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「読書感想文」

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図書館で、あるいは本屋さんで出会った本たちとの時間をエッセイ風に。ジャンルはさまざま、その時の興味や関心に、素直に手に取り、呼応する自分の声を綴ります。
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記事一覧

【創作大賞感想文】おはよう、私

「子どもがいないと自由でいいね」というフレーズが、心に棘のようにささってしまった瑠璃は、…

藤本 柊
5日前
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【読書感想文】川のある街

朝日新聞出版 江國香織 著 望子は小学生三年で、母と暮らしている。時々、離婚した父こんち…

藤本 柊
2週間前
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【読書感想文】ノルウェーの森 上下

村上春樹 1987年講談社刊 うつぶせに寝転び、小説の頁…

藤本 柊
3週間前
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【読書感想文】螢・納屋を焼く・その他の短編

村上春樹さんの初期のころの短編集です。 夕方まで一緒にビリヤードをしていた友人が、その夜…

藤本 柊
5か月前
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【読書感想文】黄色いマンション 黒い猫

なんてったってアイドルで、俳優で、舞台プロデューサーで、そして執筆のお仕事もする、キョン…

藤本 柊
1か月前
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【読書感想文】シェニール織とか黄肉のメロンとか

江國さんの描く女性だなぁ、と胸を踊らせながら読みました。 立場も考え方も性格も違う、「三…

藤本 柊
5か月前
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【読書感想文】すみれ荘ファミリア

本屋大賞受賞作家、凪良ゆうさんの加筆修正と、「表面張力」という短編が収録された一冊です。 芥は、どこか本質を見抜いたような物言いをする。「ありのまま」でいい、「ありのまま」でいられる、「ありのまま」で生きたい、確かによく聞くけれど、芥のセリフに、そうだよな…と読みながら考える。 すみれ荘には、重いPMSで毎月半月ほど絶不調で過ごす美寿々、テレビ局で昼夜過酷に働く隼人、花屋に勤める古くからの下宿人 青子、そして管理人の一悟が家族のように暮らしていた。 そこへ、ミステリアス

【読書感想文】家と庭と犬とねこ

石井桃子さんのエッセイ集です。 私の好きな作家、江國香織さんは石井桃子さんが好きで、エッ…

藤本 柊
7か月前
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【読書感想文】晴れ、時々くらげを呼ぶ

鯨井あめさんのデビュー作です。 装丁の綺麗な写真と「くらげ」、がとても気になって手に取っ…

藤本 柊
7か月前
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【読書感想文】泣かない子供

江國香織さんが、24歳から32歳ころ8年越しで書かれたエッセイです。 彼女の「言葉」に対する…

藤本 柊
8か月前
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[読書感想文]ROW&ROW

村山由佳さんの恋愛長編小説です。 主人公は43歳、広告代理店に勤めるデキる女涼子。夫は3つ…

藤本 柊
8か月前
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「星の王子さま」と私。

私は大人になってしまった。 10代の頃この本を読んで、心に熱いものが灯ったのを憶えている。…

藤本 柊
9か月前
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[読書感想文]ひとり暮らし

詩人 谷川俊太郎 さんのエッセイです。 私の中の「谷川俊太郎」という作家のイメージは、こど…

藤本 柊
9か月前
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【読書感想文】妻を帽子とまちがえた男

脳神経科医のオリヴァー・サックス博士の医学エッセイです。 きわめて特殊な視覚的失認症の例である。脳の一部に何らかの障害が起き、「帰る時には帽子をかぶる」「傍らに帽子がある」との認識はあり、手を伸ばしかぶるのだが、手にしたものが「帽子」なのか「妻の頭」なのかは認識できない、のだ。 「手袋」を目の前に差し出しても、彼は何をする物なのかわからない。袋のようになっていますね、何かを入れるものなのかな、と手に取って観察している、という具合だ。 音楽家としてすぐれていた彼は、その認識