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【映画時評】REBEL MOON

『三体』が見たくてネットフリックスを契約した私ですが、せっかくなので、契約を切る前にほかにもなにか観たい。
そういえばザック・スナイダーの新作があるなあと思って、期待せずに『REBEL MOON』を再生ポチ。
感想をひとことで言うと、ボンクラオタク映画だった。なかなか笑かしおるので、つい感想を書きたくなってしまった。

『REBEL MOON』はNetflixオリジナルの映画で、二部作存在する。
パート1は去年の12月に配信、パート2は今月配信された。
両方一気に見たので、以下は両パート全体の感想です。


あらすじ

ざっくりストーリーがどういうものか説明すると、マザーワールドと呼ばれる大帝国が、レルムと呼ばれる広大な宙域を支配しており、摂生のバルサリウスという男が国王と女王を暗殺し、権力の座についている。

マザーワールドは、反乱軍を組織して戦うブラッドアックスという姉弟に手を焼いており、帝国軍インペリウムを率いるノーブル提督をつかわし、彼らの追跡にあたらせていた。

そのノーブル提督が、本作の主人公、マザーワールドの脱走兵であるコラという女が隠れ住んでいる辺境の衛星ヴェルトに立ち寄るところから、物語が始まる。

そしてコラが、ノーブル提督の部下を返り討ちにして殺してしまったことからお尋ね者になり、村を報復にやってくる艦隊を撃破するため、仲間を集めて襲撃に備えるというのが映画の内容だ。

そう。見ればわかるとおり、これはザック版『スター・ウォーズ』でしかない。
ムードをシリアスにして、『隠し砦の三悪人』でなく『七人の侍』をプロットに据えた、ぼくのかんがえた『スター・ウォーズ』でしかなかった。
ザックは、スター・ウォーズでロバート・アルドリッチの『特攻大作戦』をやったら面白いかも、とインタビューで言っているのですが、それ『ローグ・ワン』や。もうギャレス・エドワーズがやっとるんやでザック……。

それでもそこそこ楽しめたのは、『スター・ウォーズ』には存在しない、厨二っぽいセンスが充満していて、男の子が大好きなやつてんこ盛り状態だったからだろう。

冒頭の展開、コラの住んでいる村が襲撃され、村人の一人である娘が、ゲスな軍人にレイプされそうになったところを、コラが颯爽と蹴散らして助けるという、少年漫画で何回見たかわからない王道展開が繰り広げられる。

軍人たちは一人だけいいやつがいたが、他はファシストでマッチョな宇宙ナチ野郎どもで、そのゲスっぷりが清々しく、なおかつコラのことも、女だと侮って舐めているため、全員ぶち殺されたときは、結構なカタルシスで実に爽快。

宇宙の各地で集められた仲間たちは、過去のエピソードなど、戦いの動機がくわしく語られず、割とあっさり仲間になることを承諾してくれるので、キャラクター描写はもっぱら、外見によって語られる。パート2で一応それぞれの過去が雑に語られるのですが、そんなことするくらいなら見た目のアクの強さだけで突っ切って欲しかったというのが本音。

最初に仲間になるのは、ガンナー。辺境の惑星ヴェルトの農民。無能力者だか、いざというときには子供を助けに入ったりするやつ。
次は密輸業者でパイロットをしているカイハン・ソロ
あとは奴隷になって鎖に繋がれている鍛冶屋のタラク。動物と心を通わせることができ、グリフォンみたいなやつを手なづけたりするのですが、もういっそのこと、このグリフォンに乗って戦って欲しかった。
私のイチオシキャラ、ペ・ドゥナが演じている双剣使いのネメシス。すごい剣術の使い手で、「争いは悲しみしか生まない…」みたいなテンションの人。両腕を自ら切り落としてサイボーグアームに換装し、その腕が彼女に剣術を教えたとか、中二っぽくていい。剣がライトセーバーにしか見えないが、そんなことはどうでもいい。
思ったんですが、パート2のノーブル提督とコラが一騎打ちで戦う場面でも、やっぱりどう見てもライトセーバーにしか見えない何かを振り回してチャンバラするんですが、音響が結構普通だ。悪いという意味ではなく、スター・ウォーズの音響がだいぶ変だったんだなぁという意味です。

そして元帝国の将軍タイタス。路上で、浮浪者みたいになっているところを主人公たちのパーティに拾われる。見た目だけで、どういう過去があったとか想像できるっしょ?
最後にブラッドアックス姉弟。革命軍の首魁。主人公が暮らしている惑星で、穀物を買ったばっかりに、戦いに巻き込まれてしまう。
あとはパート2で活躍するロボットのジミーが推しですね。なんか知らんが、鹿の角とか頭につけててオシャレに気を遣うロボなのですが、仲間がピンチのときに助けに来てくれて、美味しいところを全て持っていく。

宇宙ーそれは“穀物”

これはパート2の感想なんですが、正直、パート1よりもスケールダウンしていると感じた。パート1は、コラが仲間を求めて各地を旅する内容で、さまざまな舞台が用意されているので、それなりに退屈しなかったのですが、今作ではほとんど衛星ヴェルトでの出来事に終始し、前作で広げた舞台が、一気に縮小してしまった。

襲いくる帝国の艦隊も(おそらく辺境の星であろうヴェルトの)“穀物”を奪うために、それも大軍勢で、宇宙を横断できるテクノロジーがあるにも関わらず、“穀物”を奪いにやってくる。
ヴェルトの村人たちは、収穫した穀物を家屋の屋根などに載せ、人質のようにすることで、帝国が村を砲撃できないようにしますが、それに対して、帝国の艦隊は上空で見下ろしながら、「賢いな…」と一言。俺だったら穀物など捨て置いてすぐさま砲撃をかます。
これを命じているマザーワールドの摂生バリサリウスがコラに執着していて、彼女を生け取りにしたいから、村を砲撃しないし、そもそも大軍勢でやってきているのだと、見終わったあとに納得しますが、見ているときは、なんでこいつらこんなに穀物好きなんや……。自分の星で栽培すればええやん……。と思っちゃった。
マザーワールドはおもしろ穀物大好きおじさんの集団なのかと。

客観的に見ると、辺境の星の小競り合いになってしまっていて、宇宙規模の大舞台とか絶対いらないだろ。これはプロローグに過ぎないっていうんなら、早く続きを見せてくれー。

なんかこの文章だけだと微妙な映画だったのかと思われそうですが、バリバリオタク映画で結構楽しめてしまったというのが本音です。
宇宙船の形なんか、松本零士っぽい造形だな、と思ってたら、マジでそうだった。監督が『宇宙戦艦ヤマト』の話とかしてて、ボンクラオタク度が非常に高くて最高。

本作はNetflixで二部作が公開された後、さらにそれぞれ1時間のシーンが追加された完全版も公開される予定であるらしく、よりエログロが増加するとか。
このやり方はリドリー・スコット師匠と同じですな。後出しで俺専用バージョンをリリースするやつ。
ネトフリ民の方にはぜひ一見をおすすめする。

参考記事



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