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愛猫との出会いと別れと、運命の出会い

最初に飼った猫は三毛猫で「カナ」と名付けた。
飼う前から、猫の名前は決めていた。
動物愛護センターで何匹か猫を見たけれども、連れてきた係員の腕を振りほどいて、しゃがんでいた自分の膝の上に飛び乗り、全身を擦り付けてきたことが今でも忘れられない。

うちに来て、数日のカナ

首輪も嫌がらないし、体のどこを触られても嬉しいみたいだし、爪切りも全然嫌がらなかった。
夜は一緒に寝たし、仕事から帰ると全力で出迎えにきて、妖怪すね転びのように足元にまとわりついた。
穏やかな性格で、余計なものを噛んだり引っ掻いたりせず、あまりにも良く出来た猫だった。
猫は嫌いだと公言していた父は、すぐに骨抜きになった。
物覚えが良いので、母がおすわりやお手などの芸を仕込んでいた。

膝の上には積極的に乗ってくるのに、何故か抱っこは嫌がった。
ただ、時々トイレ以外の場所でおしっこをしていた。冬には、2~3度布団におしっこをされた。

ブラッシング手袋が大好きだった

そして少なくとも、12年くらいは一緒にいるものだと、漠然と思っていた。
ところが6歳になる前、腎不全が発覚した。
最終的に毛並みは荒れてやせ細り、治療も効果の割に入院する日数が長すぎるので、諦めざるを得なかった。
獣医によると、かなり前から腎臓が悪かったのではないかとのことで、それはBUNの値が通常であれば動けなくなるくらい高いにもかかわらず、動けていることが根拠であった。

見舞いに行くと、少し元気になった

自宅に戻っても、一日に固形の餌を1~3粒口にするだけになった。
ちゅ~るすら、食べなくなってしまった。
入院中によく食べたというおやつも、口にしなくなった。
水は、ウォーターファウンテンを導入したら飲むようになった。
ただ、吐く回数が多くなった。
トイレで踏ん張る姿を見たが、ほとんど何も出ていなかった。
餌も水も、もう体内に届いていないようだった。

同時期、新型コロナで病院が手術の自粛をはじめた頃、飼い主である自分が胆石の腹腔鏡手術で入院することになった。
1週間弱の入院を明けて帰宅すると、カナはまだ生きてくれていた。
元気ではなかったが、ハーネスを付けて外に出ると、生気が戻ったように庭を歩き回った。

庭に出すと、しっかりと足取りになった

だが、家の中に戻すと元気がなくなってしまう。
痛みや苦しみを、ただただ我慢しているようにも見えた。

もう、辛くて動けないように見える

カナが病気で苦しんでいるのと同時期に、同僚が会社の裏手で子猫を拾って、FaceBookに写真をアップしていた。
週末のことだった。

なんで三毛猫で、ちょっと色柄似てるんや……

正直、カナが死んだら、次の猫を飼うつもりはなかった。
ペットロスで、しばらくは立ち直れないと思っていた。

そして、運命はここから回りはじめた。

週明けに出社すると、同僚がこの猫を会社に連れてきていた。

頭から尻尾の先まで、20cmもない

あまりにも小さすぎて、一日に何度も餌の世話をしないとダメという理由だった。
そして同時に、引き取り手を探していた。
ちょっと乱暴な先住猫がいて、子猫を食い殺しそうな勢いなのだという。ケージの中にいて今は安全だけれども、勢いが物凄いそうだ。
自分も打診されたが、病気のカナの面倒で手一杯なので、引き取るのは無理だと回答した。
数日後に、その同僚が泊りがけの出張に出ることになった。
泊りがけでは面倒を見られないので、自分が一時預かりをすることになった。
ケージとか丸ごと持ち帰り、空いている部屋に置いた。
病気のカナがいるので、心苦しい気持ちもあった。

会社では引きこもっていたのに、家に来た次の日にはこれである

次の日には、ケージに少しでも隙間を開ければ飛び出そうとしたし、隙間と見ればこじ開けて飛び出した。オモリを乗せて、やっと飛び出さなくなった。
子猫がこんなお転婆なものだから、両親は一瞬で骨抜きにされた。
でも、自分は飼うことは考えていなかった。
カナを連れてきて対面させたが、カナは興味なさげに踵を返して、お気に入りの場所に行ってしまった。子猫の方は、カナに興味津々だった。
カナと子猫が対面したのは、これが最初で最後になった。
カナはいよいよ動けなくなり、お気に入りの場所で一日中横になっていた。

一日中こんな感じ

子猫を預かった次の日。
子猫を飼うことに決めた。
子猫を返しても行き場がないし、他の社員も飼えないし、消去法でどう考えても自分しか飼える状態ではなかったからだ。
両親は、諸手を上げて喜んだ。
名前も決めた。家族と相談して「メイ」と名付けた。
返す予定の日に、手ぶらで会社に行って同僚に報告した。
その次の日の朝、カナは寝ていた場所でほぼそのままの姿勢で冷たくなっていた。
生きていると思って「おはよう」と声をかけたが、動かない様子を見て全てを理解した。
頭を持ち上げ、断末魔を上げているような態勢で死後硬直していた。
その日は会社を休み、マイクロチップの解除手続きや、子猫の誕生日の推定と健康状態を診て貰いに動物病院に行ったり、猫の保険の解約と新規契約をしたり、カナの火葬をしたりと、目まぐるしい一日だった。

静かな帰宅

カナが亡くなっても、悲しむ暇もなくメイの世話に没頭した。
朝起きて遊び、餌をやり、会社に行く。昼間は、親に世話を頼んだ。

尻尾を膨らませながらのやんのかステップの連発は、度し難いほど可愛い。

メイは、晴れて家族の一員となった。
この記事を書いている時点で、1歳9ヶ月になった。
すくすく育ち、4kgを超えてカナの一番重かった時よりも大きく育っているが、太っているわけではない。

2022年2月22日現在の様子

尻尾に巻いているのは、尻尾カバー。
尻尾を威嚇しては骨が出るまで噛んで、痛みにビックリして家中を駆け回り、いたる所に血飛沫を撒き散らした。
尻尾が過剰に動いて、それが気になるようだったので、やむを得ずカバーを装着することにした。
このカバーが外れると尻尾を気にして走り回るようになるので、当面は外すことは出来ないと思う。

メイが家に来たのは本当に単なる偶然なのかも知れないが、秘密結社NNN(Neko Neko Network)が、次の猫を用意したと考えるしかないくらいのタイミングでもあるので、少し考えてみた。
メイが家に来るまでの時間を受精した日まで逆算すると、カナの具合が明らかにおかしくなったと記録している日と重なった。
そして多分、金曜の夜に会社裏に捨てられた。
土曜にずぶ濡れの状態で拾われたが、ノミダニも寄生虫もなく、人を極度に怖がるということもなく、他の猫にも興味がある様子だった。他に兄弟が発見されていないことと、それらしい親猫が近所にいないことも含め、人に捨てられたと判断するのが妥当であると思う。
多頭飼いをしている家で産まれて、ある程度育ったところで捨てられたとも思えるような、そんな様子であった。
土曜に発見されていなければ、多分死んでいたかも知れない。
カナは、次の命が確実に届いたことを見届けて、そして逝ったのかも知れい。

我々が猫を見る時、NNNもまた、こちらを見ているのである。

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