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Brain Sentence

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小説ですたい。ノリで書き始めちゃうことしばしば。
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2016年3月の記事一覧

小咄「風」

えー小咄をひとつ。

昔から人は人の中に人を住まわすなんて言葉がありますな。

なんやいいもんを見つけた時に「コレがほしい」って思う。でもすぐに「これを買っちゃうと月末苦しいよ」なんて風にもう一人の誰かが囁くわけです。

「でもコレを買うと満足するよ」

「いやいやあかん。そんな余裕ない」

という具合に自分の中に住む住人はいつだって口論しているわけです。

「おい!虎吉!こっち来い!」

「へぇ

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エンプティ⑦

「僕には好きな人がいます」

暗闇の中、右耳に鳴った言葉を反芻する。好きな人、か。

近頃はそんな単語があることさえ忘れていた。学生の頃なら毎日のように考え、悪友たちと話していたのに。いつからかそんな淡い感情は消え、また、そんな青臭い感情を消すことこそ大人になることだと思い込んでいた。

「河合さんと言って、とても素敵な方なんです」

河合と聞いて遠い記憶の奥がザワつくのを感じた。

『それでね、

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