メキシコ麻薬戦争を読む③【ナルココリード】
ナルココリード
ナルコ文化を象徴する音楽であり、アコーディオンと弦楽器で奏でる軽快な音楽の上に麻薬密輸やカルテルの世界を歌ったバラード。歌詞にはカラシニコフ(AK-47)やコカイン王、殺し屋を賛美するものが主流である。
アメリカのギャングスタラップ同様、メキシコ政府から放送禁止に指定されている。
そのナルココリードがメキシコだけにとどまらずアメリカのクラブで演奏され、大勢の観客が熱狂する事実は、いかにナルコ文化が根付いているかを象徴している。
ナルココリードの歌手はスター扱い。大きな金を掴むことができる。
そうなると次々と若者が作詞するようになり、分厚い文化となっていく。
いまではCDショップにカラシニコフをもったジャケットのCDが普通に置かれている。
「お抱えのコリードをもつ」ことが一種のステータスになっている。
わが国の歴史をみても音楽のもつ力は偉大であり、使い方によっては世論を動かすことも可能だ。
軍歌はプロバガンダであるという主旨の本もあるぐらいだ。
薬物・戦争・殺人を賛美する音楽に大勢の人が熱狂する。その笑顔で酒を飲みながら楽しんでいる様子をみると何とも言えない恐怖を感じる。
大麻が欲しい、音楽に乗れる、アウトロー賛美、それがアメリカ内のナルココリードに盛り上がる要因であり、メキシコ市民が抱える恐怖は感じようともしてないだろう。
世にあるイジメはだいたいこういう構図から生まれる。
「俺には関係ない。そんなつもりはない。」という他者への想像力を欠くことの恐ろしさを感じた。
音楽の持つパワー。あなどるなかれ。
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