【散文】楽しみ

 九月の風が、僕の悲歎ひたんを運んで行く。もう悲しまないでいいようにと、九月の風は、彼なりのやさしさで、僕を慰める。
 僕は、また甘いソネットを書いた。そうしなくては、僕は僕を保てないらしかった。言語を美しい形に研いで、それをソネットという定型のなかに押し込める。それが、僕の楽しみの極みであり、一番リラックスできることなのだ。定型に、とらわれているようで僕はそうすることでかえって自由になる。とらわれているようで、そうでないということはままあることだ。ちくしょう! 残念だけどそれをうまくは説明できない。僕は詩人であって、哲学者ではないから、自分の言動には自信がないんだ…。

 燦々さんさんたる光のなかに秋の憂いを秘めた九月の陽光が、私の部屋中にひびいている。散文を書くという慣れないことをしたせいで、頭がくらくらする。今すぐアブサンを飲んで、ピースを吸ってひと息つかないといけない。
 また新しいソネットを書くのが今の楽しみだ。あなたの楽しみは何であるか? 詩でも小説でも、はたまたゲームでも何でもいいが、楽しみだけは手放してはいけない。楽しみを手放したら、鳥が空を飛ぶことを失うことと同じだ。楽しみとは自由そのものだから…。


(2023.9.27)

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