わたしの少女時代は終わらないーふーことユーレイシリーズと名木田恵子とわたし①

 忘れらない読書体験がある。
 それは、体験というにはあまりにも強烈すぎて、四半世紀の時を超えた今でもわたしの中で小さな炎として宿っている。
 十代の初めと終わりを、わたしはとある児童小説に捧げた。

 名木田恵子という作家をご存じだろうか。
 わたしと同じくらいの年の人なら、
「教科書に載ってたいた『赤い実はじけた』を書いた人だよ」
と説明すれば合点がいくだろう。
 それよりも、
「キャンディ・キャンディの原作を書いた人だよ」
といえば、世間のだいたいの人は「知っている」と答えるだろう。

 この名木田恵子という作家が1988年から2002年までにかけて紡いだ「ふーことユーレイシリーズ」が、わたしの心の中に消えない火を灯すこととなる。

 出会ったのは小学校の図書室だった。当時十歳だったわたしは、最初は「いかにも女の子向け」というこのシリーズを毛嫌いしていた。

 ある年ごろになると小学生の女子がピンクやフリルを嫌い始めるのと同じ感覚で、少女漫画のイラストが付されたシリーズ小説には一切近寄らなかった。

「あたし、ああいう女の子向けのは読まないんだ~。もっと厚くて難しい本が好きなの」

 と、クラスメートに吹聴していた記憶がある。(今思えば、ジャンル関係なく本を買い揃えてくれた小学校に感謝すべきである。当時の校長先生が本が好きな方だった。ありがとう校長先生)

 しかし、硬派を気取っていたわたしだが少女漫画は大好きだった。毎月りぼんを買っていたし、なかよし派の友人の家に行くと夢中で読んでいた。80年代~90年代は少女漫画の円熟期で、わたしたちはアニメ、漫画、ゲーム文化の恩恵を受け始めた世代である。

 少女漫画が大好きなわたしは、放課後の誰もいない図書室に忍び込んでコッソリ少女漫画のイラストが付いたその本を手に取った。

 そこからはもう、夢中だった。

 坂道を転がり落ちるように、ふーこと和夫くんの恋物語にのめりこんでいった。 →②へ続く


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