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チェコ買い付け日記2023⑪「世界一美しい図書館」

ストラホフ修道院にやってきました。
観光客で賑わうプラハ城とは違って人もそこまで多くなく、落ち着いた雰囲気です。

ストラホフ修道院はビールの醸造所としても有名で、前回のプラハ滞在中にはここにビールを飲みに来ました。今回は同じ敷地の向かい側です。
図書館がある建物とは違う場所でチケットを購入するのですが、そのチケット売り場もすてきでした。昔は教会だった建物のようです。

図書館の入り口はとても地味でした。「世界一美しい図書館」というからには大きな入り口でゴージャスな扉を入っていくのかと思っていましたが、実際には街中にあるようなごくごく普通の扉。しかも入ってすぐに白壁の階段を登ります。本当にここなのか?不安になりながら登っていくと、やっと入り口に着きました。

結果的にストラホフ修道院の図書館はとても素晴らしい場所でした。
図書館は扉の外から覗くだけの鑑賞スタイル。中に入るには特別なチケットが必要ですが、覗いた先は煌びやかで豪華な大広間のようでした。並んだ背表紙はもちろん全て皮張りです。ナポレオンの妻が寄贈した本もあるそうです。
その時代、文字が読めるのは限られた人たちだけで、本は貴族やお金持ちにしか触れることができない大変な貴重品。当然置かれている場所も豪華に飾られた空間。図書館は着飾った人たちが談笑するサロンのような場所だったのかもしれません。

図書館ももちろん素晴らしかったのですが、私が気に入ったのは図書館の外側でした。
入ってすぐに小さな展示室があり、腰ほどの高さの展示ケースには美しい本が並んでいます。中には1300年代、1400年代の本もありました。手書きの本も活版印刷の本もあります。
今では活版印刷というと名刺やカードぐらいしか見かけないけれど、この時代はそれが本になっているのです。手書きはもちろん、活版印刷で本を1冊作るなんて途方もない労力。これが図書館にずらりと並んでいるかと思うと、それは飾りたくなる気持ちもわかります。

歴史の授業で活版印刷の発明は必ず出てくるトピックでした。正直に言うと学生の頃は、どうしてこの発明がそんなに毎度取り上げられるような大ニュースなのか分かっていませんでした。現代の印刷技術から考えると活版印刷で複数発行の本を作るのは大変ですが、手書きで書き写していたことを思えば、それはもちろん教科書に太字で書かれるような世界を変えるビッグニュースです。

展示室と図書館の間には広い廊下があります。廊下の両側には展示ケースが並び、その時代の珍しいものが展示されていました。説明によると、各地で発見された珍しい物も図書館に集められたようで、博物館の役割も担っていたようです。
司書だったころ、図書館の役割を子どもたちに説明する時に、何かを収集し、保存し、研究して、それを還元する(見せたりして役立てる)というのは、図書館や博物館、動物園などに共通していることだと話したことを思い出します。

サメやエイやカブトガニのような海の生き物を展示しているケースがありました。海のないチェコ(この時代はウィーン・ハプスブルグ帝国ですが)。しかもこの時代では映像で見るわけにもいきません。貝だって珍しかったでしょう。
でもそれに混じってタコを広げて干した干物もあって、それがうやうやしく豪華な展示ケースに飾られていることが可笑しくて、思わず何枚も写真を撮りました。確かに足が8本もある頭の丸い生き物は展示ケースに入れるべきです。

他にもこの時代に使われていたと思われる武器や防具も展示されています。鎖帷子や鉄の兜などが並んでいます。ゲームでこの防具を買ったり作ったりしてるよ!!と、しげしげと観察しました。
時代ごとに描かれたストラホフ修道院の絵も飾られています。
博物館はとてもとても面白い。

その当時使われていたその場所で、同じ雰囲気の中で見たからか、とても興奮してしまいました。

小さな小さな博物館ですが、本当に気に入りました。


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