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【童話】奇跡の泉(二、三 1,176字)

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    二

 それからトムはおじいさんと仲良くなって、色々な話をしました。おじいさんは二年まえに目の病気で失明して、それ以来流浪の民となったと言って、自らを嘲笑あざわらうように悲しく笑いました。そこでトムはきのう見た夢の話をすると、
 「その泉が本当にあるかのう。目が良くなれば、又仕事が出来るのだが」おじいさんはすぐには信じられぬようですが、トムはこの弱りきった友だちを救いたい気持で一杯でした。
 「ぼくと一緒に、確かめに行きましょう。夢で見たのとそっくりの森が、家のちかくにあるのです」
 「そうか。ではそれを一縷いちるの望みとして、泉をさがしに行こう」
 おじいさんはゆっくり腰をあげました。そして二人は、トムの近所の不気味な森に入って行きました。

    三

 杖をついて歩くおじいさんが転ばないように、トムは細心の注意を払いました。途中で二人でアケビを食べて、ひと休みしてから森の奥に入りました。深い霧が立ちめていて、あたりは寒くなり始めました。やがて二人は寒さを感じ、足取りも重くなりました。
 すると、昨日見た夢と同じように木々の間か、陽が射すように光がのびているのを見つけたトムは、
 「もうすぐですよ」とおじいさんに声をかけました。「うむ。それは良かった」とおじいさんはホッとした様子で応えました。
 夢のとおりに木々の間を抜けていくと、本当にあの泉がありました。泉は眩しい黄金色の光を放っていました。
 「マリア様、お待たせしました」とトムは大きな声で呼びかけると、辺りは強い光に包まれて、やがてマリア様が現れました。
 「では、あなたの友だちを助けてあげましょう」マリア様はそう言うと、泉の水をすくい取り、おじいさんの両目に一滴ずつ、泉の水を垂らしました。
 「おお、目が見える! 見えるぞ!」おじいさんはそう言うと、マリア様のまえにぬかづいて、何べんもお礼を言いました。
 「さて、トムよ、あなたの心やさしさには、私も心を打たれました。これを受け取ってください」
 それは、大層立派な銀のロザリオでした。トムは喜んで言いました。
 「マリア様。大切にいたします。ありがとうございました」トムにつづいて、おじいさんもお礼を言いました。「まさかこんなことが起きようとは。本当にありがとうございます」
 マリア様は美しくほほ笑むと、再び強い光を放ち、そこから居なくなりました。泉の水はもう輝かなくなりました。
 二人は泉を出ると、あれ程深く立ちめていた霧がうそのように晴れていました。
 「これでまた、頑張れそうに思うわい」おじいさんはにこにこしてそう言うと、トムは「おじいさんを助けられてよかった。さあ帰りましょう」
 そうして二人は森を出て、また会う約束をして別々に歩いて行きました。(完)


(2024.4.25)

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