢。
やはり、大学生は水商売をしないで、地道に稼いだ方がいいと思う。

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