多分、虫も寝る
夜、10時ごろだろうか。
帰宅時、家の玄関にエメラルドの綺麗なハエがとまっていた。
オレに反応したセンサーライトで照らされてキラキラしている彼に、左手でデコピンの形を作り近づけてみた。
止まっている。
デコピンを射程まで近づけてみた。
止まっている。
ハエを仕留めようとしたことがある人ならばわかるが、アイツらは本当に素早いし敏感だ。
素手で掴むなんて至難の業だし、ゆっくりとデコピンの手を近づけても普通は逃げられてしまう。箸で捕まえたという宮本武蔵の話など嘘なのではないかと思っている(宮本武蔵がそれほどすごかったのかもしれないが)。
それがどうだろう。ピクリともしない。
ピン!
あ!え!?直撃しちしまった!
逃げてくれるという絶対的信頼感のもと放ったデコピンは直撃し、ハエは地面に落ちた。
「あ、これ寝ていたんだな。」
なんと虫は寝るのである。
虫から眠りに関する酵素が見つかったという話を聞いたことがあったが、本当に眠るんだなあ、と感心した。
彼の命はオレに多大なる発見を与えてくれた。
若干の申し訳なさと、発見による興奮によって、その日の酒はとてもうまく感じた。
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