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ひとりぼっちの宇宙人─ウルトラセブン視聴記─ 北へ還れ

ひとりぼっちの宇宙人 
─シューチョの『ウルトラセブン』視聴記─
第24話「北へ還れ」[C]


「主人公ダン以外の登場人物にスポットが当たる挿話群」C類、本話は北海道出身のフルハシの話。フルハシの母が彼を北海道へ連れ戻そうと上京して来ます。

フルハシの乗るホーク3号が操縦不能になり、そのままだと旅客機と正面衝突するコースを飛行するしかなくなります。カナン星人の仕業です。フルハシは、旅客機を助けるためにホークを自爆させ脱出せよというキリヤマの命令に従い、時限自爆装置を作動させるも脱出装置が故障、死のピンチに陥ります。キリヤマはフルハシの母を作戦室に呼んで無線のマイクを渡し、親子の“最期の”会話ができるように計らいます。

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キリヤマ「ホーク3号どうぞ…」

フルハシ「こちら、ホーク3号」

母「シゲル!」

フルハシ「…こちら、シゲル…?」

母「シゲルかい!」

フルハシ「あ、母さん」

母「何してるんだい、おまえ」

フルハシ「…パトロールさ」

母「遠いのかい?」

フルハシ「うん…、遠いよ。北海道より遠いんだ。何しろ、北極まで来てるんだからね」

母「まあ、北極…。じゃあ、あたしの声も北極まで飛んでってんだねぇ」

フルハシ「あぁそうだよ。北極まで来て、寒い寒いって、震えてらぁ。ハッハッハ…」

以後、しばらくただ笑い合う二人…。
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実際には、セブンの活躍で星人は敗れ、フルハシは命拾いし“最期”にならずに済むのですが、隊員とその母の関係・交流を描くこの雰囲気は他の挿話には見られない独特なもので、作品世界に新たな彩りと奥行きを与えています。

ラストも味わいがあります。生還して作戦室に戻ったフルハシはキリヤマにさっそくまたパトロールを命じられ、いったんくさりますが、行き先が北海道上空であることを告げられると、隊長が気を利かしてくれたと察して笑顔を取り戻し任務に向かいます。そして、北海道上空を飛びながら、ウルトラ警備隊の仕事に理解を示した母からのエールを聞くのです。…北海道に飛んできたからといって無線も電話もないのに母からのメッセージを聞けるはずはない、母を作戦室に残し、還ってきたフルハシと実際に会わせ会話させる方が筋が通る、というツッコミも可能です…。が、夕日を飛ぶホーク3号の映像で終わる余韻は、やはりすばらしい。「後日の二人の手紙のやりとりを先取りしてそのシーンに重ねた感じになっている」とでも解釈すればいいことです。フィクションを読むのに、ダメ出し/ツッコミ/揚げ足取りにばかり躍起にならないように、すなわち“不摂生”に陥らないようにしたいものです。

ただ…、上記とは別の、場面展開の大きなほころびも本話にはあり、こちらについては、“摂生”には十分留意しつつも看過はできません。 ホーク3号は衝突直前に操縦可能となります。そのことを、星人の発していたオーロラが消えたことで察したフルハシは、間一髪で衝突を回避。しかし、このときのフルハシは、先に操縦桿を動かして進路変更で旅客機を避け、旅客機とすれ違ってから時限装置を解除しています…。当然ながら時限装置の設定時刻は衝突予測時刻よりも前でなければならず、明らかに展開のミスかと思われます。整合性を度外視すれば、タイムアウト的な緊迫感はこの方が出るともいえますが…。この辺りの“制作秘話”に触れている二次資料もあるのかもしれません。

特撮では、お茶目なウィンダムが楽しい。カナン星人に操られたウィンダムはセブンと闘おうとしますが敵うわけはなく、目を回されダウン(→注1)、正気付光線を浴びせられ意識が戻り、主人のセブンに平謝り。セブンの僕=カプセル怪獣というフィクションをどう活かすかという“活性フィクションの問い”の、みごとな解答例となっています。

注1…真上から見て円を描くように走り、ウィンダムに自分を追いかけさせ、何周かした後にサッとそこから抜け出すセブン。それに気づかないまま勢いで何周もしてしまい、やがて疲れてへたり込むウィンダム。ドタンドタンドタンドタンと速かった足音もドタン…ドタン…とだんだんスローになってついに止まる。子どもの時もたいへん面白く感じた記憶があります。カプセル怪獣は概してユーモラスな役どころを担っていて愛らしい。ウィンダム3回、ミクラス2回、アギラ2回、3体合わせて登場わずか7回というのは何とも惜しく…。

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