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レポート⑦【トルコのAARで働くシリア人スタッフの過去・現在・未来】

みなさんこんにちは!学生スタッフの鈴木慶樹です。

9月11日(金)に開催されたAARで働くシリア人スタッフのお二人、ナリンさんとマルワさんから伺ったイベント内容を報告します。

トルコのシリア難民について

本題に入る前に、Piece of Syriaの中野からシリアとトルコの簡単な解説がありました。

中野は青年海外協力隊として、戦争前のシリアで活動経験があり、
戦争が始まった後は、トルコを含めた中東・欧州に住むシリアの人たちを訪ねました。

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トルコでは、NGOの短期駐在員として、シリア難民支援に関わったこともあり、

各国におけるシリア難民に対する対応の違いを踏まえて、トルコの現状について伝えました。

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詳細は是非、見逃し配信でご覧いただければと思います。

また、各国の違いについて深く知りたい!と思われる方はこちらをご参照ください。

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二人の過去

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イベントでは、まずふたりのこれまでの経緯について伺いました。地名が多く出てくるので、上記の地図をご参考ください。

トルコで働く、ということ

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笑顔がとっても素敵なナリンさんはシリア北部のコバニ出身です。

2012年にアレッポ大学の英文学科を卒業しましたが、すでに戦争が始まっていたので、卒業証書を受け取る適切な機会を得ることができませんでした。

2014年9月、イスラム国がナリンさんの故郷のコバニを攻撃し、約20万人の人々がシリアとトルコの国境を越えてトルコに逃げました。

ナリンさんもトルコに避難し、人道支援の団体で働き始めました。しかし、「難民」であることを理由に、労働許可が得られず辞めざるを得なかったこともありました。

お話から、
トルコでは働かないと生活費が高くて生きていけないとお話しされており、「難民」という立場で仕事に見つけ、生きていくことの大変さを感じました。


幸いなことに、難民を助ける会(AAR)で、障がい者支援の仕事に出会うことができ、「本当に素晴らしい仕事に従事できてるわ」と嬉しそうにお話しされているのが印象的でした。


「クルド」についてご存知ですか?

ナリンさんのご出身である「コバニ」という町に住んでいるのは、ほとんどがクルド民族だそうです。


クルド民族とは、「世界最大の少数民族」と言われ、国を持たず、多くはトルコ、シリア、イラン、イラク、に分かれ暮らしています。イラクの北部では自治権を持ち、自由にクルド語を話し、クルド語の教育を受けることができます。

シリアではクルド人は北部に住んでおり、コバニ、アフリーン、カミシュリといった街では、住民の100%がクルド人だそうです

クルド語はシリアでは公用語とは見なされておらず公的な場所でクルド語で話すことができませんでした。

また、生まれ育った母国にもかかわらず、シリアの市民権が得られないケースもあったそうです。

トルコ南部にもクルド人が多くいるので、コミュニケーションはそれほど難しくありませんでした。

また、ナリンさんが「クルドの人々は異文化を受け入れることにオープンです」と語ってくれたのが印象的でした。

ナリンさんの言葉にはとても深みがあって、今まで遠く感じていたクルドの人たちが、ぐっと近い存在になるような時間でした。

トルコでティッシュ売りの子どもに出会って

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自分の軸をしっかりともった優しい表情が特徴的なマルワさんは、シリア北部の街ラッカ出身です。大学では土木工学を専攻していましたが、2014年にイスラム国がラッカに来たとき、大学が閉鎖されました。

他の大学に移らざるを得ませんでしたが、どこも新たに学生を受け入れるだけの空席がないと拒まれてしまいました。

一つのキャンパスで4年間暮らしてきた僕には信じられないような話でした。

卒業後、2015年にトルコに行き、2年間デザイナーとエンジニアとして働き始めました。

しかし、そこでティッシュを売っている子どもや物乞いをしている女性たちを目撃し、人道支援の分野で働くことを決めました。

僕自身も、トルコに滞在していた頃はティッシュを街中で売る子どもたちを頻繁に見かけました。

しかし、Narinさんと同じく、難民であることから労働許可がおりず、辞めることになってしまいました。その後、日本のNGOであるAARに入り、今日まで3年間働いてきたそうです。

AARで働く二人の今

彼女達の働くAARのケースマネージメントチームでは、大きく二つの仕事に従事しています。1つは障がい者支援。もう1つは子どもの保護です。

シリア難民だけを対象にしているわけではなく、難民を受け入れているホストコミュニティ(ここではトルコの人たち)の中で、基準が満たされずにサポートの対象外になってしまっている人たちも含めて、支援を届けているそうです。

補助器具の支給といった専門的サポートを始め、住居のリフォーム支援、申請書類の作成を含む法的支援、治療のための交通手段や宿泊施設の支援など包括的にサポートをしています。

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二人の描く未来


参加者さんから、「二人の夢はなんですか?」と聞かれた時に、「夢はたくさんある」と画面越しに笑顔で話していたお二人。

そんなナリンさんとマルワさんが口を揃えて答えたのは、私たちの故郷のシリアに住む子ども達に教育を受けて欲しいという願いでした。

戦争が原因で、未来や夢を描けなかったり、兵士にさせられるなど大人に利用されてしまう子どもたちを何度も目にしてきました。

「自身が難民でありながら、シリア難民支援に関わることについて葛藤はありますか?」との質問に対しては、

「難民」だから「シリア人」だから助けるのではなく、目の前の一人の同じ人間を助けているだけよと全く葛藤はなく、誇りを持って活動をされている、とお話しくださいました。

いつも「これから」を考えて活動をしているお二人のように、僕も自分にできることを考えていこうと深く感じました。


けれど、実際に僕たちがこれからシリアのために、そしてシリアと一緒にできることはなんでしょうか。

1人だけでは難しいかもしれないけど、みんなで考えればきっと、できることが見つかるはずです。

9/19(土)20時より、シリアオンラインスタディツアー最終日、【私たちのできること〜難民と教育】を開催します。

僕の大学の先生でもあり、長年シリアに教育の側面から関わってきた明治大学の岸磨貴子准教授とPiece of Syria現地パートナーのウサマさんが、未来のためにできることを考えます。

岸先生とウサマさんと一緒に、そんな「自分でできること」や「みんなでできること」を一緒に考えてみませんか?

ぜひ、奮ってご参加ください!

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