第16回 1929年10月24日ー暗黒の木曜日
「株を買えば莫大な利益がある」-一時期確かにそうだったようです。庶民までが投機熱に浮かれていました。
しかし物の過剰生産により、少しずつですが経済は傾きかけていました。「過ぎたるは及ばざるがごとし」-食べ過ぎたらお腹をこわします。面白い様に売れたので過剰生産を続けてきた訳ですが、さすがに飽和状態になって余ってきました。
それを見抜いていたプロの投資家は少しずつ株を売って保身に回っていました。
そしてこの10月24日御前10時半頃、ある自動車大企業の株が大量に売られました。それを見て11時には我も我もと5千人ほどが押しかけ大量に売られるのが続きました。株は当然大暴落しました。この日だけで絶望し、自殺した投資家が11人いたそうです。
一進一退を続けながら、結局1週間で300億ドルが消えたといいます。
これは多くの会社の倒産をもたらし、会社に貸し付けた金が回収できなかった銀行も倒産します。それを見て、自分の金だけは確保したい人々が殺到して余計に銀行が倒産するという悪循環となりました。
その年に就任したばかりのフーバー大統領は「産業革命以来10年に一度恐慌はあった。やがて元に戻る」と当時主流であった自由放任経済策を取ってつまりは無策でした。しかしこれは甘く、事態はひどくなり、失業者は4人に一人という深刻な状態となりました。
世界の事実上の中心であるアメリカの恐慌はすぐソ連を除く世界中に広まり、世界大恐慌となりました。大量に植民地を持つ英仏はブロック経済を取って他国の製品を締め出し自国だけの利益を守ろうとしました。
やっと復興しかけたドイツからはアメリカが資本を引き揚げ、また大変な事になりました。
「自分らさえ良ければいいのか」ー持たざる国の日独伊はやがて「自分たちも侵略して植民地を増やそう。英仏がやっているんだから」の考えとなり、日本は満州侵略、イタリアはソマリアからエチオピア侵略。そしてドイツでは1,920年代に抑えられていたヒトラーが台頭してきて、この世界恐慌は確実に第二次世界大戦の端緒となったのでした。(続く)
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