気安く拍手しない人

彼ってどんな人?
とたまに質問されることがある。
一文で端的に表現できる言葉がまだ見つかっていなく、大抵は「強めの人」と答えている。
自分としては、もっと的確に説明できる余地があると思っているがなかなか他の言葉が見つからないでいた。が、今日家事をしているとき、ふと「強めの人」よりもより的確な表現が思い浮かんだ。

今なら僕はこう返す、
「気安く拍手しない人」と。


ここ3ヶ月くらいの間で、舞台とLIVEを一緒に行くことが続いた。お互い、そういったジャンルのものはそれぞれに好きなアーティストや推しがいたり興味があって足を運ぶことも多いが、一緒に行く機会はこれまでなかった。

はじめはお互い聴いてるラジオの公開イベントだった。会の中で何か1つ演目が終わるタイミング、スポンサーの紹介、誰かの登場シーンごとに会場から拍手が起こる。観客ができる数少ない演者へのレスポンスとして僕も大きく拍手をした。が、彼はしなかった。しないのにびっくりすることはなかったが、正直、冷たい人だなとは思った。

その後日、僕の誕生日祝いに、かねてから望んでいた劇団四季の舞台へ連れてってくれた。
演目は美女と野獣で、ストーリーの要所要所で歌と踊りが始まり、なんとも素晴らしい作品だった。歌と踊りのパートが終わる毎に、観客は拍手をする、そんな具合だった。私はどのパートの終わりも全て拍手して観ていたが、案の定隣にいる彼は拍手をしていなかった。またか、とこの前のイベントの時のことを思い出して、拍手という概念がこの人にはないんだ、と解釈した方がいいなと僕は諦めかけた。が、村人たちがビールジョッキを片手にグラス音を巧みに使いこなしながら歌い踊るパートが終わった時、彼はたしかに拍手をした。僕は心の中でガッツポーズした。よっしゃ!この人もこれには感動したんだ!と作り手でもないのに、謎の感動が芽生えた。

一部と二部の休憩で外に出た時に、「前のイベントの時も、今回も全然拍手してなかったのに、村人のパートの時は拍手してたね」と彼に言うと
「バレてたか(笑)」と返された。

彼のポリシーとして、自分が本当にいいなと思った時しか拍手しない、というのがあるらしい。
その小さなこだわりに、人に合わせない強さを持っているところや、自分の感覚を信じて楽しんでいるところなどの彼らしさが集約されている気がして、だいぶ腑に落ちた。

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