明けましておめでとうが言いたい話
『末夢』
「ヘイ、お嬢さん。除夜の鐘聞きに行くには早すぎない?」
砂利の敷かれた仄暗い駐車場から、飄々とした女性の声が飛ぶ。声の向かう先にいた早苗は視線で辺りを伺い、人気の無い夜道を確認し顔を強張らせた。着ていたコートの胸元を閉め、緩まっていたマフラーを整え口元を隠しながら早苗は声の主を一瞥する。駐車場の奥にぽつりとある街灯の下に一台のバイクが停まっており、そこに腰掛けたライダースーツにヘルメットの女性が早苗に向かって手を上げた。早苗は眉を顰め逡巡した後、ぎこちなく笑顔を向