【読書感想文】妻を帽子とまちがえた男
脳神経科医のオリヴァー・サックス博士の医学エッセイです。
きわめて特殊な視覚的失認症の例である。脳の一部に何らかの障害が起き、「帰る時には帽子をかぶる」「傍らに帽子がある」との認識はあり、手を伸ばしかぶるのだが、手にしたものが「帽子」なのか「妻の頭」なのかは認識できない、のだ。
「手袋」を目の前に差し出しても、彼は何をする物なのかわからない。袋のようになっていますね、何かを入れるものなのかな、と手に取って観察している、という具合だ。
音楽家としてすぐれていた彼は、その認識