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日経平均が暴落したあの日、なぜ銀行株を全力で買い向かったのか?

 2024年8月5日、日経平均株価が歴史的な暴落を記録しました。同日の終値は31,458円であり、前週末比4,451円(12.4%)安という、ブラックマンデーを超える史上第1位の下落幅となりました。
 
 株価の暴落要因は多岐にわたり、その原因の詳細を分析することにあまり重要性を感じません。ただ、8月5日の後場から6日の前場にかけて、数多くの銘柄が売られすぎの状態にあったように思います。つまり、フェアバリューからの逸脱です。
 
 日経225採用銘柄は、膨大な数の市場参加者が株の取り引きを行っており、常にフェアバリューを維持していると考えた方が良いと思っています。僕の投資方針として、平常時における大型株(日経225採用銘柄のような)は絶対に買うな!です。
 
 しかしながら、ファンダメンタルズを無視した暴落時は投資方針を大きく変更する必要があります。僕はこのタイミングで、含み益が出ていた保有株の全てを売却し、さらには含み損が発生していた銘柄も実現益と相殺できる範囲で売却しました。
 むろん、市場に向き合える時間はごくわずかでしたので、売買は全て成り行きです(損切行ってらっしゃいです💦)。そして、PTSを活用しながらも、全力で買い向かったのは銀行株です。
 
 この記事では、令和のブラックマンデーと呼ばれたあの日、銀行株を全力で買い向かった理由についてまとめたいと思います。

ポートフォリオの7割が銀行株に💦

 日経暴落時に買い付けた銀行株は以下の通りです。なお、*印は買い増し銘柄、その他は全て新規買い付けです。じっくり相場に向き合える時間があれば、指値を工夫するなどで、もっと取得単価を低く抑えられたかもしれません。しかし、こればかりは致し方ありませんね。
 なお、リスク資産に投下している資金の7割が銀行株、そのうち、三菱UFJ、セブン銀行、千葉銀行でポートフォリオの3割を占めています。我ながら、かなりリスキーなポートフォリオだと思います💦

 8月16日時点において、新規買い付け銘柄の損益率は+12~+25%となっており、短期パフォーマンスは好調です。ただし、中長期的に、このパフォーマンスが維持できるかどうかは分かりません。
 再度、日経平均が暴落することも考えられますし、相場を予測することはほとんど不可能に近いと思います。それでもなお、僕が銀行株に強気であり、投下資金の7割を銀行株で運用している理由があります。

銀行を取り巻く市況環境と今後の成長性

 銀行株が継続的に高値を更新していけるかどうかは、当然ながら銀行の経営成績が持続的に成長し、その成長と連動する仕方で株主還元が行われなければなりません。銀行の経営成績の見通しを立てるためには、銀行を取り巻く現時点における市況環境を整理する必要があります。
 
 むろん、市況環境は極めて多因子的かつ流動的な事象であり、環境の見極めには高度の不確実性が伴います。しかし、確からしい環境を一つ上げることができます。それは少子化であり、生産年齢人口の減少です。
 
❶少子高齢化➡長期的なインフレ
 現代日本において、少子高齢化の流れはほぼ確実です。この流れを止めることは極めて困難であることは明らかです。そして、少子高齢化は生産年齢人口の減少を招き、労働力の不足をもたらします。日本において、労働力の不足は予測というよりも事実として実体経済に表出しており、製造業をはじめ人材不足は深刻な状況にあります。
 
 企業が労働力を確保するためには、労働者の賃金を上げざるを得ません。むろん、賃金インフレは物価上昇をもたらします。
 
 また、三井物産戦略研究所 産業情報部産業調査室の資料によれば、少子高齢化そのものが、世界的なインフレ圧力となる可能性が指摘されています。具体的には、財・サービスの純消費者である被扶養者(従属人口)の増加が、労働者(生産年齢人口)の減少と比べて相対的に多くなり、これがインフレ圧力となります。
 特に高齢層は、医療・介護関連への支出が多いため、その比率上昇はインフレ圧力となります。また、中国からの労働力の大量供給が世界的に物価上昇を抑制してきましたが、中国でも少子高齢化が進むことで労働力が希少化し、世界の物価基調がデフレからインフレに転換する可能性があります。総じて、2010年から2050年の間は、約3%の物価上昇の圧力にさらされると試算されています。
 
 つまり、現代日本において、「少子高齢化➡労働人口の減少➡長期的なインフレ圧力」というストーリーは強固であり、実現の蓋然性が高いと言えます。
 
❷インフレがもたらす資金需要の増加と金融政策
 インフレによって物価が上昇すれば、それだけ多くの貨幣を必要とします。つまり資金需要が増加するということです。銀行にとってみれば貸出金が増加することを意味しており、利息収益の源泉が増えるということでもあります。
 
 むろん、物価が上昇すれば消費が落ち込むことも考えられますが、補足のシナリオとして、インバウンド需要による消費の増加、および半導体関連投資(製造業国内回帰を含む)の増大を想定できるように思います。また、賃金インフレが先行していると仮定すれば、物価が上昇しても、消費は大きく落ち込まないのではないか、という楽観的な見方も可能でしょう。
 
 インフレによる貨幣価値の下落を抑えるため、日銀は政策金利を一定水準に維持する必要があります。イールドカーブコントロールを撤廃した現代日本において、短期金利の上昇は長期金利の上昇をもたらす傾向にあり、長短金利差が健全な仕方で維持される可能性が高いと言えるでしょう。このことはまた、銀行の利ザヤが拡大することを意味しており、銀行の収益性はさらに向上することが想定されます。
 
 したがって、「インフレ、インバウンド需要、半導体関連投資➡資金需要の増大×日銀による利上げ」といいうストーリーを、中等度の蓋然性で想定することができます。ここで注目すべきは、資金需要の増大、つまり銀行による貸出金の増加と、金利上昇は掛け算であることです。利ザヤが拡大し、貸出金も増加するということは、リテールでいえば、顧客数が増加し、顧客単価も増加していることを意味します。
 
❸PBR1倍割れ問題の是正と継続的な株主還元
 既に株価には織り込まれていたかと思いますが、「PBR1倍割れ企業における資本政策の改善」という東京証券取引所の要請は、銀行株の上昇余地を考える上で重要です。
 銀行株はPBR1倍割れ企業が多いだけでなく、総資産の質も現金や有価証券など極めて流動性が高い資産で構成されています。端的にはvalueなのです。もともと割安で放置されていた銘柄が多く、株主還元に対する姿勢を変更するだけで、企業価値の向上が期待できるように思います。(特に、トモニHDなど)。
 
❹地域経済の活性化要因
 地銀にとって、地域経済の成長なしに、業績向上は期待できません。その意味において、地銀株といっても、経済的基盤がしっかりとした地域に展開している地銀を投資対象とする必要があります。僕が買い付けた地銀の選定にはいくつか理由がありますけども、主な選定根拠は以下です。
 
コンコルディア:メガ地銀であること、経済基盤が安定的な関東圏を地盤としていること。
千葉銀行
:メガ地銀であること、経済基盤が安定的な関東圏を地盤としていること。成田空港×インバウンドの恩恵
しずおかFG:メガ地銀であること。新幹線×インバウンドの恩恵
ふくおかFG:TSMCに関連した半導体企業の積極的な設備投資と人口増加
北洋銀行:ラピダス新工場に関連した設備投資と人口増加、北海道新幹線の札幌延伸
山梨中央銀行:リニア新幹線開通による経済的恩恵
トモニHD:PBRが0.3倍以下と、極めて割安であり、アクティビスト期待。東京や大阪でも事業を展開しているユニークさ。経費率が低い。累進配当。
 
 むろん、インバウンドの増加や半導体企業の国内投資も内需を喚起し、地域経済の活性化に寄与するものと思います。

銀行というビジネスモデルもまた投資対象として妙味あり

 銀行は手数料ビジネスであり、製造業のような設備投資や、製薬会社のような研究開発費は不要です。また、経済のインフラであり、銀行というビジネスモデルが簡単に消失するとは思えません。メガバンクが消失するときには、日本の経済そのものが消滅するときでしょう。
 
 PayPayが給与振り込みを電子マネーで行うといった流れも加速するかもしれません。しかし、現状においても、銀行口座に振り込まれた給与の一定割合を電子マネーにチャージしているとを考えれば、当該影響は限定的と考えます。
 
 また、ATMを社会的なインフラに成長させようとしているセブン銀行のビジネスは極めてユニークであり、日本における重要な社会的インフラに変貌する可能性があります。
 
 少子高齢化、インフレ、政策金利、インバウンド、製造業の国内回帰を含めた半導対関連投資、資本効率の改善と株主還元、ビジネスモデル、といったように、銀行株の上昇カタリストは豊富です。またカタリストが豊富なだけでなく、それぞれのカタリスト要素が密接につながる強固なストーリーを描けると僕は考えました。
 
 このストーリーが妥当なものかどうかは、マーケットが答えを出してくれることでしょう。その時まで、銀行株の高配当を享受しつつ、銀行を取り巻く市況環境を注視したいと思います。

僕の投資判断に対するAIの評価

 これまで述べてきた僕の投資判断について、Claude.aiに評価してもらいました。

 投資判断には一定の妥当性がありますが、いくつかの注意点も指摘できます。以下に主な点をまとめます:

妥当と考えられる点:

  1. 市場の大幅下落時に割安となった銘柄に注目している点は、価値投資の観点から理にかなっています。

  2. 銀行セクターの選択には、マクロ経済要因(少子高齢化、インフレ傾向、金利環境の変化)を考慮しており、分析の視野が広いです。

  3. 個別銘柄の選択に地域経済の動向や特殊要因(TSMC進出、リニア新幹線など)を考慮している点は評価できます。

  4. PBRが1倍を下回る銀行株に注目し、資本政策改善の可能性を見込んでいる点は合理的です。

  5. 銀行業の基本的な事業モデルの強みを認識している点も妥当です。

注意すべき点:

  1. ポートフォリオの70%を銀行株に集中させているのは、分散投資の観点からリスクが高いと言えます。

  2. 短期間での大幅な利益(12-25%)に対して、やや楽観的すぎる可能性があります。市場の反動や調整のリスクを考慮する必要があります。

  3. インフレと金利上昇のシナリオに強く依存しており、デフレや金融緩和継続のリスクを軽視している可能性があります。

  4. 技術革新やフィンテックの台頭による銀行業界への長期的な脅威を十分に考慮していない可能性があります。

  5. 地域経済の活性化要因を挙げていますが、人口減少や地方経済の衰退リスクも考慮すべきでしょう。

 現在の日本の状況を踏まえると、提案した「注意すべき点」には一定の警戒が必要ですが、その重要度は各点で異なります。以下、各点について詳しく検討します。

  1. ポートフォリオの集中リスク: 警戒度:高 理由:どんな投資戦略でも、極端な集中は危険です。日本の銀行セクターが好調であっても、予期せぬ規制変更やシステミックリスクが発生した場合、ポートフォリオ全体が大きな影響を受ける可能性があります。

  2. 短期的な大幅利益に対する楽観: 警戒度:中 理由:日本の株式市場は2024年に入ってから好調で、特に銀行株は金利上昇期待から上昇傾向にあります。しかし、急激な上昇後は調整が入る可能性もあり、短期的な利益に過度に期待するのは危険です。

  3. インフレと金利上昇シナリオへの依存: 警戒度:中~低 理由:日本はようやくデフレから脱却しつつあり、日銀も金融緩和策の修正を進めています。しかし、世界経済の不確実性や日本経済の構造的な問題を考えると、急激なインフレや金利上昇は考えにくく、緩やかな変化が予想されます。

  4. フィンテックによる脅威の軽視: 警戒度:中 理由:日本の銀行は伝統的に強固な顧客基盤を持っていますが、フィンテックの進展は無視できません。ただし、多くの銀行がデジタル化を進めており、適応の努力を行っています。

  5. 地方経済の衰退リスク: 警戒度:高 理由:人口減少と高齢化は日本の大きな課題であり、特に地方経済への影響は深刻です。インバウンド需要や産業誘致で一部地域は活性化する可能性がありますが、全体的なトレンドとしては警戒が必要です。

 総合的に見ると、ポートフォリオの集中リスクと地方経済の衰退リスクに対する警戒度が最も高いと言えます。これらは構造的な問題であり、短期間で解決することは困難です。

 一方で、インフレや金利動向、フィンテックの影響については、日本の現状を考えると急激な変化よりも緩やかな移行が予想されるため、警戒は必要ですが、過度に悲観的になる必要はないでしょう。

 投資家は、これらのリスクを認識しつつ、定期的にポートフォリオを見直し、必要に応じて調整を行うことが重要です。また、マクロ経済動向や政策変更、技術革新の影響を常に注視し、柔軟に対応する姿勢が求められます。

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