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初めてルバーブパイを食べた話

子どものころに読んだ海外の絵本や童話に出てくるぶどう酒。

親たちが美味しそうに飲み交わすビール。

大人なお店から薫ってくる、とても香ばしく良い香りの何か。


 食べたことの無いもの、食べれないものはなんであんなに美味しそうに見えるのか。
成人して色んなものをある程度自由に食べれるようになり、甘さと未知の美味しさでいっぱいになると思われたぶどう酒が実は渋さや酸っぱさが主だったことや、想像もつかないような美味しさなんだろうと思われたビールやあの香ばしい香りにぴったりな今まで感じたことの無い美味しさなんだろうと思われた珈琲が苦いものだと知ったときには、こういうものだったのかと納得はしたけれど、少しがっかりした気持ちもあった。

 ルバーブ。
こちら、『スターデューバレー』という農場シミュレーションゲームで育てることが出来る作物の一つである。
SNSのフォロワーが「面白さが分からないのにずっとやってしまって死にそう」と呟いていたのをきっかけに最近プレイしはじめて、初めて知った実在する野菜(くだもの?)だ。

ゲーム内では調理もでき、このルバーブを使った料理もある。

このように料理が出来ると、
 『食べてみたいな』
 『どんな味がするんだろうな』
とふんわり思うのは世の定めだと思うのだが、料理に使う材料がゲーム内オリジナルのものが含まれていたり、日本じゃなかなか手に入らないものを使わなければいけなかったり、頑張れば材料を手に入れて料理も出来そうだけどそこまでするのは面倒で腰が上がらなかったりで結局食べれない事が多いだろう。
ルバーブに関しても、私は
 『こんな赤いチンゲンザイみたいなのがくだもの……?』
 『調べたら実在するしジャムにして食べるんだ。へぇ~おもしろ。食べてみてぇ~』
と思いはしたけれど、実際に食べるために行動するつもりはサラサラ無かった。
行きつけのスーパーや通り道のカフェで偶然売ってたら買いたいくらいの、
開けた窓から当たりクジが風に乗って飛んできて昼寝をしている自分の口の中に入るのを期待するような、そんな怠惰な欲求だった。



入ってきたわ。
びっくりした。
時間潰すために入ったブルーボトルコーヒーで、しかもブルーボトルコーヒーに入ったのも初めてで、メニューを見てノラってコーヒーチェリーフィズってなんやねんオシャレさんめと心の中で悪態をついていた時に、パイのメニューにすっと鎮座しているのが目に入った。
こうなったらもう駄目だった。食べたい。食べるしかない。ルバーブパイの一つ上に載っているエローテパイもおしゃんで正体不明過ぎて気になるけど、私は今このルバーブの味を舌に体感させないとずっとこれが気になって影みたいに視界の端をずっとずっとずっとチラチラしてくるやつや。そう思って買ってしまった。

いざ実食。
……甘酸っぱい、ねっとりとしてるジャムだ。
どれくらい砂糖が入っているのか分からないからこの甘さのどこまでじゃルバーブの物なのか分からないが、爽やかさっぱり少し甘い感じ。
イチゴとかブルーベリーの甘酸っぱさや味とは違う……と思う(これで味の成分とかが一緒だったら笑う)。

このジャムの上の方見てみてほしい。
繊維っぽい形が残っているのが見えると思う。
しかし、繊維の固い舌触りはまったく無い。
あんなタデ科の茎なのに、小松菜とか育ち過ぎたアスパラガスやセロリみたいな固そうなしっかりしてそうな繊維なのに、まったくそんな感じがしない。
でも果実系のジャムとはなんか……食感が違う、気がする。

 親しみがあり、同じ部類であろうベリー系のジャムと似ているのに違う。
材料が明確に違うのに、違う……かも……?くらいに自信がなくなるほど同じ系統の味になっている不思議。
シンプルオシャレな店内に似つかわしい澄ました顔で食べ終えたが、終始頭の中をおもしろ~不思議~美味しい~が占める食べ物だった。

 がっかりが無いパターンもあるんだな。
ご馳走様でした。

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