チェコ買い付け日記㉓「サセックの『Benjamin』」
ブルノでもかわいい本がたくさんありました。
いちばん嬉しかったのはMiroslav Šašek(ミロスラフ・サセック)の絵本に出会えたことです。
私が絵本のコーナーで物色していると、店のおじさんが「ここにもあるよ」と奥から出してきた絵本をカウンターの上に積み上げてくれました。
それがすてきなものばかり。
その中の1冊がミロスラフ・サセックの『Benjamin』でした。
サセックは日本でも「ジス・イズ」シリーズで有名です。
世界中の都市を紹介する絵本のシリーズで、パリ、ロンドン、ニューヨークはもちろん、ベニス、テキサス、アイルランド、香港など多くの街が描かれています。中にはThe United Nations(国連)やCape Kennedy(ケネディー宇宙センター)というのもあります。
おしゃれで少しコミカルな大人っぽい雰囲気の絵、人物はひょろっとスマートで気取った表情、色使いはカラフルなのに派手ではない。
子どもよりも大人に好まれそうな絵です。
この『Benjamin』は「ジス・イズ」シリーズを出版する前に出された本です。
洗練された「ジス・イズ」よりも、もう少し可愛らしいタッチで、出てくる人や動物はずんぐりむっくり、顔もみんな丸顔です。
そして文字が全て手描き!!
かなり分量のある文章で、見開きほとんどが文字というページもあるのですが、筆記体のカリグラフィーが始まりから終わりまで乱れることはありません。
「ジス・イズ」でもパリやニューヨークの都市の俯瞰や、アイルランドの道路いっぱいの車、ロンドンの地下鉄の中の新聞など、びっしりと細かーーい描写が得意なサセックですが、このカリグラフィーにもその片鱗が見えます。
しかも状態が良い。
本当に70年以上前の絵本か?と思うほど、表紙も中のページもきれいです。他にもサセックの本はないかと店のおじさんに聞いてみたのですが、ありませんでした。
他の本もすてきな本ばかり。
そして今まで見てきた本の何倍もの値段がつけられていました。
しかもクレジットカードが使えない店だということが発覚…。
手持ちの現金と相談し、泣く泣く、絞りに絞って、端数を少し負けてもらって(ごめんなさい)、買った本をリュックに詰めました。
店を出て歩きながら、私は今すてきな本が入ったリュックを背負っているんだと思うだけで気持ちが浮き立ちました。
家に帰ってこの本を見るたびに、この本をたくさんの人に見てほしい、誰かこれを好きな人が買ってほしい、という気持ちと、売れてほしくないという気持ちのせめぎあいが続いています。
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