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チェコ買い付け日記⑧『Mikeš』

買い付け1日目の午前中に買えた一番嬉しかったものは『Mikeš』の古本。
ヨゼフ・ラダの本です。
私が買い付けの最初にチェコを選んだ最大の理由はヨゼフ・ラダです。

ヨゼフ・ラダ はチェコの国民的なイラストレーター。
風刺画でも有名で新聞に連載をしていたり、風刺画の本もいくつか出版されています。
その他に子どものためのお話も書いています。
日本でもいくつかのお話が翻訳出版されていて、『Mikeš』は岩波書店から『黒ねこミケシュのぼうけん』(小野田澄子 訳)というタイトルで出版されていました。

ミケシュは人間の言葉が話せる黒ねこです。
ミケシュの飼い主のペピークくんの家は靴屋さん。そこでミケシュのために『長ぐつをはいた猫』のような長ぐつ(ブーツ)を作ってもらいます。
ブーツを履いて人間のように後ろ足で歩き、とても丁寧に話すミケシュ。
もちろん村の人気者です。
ミケシュはペピークくんの家で飼われている豚にも人間の言葉を教えたり、その豚とオートバイで二人乗りをしたり、人間の学校へ行ったり。そしてついには一人旅へと…。

実はヨゼフ・ラダ の生まれた家も貧しい靴屋でした。
ラダは自分の子どもの頃のことを思い出して、飼い主のペピークくんに自分を投影したのでしょうか。
描かれている村の様子は明らかにラダの生まれ故郷フルシツェです。

余談ですが、本の中に出てくるペピークくんの絵で、どう見てもおじさんにしか見えないものがあります。
ミケシュやヤギ、豚と並んで腰掛けているペピークくんは小学生のはず。
他のページに書かれたペピークくんの絵や、他の子どもはちゃんと子どもに見えるのに、この絵だけは…。大いなる疑問です。

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『黒ねこミケシュのぼうけん』は現在は絶版になっているので読みたい方は古本で探すか図書館で借りてください。
いつか岩波書店さんが復刊してくれることを期待しています。

『Mikeš』は2部構成になっていて、1つ目のお話はラダの長女エヴァに、2つ目のお話は次女のアレナに捧げられています。
日本で出版された『黒ねこミケシュのぼうけん』は前半のエヴァに捧げられた部分のみ。ぜひ後半も読んでみたいです。

『Mikeš』は300ページ以上ある本で、基本的には白黒ですがカラーの絵が18枚あり、それがとても素敵です。
ヨゼフ・ラダ 独特の黒いくっきりとした線とカラフルな色合い。昔のチェコの村の様子が生き生きと描かれています。
カラー以外にも白黒のカットがたくさん描かれていて、ミケシュのかわいい姿や村の動物たちのコミカルな絵は、読めなくても見ているだけで楽しめます。


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