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グローバル化は、世界規模で、貧困と格差を減らしている

かつてホリエモンこと堀江貴文さんはこう仰った。


☆☆☆



"いま世界はグローバル化してるから、格差はどんどん減ってるじゃん。

なんでグローバル化を批判すんの?"

これに対して、日本のネット民は、堀江は馬鹿!!

なんて頭の悪い奴なんだ。それでも東大卒か。

と罵(ののし)った。


日本人は算数ができない。

統計を読む癖がない。

世界の格差を研究しているマクロ経済学者、ブランコ・ミラノヴィッチの研究データに依ると、世界のジニ係数(数値が大きいほど格差があり、小さいほど格差が少ないことを表す指標)は、

  • 1988年 72.2

  • 2008年 70.5

  • 2011年 67

と、どんどん格差が減っていることが証明されている。

しかし日本ではその実感がまったくない。むしろ逆である。


なぜか?

グローバル化の「グローバル」とは、一体何のことだろうか。

それは国境のない「世界規模」のことである。


よってグローバル化とは国家の壁を消し去った、国家の不要な世界のことを言う。

かつて1970年代まで世界最貧国の一つであった中国とインドは、今現在GDPが世界2位と5位である。

中国の人口14.1億人とインドの人口14.2億人、合わせて28億人超が50年前まで、1日3食ご飯を食べるのがやっとだった。

仕事もなく、GDP(国民所得)が極めて低く、貧しい暮らしを余儀なくされていた。

その28億人がグローバル化によって、世界から国家の規制が取り払われ、かつて日本にあった工場が、特にアパレルメーカーの工場のほぼすべてが中国に流出し、中国人に大量の雇用と所得増を生むこととなった。

電子製品もパソコン、スマホ、テレビ、家電製品も、エアコン、電子レンジ、洗濯機、身の回りにあるものすべてがいまや中国製である。


先進国の住人は世界全体の人口の19.6%。

5分の1のゲームであり、先進国の国民に生まれなければ、途上国で仕事もなく病院医療もなく、早急に人生が詰み、死んでいくのがグローバル化前のゲームであった。

いまは規制が取り払われた。

日本国が日本人を守らなくなった

よって日本人1億2,000万人は、世界との競争に晒され、貧乏人になった。

しかしその23.3倍の人たち(中国とインドの人口の合計28億人)が、グローバル化前よりずっと豊かになったのである。

日本だけ見てると、特に日本の中流層だけ見てると、グローバル化は日本人を非常に貧しくしている。

国家の規制がないため、日本人は中国人やインド人とも仕事を奪い合い、競争に明け暮れている。

なぜなら国家が守ってはくれなくなったためである。

(世界幸福度ランキング1位のデンマークや北欧諸国、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドのように、グローバル化が自国国民に損失を与えるといち早く気づき、規制緩和をさせず自国民の職を徹底的に保護している国の所得は、依然として高いままである)

日本人のプログラマーより優秀で安い賃金で高品質なソースコードを書いてくれるインド人プログラマーが居れば、インドへアウトソースすることとなる。

規制がなければ、企業は合理性で動くため、安くて高品質な高コストパフォーマンスな会社に仕事を発注する。

なぜならグローバル化によって国家が人を守らなくなったためである。

国境が取り払われたのだ。

そしてプログラミング言語は世界共通の英語で書かれているためでもある。

国家が人を守らなくなれば、圧倒的に貧困層の多い、そして世界人口において80%以上を占める発展途上国の国民は、先進国の労働者と平等にそして公平に、安い賃金で、競争することができるようになる。

つまり全体として見るとグローバル化は世界から国境を取り払ったことで、格差が減り続けている。

賃金がフラット化し、起伏がなくなりつつある。

日本やアメリカやヨーロッパの人たち(全体の2割に満たない、高賃金の、先進国住民)から見ると、途上国の労働者とも競争することになったため、以前より競争が過酷になり、むしろ賃金減によって不幸になり続いけている。

マクロ(世界規模)で見るかミクロ(日本国単体)で見るかによって、グローバル化は話が違ってくるのである。

途上国の住民からすれば、先進国の国家が自国国民を保護しなくなり、仕事を振ってくれるのだから、グローバル化は彼らにとって最高の現象である。

しかし世界規模で規制を取り払った先進国では、自国国民を国が保護しないのだから(知能の高い国家はいまでも国が国民を保護しているが)、途上国の労働者に仕事を奪われ益々貧しくなっている。

全体として見ると、グローバル化は、明日の食べ物すら無い世界から極貧な人たちを減らし、ひいては、世界規模で見て、格差を減らしている。

世界規模で見て2割の国民は少し貧しくなるが、極貧だった8割はずっと豊かになった。

ジニ係数が減ってきているのはそのためである。

しかし日本単体で見ると、仕事を途上国の住民に奪われ、貧しくなり、大企業に就職できた高学歴層との間で益々所得格差が広がっている。

グローバル化から国民を保護していない知能の低い国もあれば、真っ先に気づき、自国国民を保護する国もある。

残念ながら日本は前者である。

ここ20年の規制緩和は、小泉総理の聖域なき構造改革、安倍総理の多国籍企業や外資系企業が日本企業と同じ様、好きな様に国内で操業できるようあらゆる規制を取り払う「戦後レジームの脱却」、そして、日本にはない外資系カジノ産業を誘致し肥えさせるためすべての規制を取り払う「身を切る改革」これらは前者の行為である。

国家が国民を守らない、他国民や外資系企業に雇用と機会を提供する、ある意味、博愛主義的な思想である。

これを新自由主義と言う。

国内の大企業は規制がないため、わざわざ自国の労働者に仕事を振る必要はない。

世界でもっとも低賃金で仕事をしてくれる企業に仕事を振る。

または規制緩和させ中国人労働者と同じ程度の賃金で国内労働者を非正規で雇用し、仕事をさせる

そのため、大企業はコストカットすることにより、高利益体質となり、大企業幹部の役員報酬は益々増大し、国内労働者との格差が広がる。

強い者がより強くなり、国内の弱い者は競争に敗北し、肉になる。

全体として日本は没落するが、グローバルでは豊かになる。

日本単体を見るか世界を見るか。

それだけのこと。

ただ一つ言えることは、堀江貴文さんの仰っていることは正しい。

ネット民は堀江さんに謝罪すべきである。

また、日本単体で見た際、グローバル化に依って格差が拡大しているのも確かである。

(おしまい)


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