なぜ、日本は、世界一の新型コロナウイルス感染大国となったのか?
日本は2022年8月8日-14日の1週間の新規感染者数が139万5,301人で、世界一を記録した。
これで新型コロナウイルスにおいて、4週連続で世界一感染者数の多い国となった。
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主要各国との比較での日次ペースの感染者数推移は下記の通りである。
■世界各国の感染者数推移
人口10万人当たりで見ると韓国や台湾のほうが感染者数は多い。
しかし実際感染者数世界一が日本国であることは上のグラフから明らかである。しかも4週連続で世界一新型コロナウイルスの感染者数の多い国である。
名実ともにコロナ大国であると言える。
グラフを見ると、2022年5月から7月初旬まではアメリカやドイツ、フランスのほうが日本より感染者数が多かった。
なのになぜいま我が国が感染者数世界一の国なのだろうか。
日本政府のもはやほぼしていない水際対策や、国内感染症対策、たとえばもう1年以上緊急事態宣言すらしていない日本国政府の失態や落ち度が、感染者数世界一の原因なのだろうか。
この答えを解き明かすには、日本でいま蔓延しているオミクロン株BA5が、なぜ海外では猛威を振るっていないのか、日本でだけ感染者が増え続けるのかが鍵となる。
しかし主要メディアはその原因を報道していない。ただただ日本は世界一の感染者大国!と極めて(もう50年もこんな感じだが)、知能を使わない報道しかなされていない。
ジャーナリズムが働かないため、原因を究明する記事や報道を主要メディアはしないのである。
ある種の知能の低下である。
ちなみに、新型コロナウイルスオミクロン株BA2は、従来のオミクロン株より実行再生産数が1.4倍高い(*出典1)、そしてBA5はBA2よりさらに実行再生産数が1.4倍高いウイルスである(*出典2)。
よって従来のオミクロン株より1.96倍伝播性 (感染力)が高いため、日本だけ感染者が激増し、海外ではむしろ減っているというのはおかしな話である。
普通に思考すれば感染力が高いのだから日本や韓国と同じ様に海外も増えるはずなのに、グラフを見ると、海外、特に欧米の主要先進国では感染者が減ってさえいる。
日本がおかしいのではなく、オミクロン株BA5に置き換わっているのに、海外が減っていることが日本が世界一の感染大国になった理由である。
なぜ海外は減ったのか?なぜ海外では感染力の高いBA5が蔓延しているその最中、むしろ感染者数は減り続けるのか。
それは感染症専門医の疫学データを見れば一目瞭然である。
■アメリカでのN抗体の獲得者比率推移
新型コロナウイルスに感染している人だけが陽性反応を起こすN抗体に対して、現在、アメリカ国民の57.7%が陽性反応を起こしている。
また、グラフを見ると分かる通り、活発に活動する0才から17才までの若者のN抗体獲得率は7割を超えている。
これはアメリカ人の57.7%、そしてアメリカの若者の7割が、既に新型コロナウイルスに感染したということである。
NHKのデータだと9,390万だが(*出典3)、これは病院でPCR検査を受けて陽性になった人の数であり、市中内のN抗体獲得数で見れば、アメリカ人は1.8億人(3.2億*0.577)が既に感染した国なのである。
彼らは2億人程度感染を経験し、抗体を獲得したあとなのである。欧州の場合はこちら↓だ。
■欧米でのN抗体とS抗体の獲得者比率推移データ
これは欧州単体ではなく米国も含んでいるが、S抗体(ワクチンを接種したか、コロナに感染すると陽性反応を起こす)は、既に9割を超えており、また、コロナに感染した人だけが陽性反応を示すN抗体もオミクロン株拡大後7割に達している。
つまり欧米の人間は既に7割近くが感染済み(N抗体獲得済み)なのである。
ちなみに、日本のN抗体獲得者比率は、2022年2月時点において全人口の4.27%(*出典4)に過ぎなかった。
他国が7割感染している今年の冬の時点で、日本ではまだ4%弱しか感染者を出していなかった。
欧米ではN抗体獲得者が増加したのは2022年に入ってから、つまりオミクロン株BA1やBA2に一度感染した人がN抗体を獲得したのは上記のグラフから窺い知れる。
ピンクの折れ線グラフが2022年度以降から上昇を始めているからだ。そしてオミクロン株に一度感染した人の、BA5に対する感染予防効果は下記の通りである。
■オミクロン株に一度感染した人のBA5への感染予防効果と発症予防効果
一度オミクロン株に感染した人は赤枠にある通り79.7%がオミクロン株BA5の、つまりいま主流になっている新型コロナウイルスの感染予防効果が79.7%と、ワクチンよりも高い予防効果があることが疫学データからも分かる。
欧米で感染者が増えていない理由はこれである。
既に7割の人間が、N抗体(感染した人だけが陽性反応を起こす)を獲得済みであり、その人たちが(厳密にはその人たちのなかでオミクロン株に感染した大多数の人)が、現在拡大中のオミクロン株BA5に対して感染予防効果が8割近くまで達している。
つまり海外の主要先進国の人間はほぼ全員(厳密には7割)が新型コロナウイルスに感染済みのため、体内に抗体があり、感染者がいま増えていない。
翻って日本はオミクロン株に今冬の時期に4.27%しか感染していなかったため、空港検疫をすり抜けてしまうオミクロン株BA5において全員が感染している最中であると言える。
日本が感染者数世界一の理由はこれである。
いちいちマスコミは事あるごとに調べもせず日本政府を批判するが、これまでの日本政府の判断は不適切だったのだううか。
デルタ株やアルファ株のほうが致死率は非常に高かった。その当時日本は主要先進国と比較して感染者数は著しく低かった。
毒性の高い初期型の新型コロナウイルスが世界で蔓延していたとき、空港検疫はあまり機能していなかったが緊急事態宣言を何度も行い、国民に注意喚起を促した日本政府の判断は不適切であったのだろうか。
政治とは結果である。彼らの成果を知りたければ、疫学データを見て、数値で判断すべきである。
日本人の新型コロナウイルスの累計死亡者数は2022年8月24日現在(要は昨日まで)で、 37,952人 である(*出典5)。
ちなみに死亡者数上位10カ国はこの通りである。
■世界の新型コロナウイルス死者上位10カ国
中略)この表の出典先は韓国のWebサイトなので、海外サイトは不安で行きたくないという人は行かないほうがいいです。
ウチのセキュリティソフトは問題ないサイトだと判断してます。数値データは日経のサイトとほぼ同じで、こっちのほうが一覧になっていて見やすかったため、一部データを抜粋しています)
一覧にある通り、新型コロナウイルスで一番死者を出したのはアメリカである。
人口は日本の3倍だが、死者数な日本の28.1倍多い国である。
日本人はオミクロン株の抗体を持っていないため、感染者数が激増しているし、今後死亡者数も増えるはずである。
しかしそれを加味してもアメリカ人は既に100万人以上死んでおり、致死率は1.1%。感染したら100人に一人は死ぬ病である。
日本の致死率は世界最低水準の(厳密には世界69位の)0.2%である。アメリカ人は100人に一人が死ぬ。ていうか死んだ。
日本人は致死率0.2%だから500人に一人しか死なない。厳密にはアメリカの致死率は1.1%だから90.9人(100/1.1)に一人が既に死んだ病である。
主要先進国(G7)における致死率は
■G7(サミットやってる世界の先進国)の致死率一覧
アメリカ…1.1%
カナダ……1.1%
イタリア…0.8%
イギリス…0.8%
ドイツ……0.5%
フランス…0.4%
日本………0.2%
出典:上のリンク先より抜粋
致死率の高かったデルタ株まで緊急事態宣言を連発し、水際対策もそれなりにやっていた日本の致死率は世界最低水準である。
G7だと最下位であり、もっとも優れた数値を残している。
弱毒化されるまでしこたま飲食店に給付金を配りまくり、外出自粛を促し、死者を減らしたのに、なぜ日本政府を批判する人たちがいるのかが個人的には理解できない。
どれほど論理的思考力がないのであろうか。罹ったら90人に一人が死ぬ国に住みたいのであろうか。
現在、香港や台湾といったゼロコロナ戦略を採っていた国も伝播性の高いオミクロン株では域内ゼロは難しいということで、国内にコロナを入れ、全員で免疫を獲得する戦略に切り替えている。
これをしていないのは、つまるところゼロコロナ戦略をいまだにやっている国は中国だけである。
世界トップクラスの公衆衛生・マスク着用率・防疫を行ったからこそ、アメリカ人やカナダ人が弱毒化される前にコロナに罹り90人に一人が死んだのに、日本人は500人に一人しか死んでいない。
なのになぜか国民と主要メディアに叩かれまくる政府。このインセンティブ(動機)がよくわからないけれど、日本らしくて、数理データや疫学データを一切見なくて、ここ70年思考停止してて、それはそれで良いのではないだろうか。極めて平和な国であると言える。
世界トップレベルの防疫の国に住んでいる、真面目な人たちの多く住む国。世界一マスクをしている国。夏の猛暑ですらマスクを外さないまともな国民性の国。
この豊かさを実感できていないのであれば、それはそれで幸福なのではないか。
私はそう思っている。
また、オミクロンの次があると、オミクロンに対しての感染予防効果があるのは同じオミクロンの従来株だけなので、次の変異株が出ると世界各地でまた大量に感染者が発生し、世界各地で同じように死者が発生することになる。
変異株が出なければコロナは収束し、出る場合、そして伝播性(感染力)が既存のオミクロン株BA5を上回っている場合は、全世界がそれに置き換わり、感染者と死者がまた新規に発生するということである。
それが繰り返され緩やかに弱毒化されていくことになる。
これまで守ってきたからこそ感染者は少なかった。そのデータに触れず日本政府を盲目的に批判するのは(別にしても良いと思うけど)、知能の低下なのではないだろうか。
成果を出しても叩かれる。出さなくても叩かれる。これでまともに、誠実に仕事をしよう!
という高潔な精神性をもった政治家や官僚はどれくらいいるのだろうか。
少しそう思った。メディアが事実を探究するつもりがまるでない国。ジャーナリズムが機能しない国。
インターネットの情報は極めて劣悪で、見てて恥ずかしくなる。パソコン辞めようかと最近思うことがある黒須です。
無料で誰かが書かなければ生贄にならなければいけないから(有益な情報がタダだと思っている)、仕方なくタダで働きました。
萎える。我が国は知能の存在しない、そして、恐ろしく豊かな、それを実感し得ない知性を持った、そういう国です。
P.S.
8割おじさんこと京都大学大学院教授の西浦博氏の参考文献を貼っておきます。彼の未来予測の計算式は恐ろしい的中精度であり、科学的だからです。
西浦教授は、コロナはインフルエンザのように社会に根付き定着する、その理論疫学における論理性を説いています。
参考文献リンク:
(おしまい)
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