面接技術のコツ

はじめに
 筆者が考える面接技術を向上させるためのコツを、面接者の基礎的な活動と呼べる〈観察→見立て→介入〉のプロセスに沿って書き起こしてみます。この〈観察→見立て→介入〉には意識的な(意図した)活動と、無意識的な(意図せぬ)活動があると考えます。最後にこのプロセスをイメージした資料を載せて おきます。ご自身が実践でされていることと照らし合わせながら検討してみてください。

観察
 観察には言葉の観察と身体の観察があります。人間のコミュニケーションは言語的(デジタル)と非言語(アナログ)の両方を使っています。言葉と身体の不一致をみることは、意識と無意識のズレを観ると いえ、観察の重要なポイントです。
 言葉の観察は、「聞く」、「聴く」、「訊く」という三つの方法で行ないます。まず、「聞く」は事実を把握 することです。必要な箇所は、患者さんが話す出来事を映像で再生できるくらいに事実を把握することが必 要です。患者さんの語りを客観的に理解できているのかがひとつの基準になります。理解できないことを理解している理解も含めます。
 「聴く」は患者さんの身になって、あたかも患者自身の体験のように聴くことです。こうした「聴く」時の 感じと、先ほどの「聞く」時の感じ行き来して、照らし合わせながらきくとより理解が深まります。
 「訊く」は尋ねる、質問することです。質問には足りない情報を補うだけでなく、患者にそのことを想 起させたり、その反応を観たりと様々な機能があります。どうしてその質問をしたのか、その結果どのような反応が返ってきたのか、その質問は適切だったか、を常に検討しながら質問を使うことでその精度があがります。質問は患者さんの負担になります。必要最小限の質問で済ますことが望ましいです。
 次は、身体の観察です。筆者自身は、身体が軸に対してどのようにズレているのかを、姿勢を含めた動き で見ます。身体の観察は、声を観る人がいれば、表情や視線を観る人、私のように動きを観る人と観察す る人によって個性がでます。汗や匂い、呼吸や嚥下など生理的な反応の観察も忘れてはいけません。
 最後に、観察のプロセスでは、その水面下で「ペーシング」をしながら「ラポール」を形成していると みることができます。「ペーシング」と「ラポール」は面接の土台といえます。どのように「ペーシング」 を行なえば、治療に有用な「ラポール」を形成できるのかを常に工夫してみてください。

見立て
 まず前提として、「観察された事実に即して見立てること」、「見立ては介入とセットであること」、「介入後の反応から見立てを検証・修正すること」、の三つコツがあげられます。また、見立てには意識的な見立てと、無意識的な見立てがあります。意識的な見立ては、「素朴な理解による見立て」、「基準や理論による見立て」、「患者の反応による見立て」の三つの方法があります。
 「素朴な理解による見立て」は、一般的な価値観や常識からなる、日常的に行っている理解による見立 てです。ここには面接者の捉え方の癖が出ます。日頃から、自分がどのように物事を捉えているかを意識することは、特定の捉え方に縛られず自由に物事を捉える第一歩になります。
 「基準や理論による見立て」は、我々が日頃から依拠している、精神医学や心理学の理論などの基準や理論からなる見立てです。基準や理論は、各々面接者が自由に使えばよいのですが、基準や理論で切り取った部分は、患者の全体ではなくあくまで部分だということは忘れないでおきたいことです。そして、基準や理論を、自分の都合よく使わないようにしてください。金槌しか持っていない人には、なんでも釘にみえてしまうものです。
 「患者の反応による見立て」は、患者の反応を第一に考える見立てです。まずは、どんなコミュニケーションも相手の反応ありきです。
次は、無意識的な見立てです。無意識的な見立ては、意識で考える見立てと違って感覚的・経験的なものになります。考えるというより、浮かんでくるものといえます。
 「関係と場による見立て」は、相手との関係や、場から見立てられる雰囲気や、感覚的にこういうことが返ってきそうだ、こういうことが起きそうだというものになります。
 「連想・類推(メタファー)による見立て」は、面接者に浮かんでくる連想や、面接で起こる現象に対 する類推から生じる見立てです。また、面接室で起こる現象は、問題や面接室外で起こる現象のメタファーとみることができます。
 「直観・経験による見立て」は、面接者が感じる直観や、経験則による見立てになります。瞬間的な判 断をする時に役立っているといえますが、根拠がなく必然的に感じられるものといえます。自分の直観 や経験に迷いや違和感があるときは、観察される事実に戻ることをお勧めします。
 最後に、見立てには、「診断」、「治療方針」、「患者への説明」という三つの役割があります。「診断」は 専門家同士の説明で使われるネーミングやストーリーといえます。「患者への説明」は、患者さんやご家族に説明する際のネーミングやストーリーになります。どちらも「治療方針」は共通ですが、相手にあった説明 を目的に合わせて工夫することがコツとなります。ネーミングやストーリーを伝えることで見通しが立つということは、安心感を生むことにつながりますが、ネーミングやストーリーとして固定することに もつながるので注意してください。

介入
 介入には、面接者の意図した介入と、面接者の意図せぬ介入があります。面接は人間同士のコミュニケーションなので意図が誤用されて伝わることは日常茶飯事です。正しさに拘るよりも、意図した作用が起きているかどうか、観察される事実に基づいて検証し、修正していくことが必要となります。
 また、介入に用いられる技法は、患者さんと面接者の間に起こる現象を面接者側から切り取ったネーミングに過ぎません。どんな技法を使ったかよりも、介入後にどんなことが起きたのか、患者さんはそれをどのように体験しているのか、その体験は面接の目的に沿っているのかを検証し、介入(方法レベル)と見立て(方針レベ ル)をよりよいものへ修正していくことがコツといえます。
 意図した介入には、「基準や理論に則した介入」、「患者の反応に沿った介入」、「面接の目的に沿った介入」の三つがあります。
 「基準や理論に則した介入」は、基準や理論と実践によって導かれたマニュアルやプロトコルに則した介入といえます。整備化されて使いやすいのが特徴です。見立てと同様に、観察される事実に即すこと、見立てとセットで使うこと、介入後の反応から検証・修正することがコツになります。
 「患者の反応に沿った介入」は、患者さんの反応を第一に考えた介入です。反応に沿ったというのは、今ここで観られる反応に合わせるだけでなく、これから期待する反応に沿った介入ということも含みます。
 介入の意図が変化なのか、安定なのか自覚する必要があります。 「面接の目的に沿った介入」は、面接全体の目的に沿った介入です。面接を方向づけたり、患者さんのモチベーションをあげたりする介入といえます。面接の目的は、患者さんの日常生活で満たされるニーズに沿っていることが重要です。ニーズを扱うときに、患者さんは変化を望むと同時に、変化に対する不安を持っていることを配慮することがコツとなります。
 意図せぬ介入は、「素朴な反応」、「無意識的な反応」があります。患者からすれば、治療的な意図のな い「素朴な反応」も、面接者の自覚なく出た「無意識的な反応」も、治療者の意図と誤用されてしまうこ とがあります。
 「素朴な反応」は、面接者の持っている価値観や常識、日常的な理解からなる素朴な反応です。こうし た素朴な反応が、意図せぬ介入となっていることがあります。日頃から、自分の反応が、相手の反応にど のように影響したかを意識しておくと、素朴な反応を意図した介入として使うことが出来ます。
 「無意識的な反応」は、無意識にしてしまう口癖やパターン化した行動などになります。相槌や応答、 表情などの無意識的な反応が、意図せぬ介入となっていることがあります。面接やロールプレイを録画 して、自分の身振り・手振りを観察してみると色々な発見があると思います。
 最後に、介入の前に、「見立ての合意」、「問題の再構成」、「治療的文脈形成」というプロセスを経ていると介入がより有用なものにします。患者や家族から「見立ての合意」を得ることは、解決へ向けた「問題の再構成」をすることにつながります。
 そのためには、心理教育によってフレームやストーリーを変更することや、問題を細分化して扱いやすくする必要があります。そして、面接のニーズが共有されること、それに向けた資源の発見や介入への準備、解決への見通しが立つこと、解決への橋渡しとなり「治療的文脈形成」をしているといえます。これらのことは介入のためのコツになります。

終わりに
 以上が、筆者が考える面接技術を向上させるためのコツとなります。最後に、トレーニングの方法について触れて終わりたいと思います。
 面接の主なトレーニングは、「陪席」、「クライエント体験」、「ロールプレイ」などがあります。筆者は、 「ロールプレイ」もしくは「実際の面接」を録音して逐語起こしすること、あるいは録画して面接の映像を観察することをお勧めします。逐語起こしは自分自身の言語的な活動を、面接の映像を観察することは身 体的な活動を検討するのに役立ちます。どちらも自分の癖を見つけることに役立ちます。
 そして、自分自身の言動と患者や家族の反応がどのようにつながっているのかをじっくりと観察し、自分の言動のズレを発見することがトレーニングの第一歩になります。こうした学習を積み重ねて、誤用も含めた、効果的なコ ミュニケーションを身につけていくことが面接技術を向上させていきます。
 より全体的な視野のトレーニングとしては、終結した面接を事例として記述することをお勧めします。 それを SVや GSV、学会などで報告し、そのフィードバックをもらい再検討するまでがひとつのプロセ スになります。このプロセスは、自分の面接を内在化し、外在化して、相対化する行為といえます。こうした学習のプロセスを身につけていくことも面接技術の向上になります。
 そして、研修や学会に参加し仲間や師匠を見つけること。仲間と勉強会を運営すること。自分の専門外 のコミュニティにも参加すること、は学習する環境づくりといえます。仲間や師匠、第三のコミュニティ でのつながりは、自分自身を育んでいく土台となります。自分が成長できる環境を見つけてください。

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